【創作のネタ・題材】ベルゼブブとはなにか?意味、エピソード、イラスト紹介

ベルゼブブとは

意味

ベルゼブブとは:意味と定義
ベルゼブブ(Beelzebub):蝿の王の姿によって悪魔(デーモン)すべてを支配する君主に与えられた名前の1つ。名前の由来は「高いところの王」の意味を持つ「バアル・ゼブル」から来ており、異教の神だった。それがキリスト教の新約聖書などで「バアル・ゼブブ」というヘブライ語で「蝿の王、糞山の神」の意味を持つ言葉に言い換えられ、悪魔として扱われるようになった。地獄でルシファーに次ぐ権力を持つ大悪魔。十六の悪魔の指揮官。ミカエリス神父によれば天使時代の位階は最高の熾天使であり、誘惑する罪は驕慢(きょうまん)、敵対する聖者は聖フランチェスコ。
ベルゼブブのイラスト

M・L・ブルトンによるベルゼビュートの挿絵

 

名前の由来:バアル・ゼブル、バアル・ゼブブ

もともとは悪魔ではなく、異教の神だったようです。バアルとは王を意味しています。

旧約聖書ではカナン地方にあったペリシテ人の都市エクロンの神「バアル・ゼブ」として登場しています(『列王記下』1章4説)。列王記下ではバアル・ゼブルをバアルゼブブと嘲笑的に言い換えているんですね。なぜなら異教の神だからです。後で紹介しますが、列王記下ではバアル・ゼブブに頼るという王に対して、そんな神に頼るやつは死んでしまうと言うシーンがあります。

カナン地方の神としてのバアル・ゼブルは「蝿を殺す神」でもあったそうです。蝿は疫病などを運ぶのでそういった神が出てきたんですね。

古代ギリシアでは蝿は人間に悪霊を運ぶ役目を持っていると信じられていたそうです。ギリシアの最高神ゼウスの別名が「アポミュイオス(蝿を忌避する者)」です。蝿は疫病の原因とも考えられていました。蝿からの病を防ぐためにゼウスに生贄を捧げることもあったようです。またプリニウスによればローマやシリアの神殿で蝿に対して生贄が捧げられることもあったようです。

「バアル・ゼブル(Baal-Zebul)」は至高の王や高いところの王という意味で、「バアル・ゼブブ(Baa-zebub)」は蝿の王、あるいは糞山の神という意味です。

ブルをブブにするだけで、高いところの王から蝿の王に意味が変わるのです。おそらくゼブルが高いところを意味し、ゼブブは蝿を意味するのではないでしょうか。

バアル・ゼブルがバアル・ゼブブになりというヘブライ語で蝿の王という意味に言い換えられるようになり、やがて新約聖書で悪魔として扱われるようになりました。なぜ言い換えたのかはヘブライ人の言葉遊びという説もあります。

たとえば「マタイによる福音書」12章24説では悪魔祓いをしている人々の病気を治したイエス・キリストを、ファリサイ人たちが「悪霊の頭ベルゼブルの力によらなければ、この者は悪霊を追い出せはしない」と非難する場面があります。このように悪魔として扱われるようになっています。

旧約聖書はユダヤ教徒たちによって書かれた文書であり、ユダヤ人にとって唯一の正典であり、キリスト教徒にとっても正典です。新約聖書はキリスト教徒によって作られた文書であり、キリスト教の正典です。ややこしいですよね。なんとなく新約聖書でいろんな異教の神が悪魔にされていったイメージがあります。有名なルシファーも元々は旧約聖書で金星でしたが、新約聖書では悪魔のような扱いになっていっています。

コラム

・ぺリシテ人とは、古代カナン南部の地中海沿岸地域周辺に入植した民族群である。アシュドド、アシュケロン、エクロン、ガザ、ガトの5つの自治都市に定着して五市連合を形成していた。古代イスラエルの主要な敵として知られ、聖書の『士師記』や『サムエル記』で頻繁に登場する。特に、士師サムソンの物語や、戦士ゴリアテと戦ったダビデの物語などが有名である。現在のヨーロッパ諸語では、ペリシテ人とは「芸術や文学などに関心のない無趣味な人」の比喩として使用される(WIKI引用)。 

