ビヒモスとは
意味
「ビヒモス」とは?意味と定義
・ビヒモス(英;Behemoth):ヘブライ、キリスト、イスラム教などに登場する怪物。『ヨブ記』では神が造った最高傑作とされ、象や河馬のような見た目をしている最強の獣である。『第四エズラ書』ではレヴィアタンをメス、ビヒモスをオスとしてつがいとして天地創造の3日目につくられたとある。聖書では悪魔というより、神がつくった獣というイメージが強い。やがて人々の食糧とされるために造られたらしい。
悪魔として扱われるのは中世以降であり、『地獄の辞典』では象の頭をした腹が膨れた悪魔として描かれ、大食を司るとある。グリモワなどでも人々を過食に引き込む悪魔として扱われている。
ベヘモス、ベヘモト、ベヘモット、ビヒーモスともいう。
時系列整理(表)
年代 | 書籍 |
---|---|
前200年頃 | 『ヨブ記』第40章 |
1世紀頃 | 『シリア語バルク黙示録』第29章 |
1世紀頃 | 『第四エズラ書』 |
8世紀頃 | 『エチオピア語エノク書』第60章 |
1486年 | シュプレンゲル&クラメル『Malleus Maleficarum』(『魔女に与える鉄槌』)Question IV |
1632年 | ルーダンの悪魔憑き事件 |
1647年 | ルーヴィエの悪魔憑き事件 |
1667年 | ミルトン『失楽園』 |
1726年 | ジェイムズ・トムスン『四季』 |
1812年 | コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』 |
1825年 | ウィリアム・ブレイク『ヨブ記』の挿絵 |
ビヒモスの外見の特徴
以下にあるものは『ヨブ記』の中のビヒモスの描写です。
1:尻尾は杉の枝のようにたわんでいる
【杉の枝のイメージ】出典:https://www.eventec.co.jp/product/7006.html
2:腿(もも)の筋は固く絡み合っている。太腿(ふともも)のことだと思います。
3:骨は青銅の管、骨組みは鋼鉄の棒を組み合わせたようなもの
4:動物に例えると、サイ、カバ、水牛、象など諸説ある
『悪魔の辞典』によれば「本来、聖書のベヘモットはカバを指すものだと考えられていたが、イギリスの詩人ジェイムズ・トムスンがサイと解し、おそれくこれに影響されて、ウィリアム・ブレイクは鎧をつけた牙のあるカバを描いたのだろう。ただしこれが『ヨブ記』40章の生物のかなりストレートな表現だという可能性もある(357P)」とあります。
したがってカバのイメージが一番強いのかもしれません。欽定訳聖書の脚注によって象のイメージが強くなり、コラン・ド・プランシーのによって象の悪魔のイメージが根付いたのかもしれません。
ビヒモスの性格・能力
1:神の最高傑作
神がヨブ(人間)に自慢するくらいですが、ものすごい獣なんでしょうね。『ヨブ記』にも「神の最高傑作」とあります。
2:最高の防御力
『ヨブ記』には「造り主をおいて剣をそれに突きつけるものはいない」とあります。つまり皮膚が硬すぎて神様以外の力では剣が通らないと解釈することができます。あるいは強すぎて突きつけようとも思わないのかもしれません。
「だれが、かぎでこれを捕えることができるか。だれが、わなでその鼻を貫くことができるか」ともあります。「かぎ」とは獣の鉤爪ではないでしょうか。ライオンでもおそらく捕らえることはできないでしょう。ゾウとライオンが戦っても、ゾウが勝つのではないでしょうか。
3:温厚な性格
『ヨブ記』には草食動物であり、野の獣と遊ぶとあります。意外と大人しいのではないでしょうか。
4:潜んでいる場所
「酸棗の木の下に伏し、葦の茂み、または沼に隠れている」とあります。
酸棗の木はおそらくナツメの木のことではないでしょうか。木の下に伏せることができる大きさなんですかね。ゴジラ並みに巨大というわけではなさそうです。
『第四エズラ書』によれば天地創造の3日目に乾いて陸となった部分にベヒモスを住まわせたとあるので、荒野に近いイメージの場所に住んでいるのかもしれません。
5:体重がすごそう
「見よ、たとい川が荒れても、これは驚かない。ヨルダンがその口に注ぎかかっても、これはあわてない。」と『ヨブ記』にあります。ヨルダン川が荒れてもびくともしないような巨体なんでしょうね。
『失楽園』では「大地から生まれたものの中でも最大のベヒーモス」とあります。『エズラ書』では巨体すぎてレヴィアタンと共に海で暮らせず陸にうつしたともあります。
6:性別はオス?
