目次
正面の顔を描く方法について考える
今回は概論なのでざっくりと扱っていきます。これまで作成してきた横顔と同じように、次回は目から各論的に扱っていきます。
この記事ではルーミスの顔(成人男性)を基準にしてプロポーション(proportion)や比率(ratio)を分析しています。
前回の記事(関連記事)
以下の記事については目を通していただけると話が理解しやすくなります。第1回から7回は横顔についてなので特に必要はないかもしれません。
第一回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-概略編-
第2回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-眼編-
第3回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-眉弓編-
第4回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-前頭骨・頭頂骨・後頭骨周辺
第5回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-鼻の描き方
第6回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-口の描き方
第7回:グリッドで人間の横顔を描く方法について考える-耳の描き方
【正面の顔の描き方】5分割線を使ってジャック・ハム式の顔を形成する
正円から構成する
ルーミスの基本の顔の形は主に6*6マスの正円から構成されています。
ジャック・ハムでは5*5マスだったので大きな違いですね。
まずは6*6マスの正円を作ってみます。クリスタのグリッドと図形ツールを利用しました。
顔全体は7*6
次に1マス縦に足します。これで横幅が6,縦幅が7になります。ジャック・ハムでは横幅が5で縦幅が7でしたので違いが出てきます。
もっとも両者とも最終的には似たような顔になるので、ルーミスでも実際は横幅5相当に近づきます。
側面を削る
どれくらい削るのでしょうか。色で示すとすればざっくりこのくらい側面を削ります。つまり合計1前後になるくらいには削ってしまいます。6-1で5になり、ジャック・ハムでの横幅5に近づきます。
顔の下部
下部を省略してざっくりと記号化すると、緑の部分になります。先程の赤の部分と合わせるとこのような概略になります。
こうですね。
耳のあたりももうすこし削れるかもしれません。
当てはめるとこうなりますね。
この青い部分がコア部分になるわけです。もちろんここから削ったり加えたりしてよりリアルな人間に近づけていきます。人間の顔が球体とは言いますが、実際は卵に近い形をしています。正円ではないですよね。
コア部分の数値化
まず側面は1の1/2を利用します。横幅は6ですが、そのうちの1の半分ということです。X軸的に言えばX0.5ですね。
反対側も同じように1/2を使います。X軸的には5.5ですが、絶対値的には同じ1/2です。
次はZ軸4あたりまで直線を利用します。そこからは斜線を使います。
(X,Z)の表現の場合だと、(0.5,4)から(1,1.8)にかけて斜線を伸ばすイメージです。あるいはX1上で最初に円と交わる位置へむけて斜線を伸ばすと考えてもいいのかもしれません。1.8はわりと細かい数値なので、円を交わる点と理解したほうがいいですね。
これを両方すると、形になってきます。
次は顎のコアを作ります。先程伸ばした斜線からさらにZ軸0,X軸2へ向けて線を伸ばすだけです。反対側も同じように左右対称に行います。コアを作るだけなら全然難しくないですよね。
これで先ほどと同じような卵に近いコアができます。ここから丸みをつけたり、目や耳などをうまく配置して顔を作成していきます。
耳を先取りしてコアとして作成するなら、このような形状になるかもしれません。
グリッド的には1/2のさらに半分なのでX1/4を利用しています。耳の一番端でも6分割全て使わないというのがポイントだと思います。耳を入れても5と1/2くらいですね。
細部を扱うとしたらこのような感じになるのだと思いますが、それはコアの概念とはすこしズレるかもしれません。
ジャック・ハム法との比較
ジャック・ハム法を以前紹介しましたが、見比べてみると意外と重なり合わない点がありますね。
ジャック・ハムよりルーミスのほうが頭部が大きい印象があります。
顎を付け足してみても、やはりジャック・ハム法は基本的に頭部が小さいようです。このくらいの違いは誤差や個性とみてもいいのかもしれません。重要なのはどちらのほうが描きやすいか、汎用性があるかです。女性や子供、老人と搔き分けする状況で頭部の大きさがどうだとかいうのは些末な問題だと思います。
5か6か
これは意外と大きな問題ですよね。5か6か。
何がというと球体の分割の数です。デジタルだとあまり大差ありませんが、アナログやあるいはデジタルでもフリーハンドで5分割と6分割というのは大きな違いがあるのです。
まず丸十字で顔を描くというのは有名な方法だと思います。
しかし十字から5分割をつくるというのはフリーハンドではなかなか難しい。
これを乗り越える方法としては、十字を作る段階で5分割に気を配るという方法で前回は乗り越えました。今回すこし適当に描いてしまいましたが、集中して同じ幅だけ丁寧に足していけば、それなりの分割的に正しい球体が描けるはずです。
今回は適当に円を描きましたが、気になったのできれいにフリーハンドで円を描くための記事を作りました。
もしデジタルならグリッドや定規があるので、必ずしも白紙の背景で行う必要はありません。