ベルゼブル、ベルゼブブの違い

フレッド・ゲディングズの『悪魔の辞典』によればベルゼブルはヘブライ語で「天の神」という意味です。ベルゼブブはヘブライ語で「糞山の神」です。

ベルゼブ”ル”は天の神という良い意味ですが、新約聖書などで悪い意味として用いられるようになり、やがて区別をつけるためにベルゼブ”ル”ではなくベルゼブ”ブ”に変えたといったところでしょうか。

バアルゼブルを「高いところの王(高い館の王)」、ベルゼブルを「天の神」としてフレッド・ゲディングズは分けて述べています。高い館の王はソロモン王を連想させるということで、バアル・ゼブルをバアルゼ・ブブに変えたという説もあります。『列王記』ではバアル・ゼブルをバアル・ゼブブと言い換えていますが。名前が出てくるシーンは異教の神、邪悪な崇拝対象としてバアル・ゼブブがでてきます。つまり言葉遊びで嘲笑的に言い換えているという解釈もできます。

バアル・ゼブルが「高いところの王」という良い意味で使われていたのはわかりました。じゃあベルゼブルは?となりますよね。ベルゼブブはバアル・ゼブブが由来であり、糞山の神、蝿の王です。これに対応するとしたらベルゼブルはバアル・ゼブルが由来であり、天の神、高い館の王ですよね。

つまり悪魔の名前としてはベルゼブブであり、ベルゼブルは使うべきではないと思うのですがどうでしょうか。本によっては悪魔の名前としてベルゼブルを用いているものがあります。たとえばダンテの『神曲』ではベルゼブルになっています。イタリア語ではベルゼブというそうです。正直細かいことは分かりませんが、バアル・ゼブル以外の表現は悪い意味で使われることが多いみたいですね。

あるいはベルゼバブ(『失楽園』,『フォースタス博士』)、ベルゼビュート(『悪魔の恋』,『地獄の辞典』)、ベールゼブブなど違った名前で呼ばれることもあります。

解釈の1つとしてはベルゼブルはもともとバアル・ゼブルからきていて、良い意味で用いられていたけどユダヤ・キリスト教徒によって悪いイメージがつけられ、ベルゼブルは悪魔だというイメージで固まったというところでしょうか。いずれにしてもベルゼブルだとソロモン王に間違えてしまうからベルゼブブと呼ぶようになったという流れのほうが自然なので、悪魔としての名前としてベルゼブルを使うのは違和感があります。

ベルゼブブに関するエピソード・逸話

『列王記下』:異教の神としてのバアル・ゼブブ

『列王記下』では病気を治すためにエクロンの神バアル・ゼブ”ブ”の元を訪ねようとするシーンがあります。

さてアハジヤはサマリヤにある高殿のらんかんから落ちて病気になったので、使者をつかわし、「行ってエクロンの神バアル・ゼブブに、この病気がなおるかどうかを尋ねよ」と命じた。

時に、主の使はテシベビとエリヤに言った、「立って、上って行き、サマリヤの王の使者に会って言いなさい、『あなたがたがエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようとして行くのは、イスラエルに神がないためか』。

それゆえ主はこう仰せられる、『あなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであろう』」。そこでエリヤは上って行った。

(『列王記下』第一章第2-4節)

エクロンとは旧約聖書に登場するペリシテ人の5つの町のひとつです。「深く根ざした」という意味があるそうです。ペリシテ人はバアル・ゼブ”ル”を神として崇めていました。ペリシテ人は古代イスラエルの敵なので、ユダヤ人からしたらあまり好ましくない存在ですね。

そんなやつらの神であるバアル・ゼブ”ル”?いやそんなたいそれた名前ではない、バアルゼブ”ブ”だと嘲笑的に言い換えているといったところでしょうか。蝿の王に病気にたずねる?なにを言っているんだ、おまえはベッドから降りることはない、必ず死ぬと言われてしまう始末です。つまりイスラエルにはちゃんとした神様がいるのに、なぜ異教の神のもとに行こうとしているのか、そんなやつは死んじまうぞってシーンですね。