「その日、二匹の怪獣は分かれ、レヴィヤタンという名の雌の怪獣は海のどん底、水の源の上に住み、名をベヘモットという雄は胸で眼に見えない荒野をつかんでいる。」と『エノク書』にあることから、ビヒモス(ベヘモット)がオスだという説があります。創作には使えそうですね。
つがいのレヴィアタンについては以下の記事をどうぞ。
【悪魔】レヴィアタン(リヴァイアサン)とはなにか?意味、エピソード、イラスト、元ネタ紹介
ビヒモスは悪魔なのか?
ビヒモスが悪魔的な扱いを受けるのは中世以降
これはいろいろな説がありますが、『ヨブ記』や『エズラ書』、『エノク書』といった旧約聖書関係に出てくるビヒモスは悪魔的な要素があまりありません。レヴィアタンも同様です。
ビヒモスが悪魔的な扱いをされるのは主に中世以降です。
ルーダンの悪魔憑き事件に登場するビヒモス
「ルーダンの悪魔憑き事件」とは?意味と定義
「私は、この修道女から立ち去るとき、針ほどの長さの切り口を心臓の下につくり、その切り口は彼女の下着、胴着、上衣を血で染めるであろうことを約束します。そして、明日、5月20日の日曜日午後5時、悪魔のグレジルとアマンも同様にしてやや小さい切り口をつくることを約束しますー私は、レヴィアタン、ベヘモト、べーリその他の仲間たちがした約束、すなわち、出るときには聖十字架教会の登録簿に署名するという約束を認めます。1629年5月19日記 アスモデウス(署名)(『魔法 その歴史と正体』K・セリグマン著 平田寛訳 人文書院刊)」
フランスのルーダンという田舎町の修道院でおきた悪魔憑き事件です。ある美男子の司教(ユルダン・グランディエ)が新しくこの町に来たことからはじまります。司教は美男子なので町の婦人たちの注目の的になり、街中に噂が広がっていきました。司教は多くの女性と関係をもつことになります。
そうした状況をみて、司教を破滅させたいと考えた政治的敵対勢力が「悪魔憑き現象」をでっちあげたのです。修道院長ジャンヌ・デ・ザンジュなどの人間に多くの悪魔が取り憑き、取り憑いた原因は司教が修道院に投げ込んだバラの中に悪魔がいたからだ、と調査によって暴露されたのです。アスタロトやレヴィアタン、アスモデウスなど有名な悪魔が取り憑いています。
悪魔憑き騒動が始まったのは1632年の10月で、裁判が開かれましたが裁判所や医者は悪魔によるものではないと判断して一旦はおさまりました。しかし1933年の夏に再び最大の敵対勢力である枢機卿リシュリシューが動き、腹心のローバルドモンが司教を取り調べ、アスモデウスの契約書などが証拠として提出されたのです。
結局1634年8月18日に、司教グランディエは生きたまま火刑になったそうです。
【関連する悪魔】
ネフタロン、チャム、ザブロン、レヴィアタン、アーマン、イサカーロン、バラーム、アスモデウス、アチャス、アリクス、ベヘモット、アリクス、ユリエル、アスタロト等
暴食・大食のイメージとなったビヒモス
おそらく『地獄の辞典』のイメージがビヒモスの悪魔的要素の最たるものだと思います。
威張っているが、鈍重かつ愚味な魔神。がっしりと逞しく、美食や大食を専門領分とする。地獄で膳部官と酌人頭を勤めるとする悪魔学者もいる。ボダンの説では、ベヘモスはヘブライ人を迫害したエジプトのファラオにほかならない。ヨブ記には巨大な怪物として描かれ、注釈者たちは鯨であるとか、象であるとか主張するが、それ以外の絶滅種かもしれぬ。
(『地獄の辞典』1812年 コラン・ド・プランシー)
1812年というと中世というより近世ですが、ビヒモスの悪魔的なイメージとして受けられている有名なものです。