グリッドの大きさや分割数も自由に変えられるので汎用性は高いと思います。アナログでも定規やグリッド定規を使えばそれに近いことが可能になります。
球体をフリーできれいに描くのはそれはまた別の練習方法なので割愛します。デジタルの場合はほんとうに綺麗に描きたい場合は図形ツールを使えばいいだけの話です。アナログの場合も円定規を使うという手段があります。
そもそも目から描いても全体が描けるようになるくらいに相対感覚を洗練させれば必ずしも球体を使う必要がないかもしれませんね。
あるいは最初からひな形となるグリッドベースの顔を用意して、毎回それをコピーペーストしてレイヤー下書きとして使うというのも賢いかもしれません。何通りも雛形を用意しておけば、毎回同じ顔になるという自体を防ぐことが出来ます。
アナログで6分割でベースを形作るにはどうすればいいか
詳細は上の記事で扱っていますので、こちらでは軽く扱います。
1辺を6分割するということは、ひとつの正方形の中に6*6で36個もの正方形ができることになります。その意味で36分割ですね。
ルーミスの場合も6*6で36個も分ける必要があります。
まず1辺を3分割する方法は簡単です。中心に三角形を作り、対角線との交点を見つけて線を引くだけです。
ここからさらに分割するためには、さらに対角線を引く必要があります。アナログの場合はここまでしなくても、だいたいこのへんが1/2だろうと印をいれるだけでもいいと思います。すべての分割を使うわけでもないので、ここまでの細かさは正直いらないと思います。
3*3からコアを作っていく
ルーミスの顔全体の高さは横6に対して7です。ということは6分割のうちの1分割の長さが必要になります。
そして1/6は1/3の1/2です。これだけの分割線で1/6がわかります。
この1/6を高さとして追加することで、全体の高さが7になります。
ここから順序通りすると、コアの部分が完成します。
さてまずは側面のカットからです。カットは1/6の半分、つまり1/12で行われます。
両側に行います。顔の構成でこのカット部分はネガスペースになります。
円を使うのは上半分だけ?
今回使うコアで円の線を使うのは上半分だけなので、円をすべてつかうわけではありません。
実際にコアに使うのはこの緑の部分です。正確に言えば他に使うのですが、線画として用いるのはこの部分だけす。もっともコアに使うだけで、丸みをつけたりして修正する必要があります。
顔の半分のコアを作成する
まずは眉から鼻の高さにかけて、斜めに線をおろします。
次は顎の部分の幅が2/6になるように線を伸ばします。
これでコアの殆どの部分が完成しました。
あとは耳を追加したり修正したりするのですが、コアといえるかどうかわからないので省略します。これらは各論で扱います。
相対感覚を身に着ける
どこから描いても他のパーツのサイズ感がわかるようになれば、目から描いても顔が描けるようになるはずです。耳から描いても描けるようになるはずです。
つまりどこから描いても顔が構成できるようになることが目標です。部分的に目を大きくすれば個性がでますし、応用性もあります。あまりにも各パーツの比率が変わるようなら、それをメモしておいていつでも参照できるようにすればいいだけです。
自分のキャラを作り、その比率をいつでも参照できるようにすれば再現性が高まります。
目から構成する意識の流れとしては例えばこのような感じです。自分のやりやすい流れというのを模索するといいかもしれません。描きやすいのは十字、正方形、円と順に構成していくことですが、慣れれば目からでも描けるようになるはずです。
参考文献
2:スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版
3:スカルプターのための美術解剖学 2 表情編 (Anatomy of Facial Expression 日本語版)
参考文献
人体の描き方関連
ルーミスさんの本です。はじめて手にした参考書なので、バイブル的な感じがあります。
人体のデッサン技法 ジャック・ハムも同時期に手に入れましたが、比率で考えるという手法にルーミス同様に感動した覚えがあります。ルーミスとは違う切り口で顔の描き方を学べます。
解剖学関連
スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版 スカルプターのための美術解剖学 2 表情編
一番オススメの文献です。3Dのオブジェクトを元に作られているのでかなり正確です。顔に特化しているので、顔の筋肉や脂肪の構造がよくわかります。文章よりイラストの割合のほうが圧倒的に多いです。驚いたときはどのような筋肉構造になるか、笑ったときはどのような筋肉構造になるかなどを専門的に学べることができ、イラスト作成においても重要な資料になります。
こちらはほとんどアナログでイラストがつくられています。どれも素晴らしいイラストで、わかりやすいです。文章が少し専門的で、難しい印象があります。先程紹介したスカルプターのための美術解剖学よりも説明のための文章量が圧倒的に多く、得られる知識も多いです。併用したほうがいいのかもしれません。
遠近法関連
これが一番おすすめです。難易度は中です。
これは難易度は小ですが、とてもわかりやすく説明されています。
スコット・ロバートソンのHow to Draw -オブジェクトに構造を与え、実現可能なモデルとして描く方法-
難易度は大ですが、応用知識がたくさんあります。
色関連
やはりこれですかね。
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