「エリヤ」(Elijah), 1638,ホセ・デ・リベーラ作

「エリヤ」(Elijah), 1638,ホセ・デ・リベーラ作*2

アハジヤ(アハズヤ)はイスラエル王です。エリヤは預言者です。エリヤの神はヤハウェです。「主」であり、「エル」であり、ユダヤ人にとっての神様です。ユダヤ教は一神教なので、それ以外の神は異教の神になります。神様はひとつだけで、他の神など存在しないというわけですね。だから他の宗教の神を悪魔扱いしていくわけです。

そのとき主の火が下って燔祭と、たきぎと、石と、ちりとを焼きつくし、またみぞの水をなめつくした。民は皆見て、ひれ伏して言った、「主が神である。主が神である」。エリヤは彼らに言った、「バアルの預言者を捕えよ。そのひとりも逃がしてはならない」。そこで彼らを捕えたので、エリヤは彼らをキション川に連れくだって、そこで彼らを殺した。 — 列王紀上18章38節から40節(口語訳)

このエピソードは列王記”上”です。先程のアハジヤの父であるイスラエル王アバブの時代です。飢饉などで食料がなく、天候も悪かったみたいです。そこでエリヤはアバブに「バアルの預言者450人、アシラの預言者4百人、イゼベルの食卓で食事する者たち」と競争を要求します。この”バアル”というのがパリサイ人にとっての神バアル・ゼブルであり、ユダヤ人にとっての異教の神バアル・ゼブブです。結果的にエリヤの神、ヤハウェが雨を降らしたのでバアルの預言者はみな捕まえられ、処刑されたそうです。

バアル以外にイゼベルというアバブの王妃の仲間も争いにくわわかっていました。結果的に仲間が負けたわけですかr,王妃は怒るわけです。このイゼベル王妃はもともとシリアの王女であり、バアルを崇拝していたそうです。異教の神を信仰する人物を王女として迎えた王様は、バアル崇拝とヤハウェ進行がごっちゃごちゃになってくるわけです。

それに反対するのが預言者エリヤという構図なわけです。自分たちの国にはちゃんとしたヤハウェという神様がいるのに、王女が異教の神を自分たちの国に取り入れようとしている、けしからんというわけですね。アバブが死んだ後、息子アハズヤが病気になったときにバアルを通じて病気を治そうとしたら、そんなことするやつは死ぬ”!といってしまうのもわからなくもないです。

エリヤのアハズヤに向けた死の宣告の後、2年後にアハズヤは死んでしまったそうです。アハズヤはエリヤを捉えようと軍勢を差し向けようとしますが、エリヤは点から火を振らせて全滅させたという恐ろしいエピソードもあります。

冥府とは:意味と定義
冥府(めいふ,hades):陰府ともいう。冥界を指す場合と冥界の支配者(ハデス)を指す場合がある。冥界とは人が死後におとずれる場所、つまりは”死者の国”であり、いわゆる”地獄そのもの”を意味していない。地獄は大罪を犯した人間が送り込まれ、責め苦を受ける場所。

 

新約聖書『マタイ伝福音書』:イエスに対するパリサイ人の疑い

「悪魔たちの皇帝」とされている。あるいは「デヴィルのかしら」。『マタイ伝福音書』ではまだベルゼブ”ル”ですね。やがてベルゼブ”ブ”に変わっていきます。

この「かしら」という表現からベルゼブブはルシファーに次ぐもの、あるいはサタン=ルシファー=ベルゼブブという説が出てきたのだと思われます。

(10章25節)弟子がその師のようであり、僕がその主人のようであれば、それで十分である。もし家の主人がベルゼブルと言われるならば、その家の者どもはなおさら、どんなにか悪く言われることであろう。

(12:24)しかし、パリサイ人たちは、これを聞いて言った、「この人が悪霊を追い出しているのは、まったく悪霊のかしらベルゼブルによるのだ」。

(12:27)もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。

『マタイ伝福音書』

上の『マタイ伝福音書』はイエスが病に苦しむ人に奇跡で治したシーンですね。そこでパリサイ人がいちゃもんをつけるわけです。悪魔のしわざだと。キリストはこれに対して、「おおよそ、内部で分れ争う国は自滅し、内わで分れ争う町や家は立ち行かない」と返します。つまり悪魔が起こした病(悪魔憑き)を悪魔が治しているのだから、悪魔同士の内乱のようであり、そんなバカなことはあるかといったところでしょうか。

新約聖書外典『ニコデモ福音書』:イエスとベルゼブブの戦い、サタン=ベルゼブブ?