「美食や大食」のイメージはおそらく『ヨブ記』の「 河馬を見よ、これはあなたと同様にわたしが造ったもので、牛のように草を食う」という説の牛のように草を食うというところでしょうか。ちなみにこの河馬が原典では「behemoth」になっています。ちなみに牛は1日餌をを30キロ食べるそうです。
牛は1日に草(牧草)を約10kg、サイレージを約10kg、濃厚飼料を約10~12kgと合計約30kgの餌を食べます。
こういったイメージから「大食」という悪いイメージがついたのだと思います。膳部とは調理師みたいなものですね。いわばコックです。酌人もお酒ですね。食に関連した悪魔のイメージがあるそうです。
ユダヤの伝説:レヴィアタンとビヒモスが戦う
出典がいまいちわかりませんが、キャロルローズの「世界の怪物・神獣辞典」では以下のような説明があります。
「最後の審判で救世主が現れる時、レヴィアタンとベヘモスは四つに組んで死ぬまで戦わされるという。残った体は、正直な人生を送ってきた『選ばれし者』のための食べ物となる(388P)。」
とあります。
たしかに『第四エズラ書』では「あなたはあなたのよしとされる人が、よしとされる時に食べるためにこれらの生き物を生かしておられたのです」とあるので、食糧としてビヒモスは聖書でも扱われているようです。
レヴィアタンとビヒモスはつがいでありカップルなのにもかかわらず、死ぬまで戦わされるとは悲しいですね。創作にも使えそうな要素ではあります。
中世ヨーロッパのキリストの伝説:人間を過食にさせる悪魔
出典がいまいちわかりませんが、キャロルローズの「世界の怪物・神獣辞典」では以下のような説明があります。
中世ヨーロッパのキリスト教の伝説では、ベヘモスは最も強大な力を持つ悪魔とみなされ、グロテスクな象の姿で現れる。『大食の喜び』を司り、人間を過食という悪徳に引き込むのが、この悪魔に課せられた仕事である(389P)。
どうやら中世のグリモアでは大食の罪を人々にそそのかす悪魔として紹介されているみたいですね。
「グリモワール」とは?意味と定義
・グリモワール(英:Grimoire):悪魔や天使などのさまざまな霊を祈りや対話や威嚇によって意のままに操り、自らの欲望を叶える方法が書かれた魔術書のこと。グリモワとも略される。主に17-18世紀に書かれたものが多い。『ソロモン王の鍵』などが有名。魔法円、印章、魔法杖、ペンタクル、ペンタグラム、シジルなどを利用する。
ビヒモスという言葉の意味
語源
あと、ベヒモスというのはヘブライ語のベヘマ「野獣」の複数形で、ヨブ記ではいわゆる「尊厳の複数」として 1 匹の神話的野獣を描いている。とりあえずは、それ以上のものではない。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10153092655
知恵袋が出典ですいませんが、こういった情報が書籍には記されてないので「へぇー」となりました。
ニコニコ大百科にも出典はありませんが、以下のようなものがあります。
名前はヘブライ語原典ではベヘーモート(בְּהֵמוֹת, behēmōth, 現代ヘブライ語ではベヘモットと発音)。語源については有力な説が2つあり、「(角の生えた)四脚の家畜」を意味するベヘマー(בְּהֵמָה, behemah, 現代ヘブライ語ではベヘマと発音し、専ら「動きの鈍い獣、低文明の田舎者」を指す)の複数形で、複数により「神の強大な家畜」を表す。なおベヒーモスを主語とする動詞は全て単数形である古代エジプト語でカバを指した p-eḥe-mau (文字通りの意味は「水場のウシ」)がヘブライ語化したもの