1「何でも食って、あくことを知らぬ冥府よ。ユダの氏族の出身者でイエスという者が、自分は神の子だと言いはっているのだが、この男をユダヤ人共が我々の助けを得て十字架につけた。それで今はもう死んだのだが、どうかそいつをここで閉じ込めておくよう準備しておいてくれないか。・・・あいつがまだこの上の世界にしすべき人間共と一緒に住んでいた頃、俺様に散々悪さをしでかしやがった(『ニコデモ福音書』)」

2「汝らの長たちよ、戸をあけよ。永遠の戸よ。あがれ。栄光の王入り給わん(『ニコデモ福音書』)」

3「この者の両手両足、首と口を青銅でしばりあげるがよい。・・・我が第二の降臨の時まで、この者をしっかりととらえておくがよい(『ニコデモ福音書』)」

4「ベルゼブルめ、火とこらしめの世継ぎ、聖者達の敵であるお前が、そもそもどうして栄光の王を十字架につけ、ここに来させ、我々を降伏させるようなことを計画する必要があったのか。ふりむいてみろ。もうオレのところには死人は一人も残ってやしない。」425年『ニコデモ福音書』23章

 

1はベルゼブブがイエスを閉じ込めようと画策しているシーンです。冥府(人格化されている,あるいはハデス)にベルゼブブが言っているシーンです。

2はイエスが冥府の戸を崩して死人を開放するシーンです。「栄光の王入り給わん」と言っているのは天使たちです。ベルゼブブはこの天使たちの声にびびって逃げ出しました。冥府は手下の悪霊たちをつかわせてドアを開けないようにしましたが、青銅のドアは光によって砕かれ、鉄のかんぬきがへし曲げられました。人間の姿をした栄光の王であるイエスが冥府に入り、冥府は敗北を認めたのです。

3の文章はキリストがおそらくハデスにむけていったセリフです。「第二の降臨」とは最後の審判という意味です。ベルゼブブをきっちりと冥府でとらえとけとハデス(冥府)に言っているシーンですね。逃げ出したベルゼブブの頭をイエスがとらえています。

4の文章のシーンはハデス(ギリシア神話の冥府の神?)のベベルゼブブにむけてのセリフらしいです。

イエスに手を焼いたベルゼブブがイエスを冥府に閉じ込めようとし、イエスの処刑に成功しました。しかし冥府の門前にイエス(栄光の王)が現れると、扉がイエスの光によって崩れ、冥府に繋がれていた死人たちも開放されしまいます。これにはハデスも、おいベルゼブブ、なにやってんだおまえとなります。

ベルゼブブはイエスによって逆に冥府に縛り付けられてしまったそうです。

重要なのは4の文章です。今までの文脈では名前がサタンでしたが、”ベルゼブル”と言い換えられています。それでベルゼブブ=サタンと解釈されるようになったのではないでしょうか。たとえばダンテの『神曲』ではルシファーとベルゼブブが同一視されています。

『ソロモン王の遺言(The testament of Solomon)』ソロモン王とベルゼブブの関係

ソロモン王とは:意味と定義
ソロモン王:イスラエル王国第3代国王(在位紀元前905-紀元前925年)。ダビデ王の息子。合成な神殿や宮殿を建築し、王国の最盛期を築いた。旧約聖書の中では神から知恵と見識を授けられている知恵者として扱われている(『知恵の書』)。一方で、異教の妻を多数めとり、異教の神を祀ったともいわれている(『列王記上』)。異教の神との関連からか、悪魔を使役したという伝説が生まれた。『ソロモン王の遺言』ではミカエルからもらった指輪で悪魔を使役させ、神殿を建築した話がある。ベルゼブブ、アスモデウス、36デカンの悪魔を使役したそうです。イスラム教の聖典コーランにもソロモン王は特別な力を神から授けられ、動物の声を理解し、精霊、人間、動物を思い通りに動かせたとある。
ソロモン王のイラスト

ソロモン王のイラスト*2

 

ベルゼブブはソロモン王に魔法の指輪を使って呼び出され、服従させられたという話があります。捕らえられたベルゼブブはソロモン王から「すべての悪魔を出してみろ」と命令され、それを約束したそうです。ベルゼブブは悪霊の支配者として扱われています。

またソロモン王はベルゼブブに「自由になりたければ、天国の秘密を教えろ」と言ったそうです。ベルゼブブは秘密を教えたのですが、ソロモン王は信じず、捕らえたままにしたそうです。

ミカエリス神父による『驚嘆すべき物語』:ベルゼブブは堕天使だった

悪魔の名前階級天使時代の位階誘惑する罪敵対する聖者
ベルゼブブ第一階級熾天使の君主驕慢(きょうまん)
※おごりたかぶること
聖フランチェスコ
レビヤタン第一階級熾天使の君主不信仰聖パウロ
アスモデウス第一階級熾天使の君主貪欲・不貞洗礼者聖ヨハネ
バルベリト第一階級智天使の君主殺人・冒涜(ぼうとく)
※崇高なものや神聖なもの、または大切なものを、貶める行為
聖バルナバ
アスタロト第一階級座天使の君主怠惰聖バルトロメオ
ウィリネ第一階級座天使の2位短気聖ドミニコ
グレシル第一階級座天使の3位不浄・不潔聖ベルナルドゥス
ソネイロン第一階級座天使の4位敵への憎悪聖ステパノ
カレアウ第二階級能天使の君主頑固聖ウィンケンティウス
カルニウェアン第二階級能天使の君主卑猥・厚顔無恥福音書記聖ヨハネ
オエイレト第二階級主天使の君主贅沢聖マルティヌス
ロシエル第二階級主天使の2位恋情聖バシリウス
ウェリエル第二階級権天使の君主不従順・肩こり聖ベルナルドゥス
ベリアス第三階級力天使の君主傲慢(ごうまん)・見栄・不貞聖フランチェスコ
オリウィエル第三階級大天使の君主残酷・無慈悲聖ラウレンティウス
イルウァルト第三階級天使の君主不明不明

ミカエリス神父によればベルゼブブは元天使で、それも最上位の熾天使に位置していたそうです。ベルゼブブはデーモンの指揮官であり、堕天した「セラフィム(熾天使)の君主にして、ルシファーに次ぐもの」とされています。ルシファーの次に偉いと言われているのはそのためですね。一方で、ベルゼブブ=サタン=ルシファー説もあります。

【創作のネタ・題材】『天上位階論』による天使の位階、ランク、順位付け、種類まとめ

ミルトンによる『失楽園』:ベルゼブブはサタンに次ぐもの、ハエの姿ではなくカリスマ的存在

 

サタンとは:意味と定義
サタン(英:satan):通俗的には大いなる悪鬼(悪魔)で、デーモンの軍勢の指揮官。旧約聖書では悪魔ではなく、サタンは元々神に仕えていた使者だったそうです。もともと神の宮廷の一員(旧約聖書のヨブ記)で、後にさまざまな悪魔の正確が融合して魔王サタンとして誕生しました(新約聖書)。中世以降、ミルトンの『失楽園』にみるようにサタン=ルシファーだという解釈が一般的になっていきました。ヘブライ語の旧約聖書がギリシア語に約されたとき、satanがdiabols(ディアボロス)と訳され、サタンが魔王として意味するようになったそうです。語源はヘブライ語のstn(shatana)で敵対者、妨害するものという普通名詞です。
サタンの絵

ダンテ『神曲』の挿絵*2

 

【イラスト・創作のネタ】サタンとルシファーの違いとはなにか。

ジョン・ミルトンとは:意味と定義
ジョン・ミルトン(1608-1674年):イギリスの詩人。代表作に『失楽園』やダンテ『神曲』などがある。『失楽園』ではサタンに関する記述があり、ダンテ『神曲』では有名なルシファーの挿絵がある。『失楽園』は旧約聖書の『創世記』をテーマにした叙事詩。堕天使ルシファーの再起やルシファーの人間に対する嫉妬、楽園追放などの内容。キリスト教文学の代表作。ミルトンによる旧約聖書の解釈はルシファーに関する逸話に影響を与えた。

 

サタンといえばよくルシファーと同一視される大悪魔ですよね。

ミルトンは『失楽園』でベルゼブブを「サタンを除いて、彼よりも高い地位についている者はほかにいない」とまでいっています。

失楽園のベルゼバブのイラスト

Satan and Beelzebub, from the First Book of ‘Paradise Lost’ by John Milton (1608-74)*4

 

どっちがベルゼブブなんでしょうね。おそらく他のイラストを見る限り、奥にいるのがベルゼブブです。ハエの姿とは程遠く、まさに堕天使ですね。手前にいるのがサタンです。

ベルゼブブはサタンの側近であり、親友であり、部下でもあったそうです。サタンが軍勢を率いるときは参謀のように側に控えているらしいです。

ベルゼブブの天使だった頃の名前があるそうなんですが、神の救済を受けるものの名前をすべて記しているとされる「生命の書」から名前を削られてしまったそうです。それで本当の名前が出てくることがないのです。

ベルゼブブは蝿の姿で邪悪なイメージが強いですが、『失楽園』では王者の威厳と賢者の風格を保っている、カリスマ的存在として表現されています。配下のデーモンたちの前で演説をすると、悪魔たちは一斉に目を凝らし、周囲は静まり返ったエピソードもあります。

元々カナン人たちの神であり、神々の王として扱われてきましたが、キリスト教では異教の神として扱われ、「蝿の王」なんて呼び方をされてしまっています。そうした背景から、ミルトンはベルゼブブを「憂国の至情に満ち溢れ・・・」と表現しています。

ダンテ・アリギエーリ『神曲』:ベルゼブブ=ルシファー?

 

ダンテ・アリギエーリとは:意味と定義
ダンテ・アリギエーリ(伊:Dante Alighieri、1265年 – 1321年9月14日):イタリア都市国家フィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。ダンテの代表作は古代ローマの詩人ウェルギリウスと共に地獄(Inferno)、煉獄(Purgatorio)、天国(Paradiso)を旅するテルツァ・リーマで構成される叙事詩『神曲(La Divina Commedia)』であり、他に詩文集『新生(La Vita Nuova)』がある。イタリア文学最大の詩人で、大きな影響を与えたとされるルネサンス文化の先駆者と位置付けられている(WIKIより)。
ダンテ・アリギエーリ

サンドロ・ボッティチェッリによる肖像画(1495年)*5

 

『神曲』とは:意味と定義
『神曲』(しんきょく、伊: La Divina Commedia):ダンテ・アリギエーリの代表作。WIKIのあらすじでは「ユリウス暦1300年の聖金曜日(復活祭前の金曜日)、暗い森の中に迷い込んだダンテは、そこで古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼に導かれて地獄、煉獄、天国と彼岸の国を遍歴して回る。ウェルギリウスは、地獄の九圏を通ってダンテを案内し、地球の中心部、魔王ルチーフェロの幽閉されている領域まで至る。そして、地球の対蹠点に抜けて煉獄山にたどり着く。ダンテは、煉獄山を登るにつれて罪が清められていき、煉獄の山頂でウェルギリウスと別れることになる。そして、ダンテは、そこで再会した永遠の淑女ベアトリーチェの導きで天界へと昇天し、各遊星の天を巡って至高天(エンピレオ)へと昇りつめ、見神の域に達する。 」とあります。

 

 

 〔悪魔大王〕ベルゼブルから遠ざかること、まさにその墓穴の長さほどのところに、目にはさだかではないが、岩間から流れ込むせせらぎの音で、それと知れた場所がある。小川がゆるやかな勾配でくねりながら流れて岩を侵食している。(『地獄篇』第34歌 127~132、平川祐弘訳)

上の一節に「ベルゼブル」という名前が出てきます。このベルゼブルは「ディーテ」や「ルチフェロ」と同じ意味で、魔王として使われているそうです。

ルチフェロというのはルシファーのイタリア語読み(Lucifero)です。それでルシファー=ベルゼブルという解釈になったのではないかということです。元々聖書外典のニコデモ福音書で、サタンがベルゼブブという名前に変わっていたことも関係しているのだと思います。サタンはルシファーと解釈する説もあるので、サタン=ルシファー=ベルゼブブという説があることになりますね。

クリストファー・マーロウの戯曲『フォースタス博士』:七霊の一体

クリストファー・マーロウとは:意味と定義
クリストファ・マーロウ(Christopher Marlowe、洗礼日1564年2月26日 – 1593年5月30日):イギリス(イングランド)の劇作家、詩人、翻訳家。大学才人。エリザベス朝時代に活躍。華麗な無韻詩(ブランクヴァース)で知られる。代表的戯曲は『フォースタス博士』(Doctor Faustus)、『エドワード2世』(Edward II)など。
クリストファー・マーロウ

クリストファー・マーロウ*6

 

『フォースタス博士』とは:意味と定義
『フォースタス博士』(英:The Tragical History of Doctor Faustus):クリストファー・マーロウの戯曲。ファウスト博士の伝説を下敷きにした悲劇。「学問に行き詰まったフォースタスは魔術を学ぶことにし、メフィストフェレスと、魂を引き渡す代わりに24年間メフィストがフォースタスの命に従うという契約を交わす。フォースタスを救おうとする善天使と、魔術に引き入れようとする悪天使との葛藤があった後、メフィストはフォースタスに見せ物として七大罪に対面させる。まずローマ教皇庁に潜り込み、枢機卿に化けて一騒動を起こし、次に姿を消して教皇の食べ物や飲み物を奪い取り、はては教皇を殴打する。次に神聖ローマ皇帝にアレクサンドロス3世(大王)とその妃の姿を見せて、寵を得る。それを妬むものから不意打ちをかけられるが難なきを得、かえって彼らの頭に角を生えさせて復讐する。最後にトロイ戦争のきっかけとなったヘレンを愛人にする。期限が切れると、契約を守り神に許しを乞うことなく、地獄に落ちてゆく。学者たちは、学生たちとともにフォースタスを手厚く葬ることにする。 (WIKI引用)」

 

確か手塚治虫が漫画で『ネオ・ファウスト』を描いてましたが、元ネタは『フォースタス博士』ですね。シャーマンキングでも確かファウストを元ネタにしたキャラがいた気がします。

ファウストはクリストファー・マーロウが考えた人物ではなく、15世紀から16世紀のドイツに実在したとされる錬金術師です。『実伝ファウスト博士』などの本が『フォースタス博士』より先にあります。著者はヨーハン・シュピースという説があるそうです。

ベルゼブブはこの『実伝ファウスト博士』のほうで、”七霊”のひとりとして登場します。ルシファー、ベルゼブブ、アスタロト、サタン、アヌビス、ヂュティカヌス、ドラフスの7霊です。『フォースタス博士』のほうでは七霊ではなく7つの罪ですね(七つの大罪)。ちなみに七つの大罪の中でベルゼブブは暴食です。

ファウスト伝説におけるメフィストフェレスはベルゼブブの部下、あるいは下僕だった説もあるようです。

冥土の神々よ、われに恵みを垂れたまえ! 三位一体の神エホバよ、立ち去るがいい! 地水火風の精霊たちよ、挨拶を送るぞ! 東方の主神ルーシファーよ、燃えさかる地獄の王ベルゼバブよ、それに魔神デモゴーゴンよ、わが願いを受け入れ、メフィストフィリスをここに現したまえ!(『エリザベス朝演劇集Ⅰ』小田島雄志訳)

フォースタス博士はこのように唱えてメフィストフェレスを呼び出しました。そのとき、ルシファーとベルゼブブも登場したそうです。

ジャック・カゾットによる『悪魔の恋』:ベルゼビュート

『悪魔の恋』とは:意味と定義
『悪魔の恋』(Le Diable amoureux,):1722年にジャック・カゾットによって書かれた。『恋する悪魔』という場合もある。ある男の人間がベルゼブブを呼び出し、ベルゼブブは自分は女であり恋をしていると告白するストーリー。男がベルゼブブを愛してしまうと、ベルゼブブはもう逃げられないぞと言って蝸牛と驢馬の姿に戻ってしまい、男が失神してしまうすごい話ですね。話の中ではベルゼブブではなくベルゼビュートです。
ベルゼビュート

ベルゼビュート

 

ニコール・オブリー:悪魔憑きとしてのベルゼブブ

ニコール・オブリーの悪魔憑き事件とは:意味と定義
ニコール・オブリーの悪魔憑き事件:16世紀にフランスで起こった事件。ニコール・オブリーという女性に悪魔が取り付いた事件。ベルゼブブにとりつかれたニコールは教会に連れて行かれ、悪魔祓いが行われました。聖体をニコールに繰り返し与え続けることによってやっと追い払われたそうです。

 

ベルゼブブのイラスト

蝿、巨大な仔牛、尾の長い牝山羊、叡智に溢れた誇り高い王

ベルゼブブの姿は多種多様に表現されているみたいです。パランジェーヌの『ゾディアコ・ヴィテ』では途方もなく巨大で、額に火の帯をまき、頭に2本の角を持ち、胸は厚くふくれ、顔はむくみ、目はギラツキ、肩は釣り上がり、鼻孔は極度に広く、威圧感にあふれているそうです。ジル・ド・レエによればヒョウに変わった姿もみたそうです。

ベルゼブブのイラスト

M・L・ブルトンによるベルゼビュートの挿絵

有名なのは蝿の姿です。ブルトンの『地獄の辞典』の中の挿絵ですね。

ベルゼブブのイラスト

ベルゼブブのイラスト*7

巨大な仔牛の姿もしているらしいですが、画像があまり見つかりません。なんとなくイメージに近いのはこれですね。巨大は仔牛ってなんかおもしろい表現ですね。巨大な小さな子供みたいな。

ヤギのイメージ

ヤギのイメージ*9

尾の長い牝山羊(めやぎ)もなかなかないですね。牝山羊はメスのヤギってことですよね。

天使の姿をしたベルゼブブ

ベルゼブブのイラスト3

『失楽園』*8

奥にいるのはルシファーです。生えのイメージとは程遠いですよね。

“Beelzebub and them that are with him shoot arrows” from John Bunyan’s The Pilgrim’s Progress (1678)*8

悪魔に近いイメージとしてはこんなものもあります。

海外のベルゼブブのイラスト

ベルゼブブのイラスト

ベルゼブブのイラスト*10

ベルゼブブのイラスト*11

ベルゼブブのイラスト

ベルゼブブのイラスト*12

ベルゼブブのイラスト*13

 

 

参考文献

参考書籍

1:「知っておきたい天使・聖獣と悪魔・魔獣」,荒木正純,(西東社)

2:「悪魔の辞典」、フレッド・ゲティングズ、(青土社)

3:「図解 悪魔学」、草野巧、(新紀元社)

4:「堕天使 悪魔たちのプロフィール」、真野陸也、(新紀元社)

5:「悪魔辞典」、山北篤、(新紀元社)

https://ameblo.jp/kosmosskene-biosparodos/entry-12312589774.html(ダンテの部分)

・各WIKI

引用画像

1:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%A4

2:https://i.pinimg.com/originals/f9/ae/2b/f9ae2bcc4789f05862e39493aca7ed6c.jpg

3:https://artsycraftsy.com/dore_prints.html

4:https://fineartamerica.com/featured/satan-and-beelzebub-by-gustave-dor-dore-litz-collection.html?product=canvas-print

5:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AA

6:https://ja.wikipedia.org/wiki/クリストファー・マーロウ

7:https://www.dreamstime.com/illustration/beelzebub.html

8:https://www.wikiwand.com/en/Beelzebub

9:https://i.pinimg.com/originals/aa/70/93/aa70939ee6236d9a6eea991032d3d9b8.jpg

10:https://www.artstation.com/artwork/VDwy8

11:https://japhers.tumblr.com/post/150029577584/done-monsieur-beelzebub-pact-demon-lord-of-the

12:https://megamitensei.fandom.com/wiki/Beelzebub?file=KazumaKaneko-Beelzebub.jpg

13:https://www.deviantart.com/joelchaimholtzman/art/Beelzebub-625548835

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