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%99%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%82%B9
角の生えた四脚の家畜をベヘマとヘブライ語でいうらしいですね。複数形で神の強大な家畜という、いわゆる最強の陸の獣的な意味になると。たしかに納得がいくような気がします。下にあるバハムートが元になったという説よりはよっぽど説得力があります。
バハムートとの関連性
「バハムート」とは?意味と定義
・バハムート(BAHAMUT):イスラム神話に登場する、大地を支える巨大な魚。イスラムの宇宙誌文献では、神が荒ぶる大地を天使に背負わせたが定まらず、天使の足元に岩盤を、岩盤を支える世界牛を、牛を乗せる大魚をという配列で安定したとあるらしい。
亀が支えているという話を聞いたことがあるが、あれはインドの宇宙にたいするイメージだったのか。調べてみるとそのイメージも誤りだという説があるらしい。
【悪魔との関連】
WIKIには「聖書『ヨブ記』のベヒモスの借用だとされる。陸獣ベヒモスを遡源とする魚というのは整合性を欠くが、これについては世界牛をベヒモス、世界魚を海獣レヴィアタンに比定すべきを、あべこべに混同したという指摘がある。 」とあります。
混同したという指摘が事実だとしたら、ベヘモスのイメージを適用したのは世界魚バハムートではなく、世界牛クーユータのほうだったということになります。反対に、ベヘモス(behemoth)の名前の由来がバハムート(bahamut)という説や、両者に共通した言語があるのではという推測もあるそうです。詳細はよくわかってなさそうですね。
一説によれば「バハムト(BAHAMUT)」からきてるといわれています。そうです、あのバハムートです。よくアニメやゲームでドラゴンとしてでてきますね。ただWIKIでバハムートを見ると、ヨブ記のbehemothを元にしているという逆のことが書かれているので、実際のところよくわかりません。
たしかにどちらかというとbehemothは魚ではなく牛に近いので、聖書のbehemothを由来としたというのは違和感がありますね。ちなみに牛の名前はクジャタ、クユーターなどというそうです。レービヤータン、クーユーター、転訛といえるかどうかは微妙ですが可能性はありそうですね。つまり世界牛がレビヤタンに由来し、世界魚がビヒモスに由来するというあべこべな転訛になっているということです。
『地獄の辞典』では「この言葉はイスラム伝承の強大な魚、『バハムト』に由来するといわれているが、この二つの名前に共通の語源があるにしても、ベヘモットは魚ではない(357P)」とあります。つまりbehemothがバハムートに由来しているわけではなく、behemothとbahamutの2つに共通した何らかの言葉があるのではないか、ということです。それがなにかはわからないということですね。
また別のページにはバハムートの項目で「イスラムの伝承において、この名前は強大な牡牛クジャタが乗る大魚の名前であり、クジャタの背中には大きなルビーがノリ、その上に天使が立って大地を支えている。この名前がデーモン学者にとって興味深いのは、ベヘモットの名前がこれに由来すると推測されるからである(310P)。」とあるので、やはり推測の域にすぎないことがわかります。
余談ですがロシア語でカバをbehemotというらしいです。
クユーターとの関連性
「クジャタ」とは?意味と定義
・クジャタ:クユーサー、クユーターなどとも呼ばれる。イスラム諸国の創世神話に登場する巨大な宇宙規模の生物。牡牛に似ていて、頭には4000の目、耳、口、鼻があり、胴体にも4000の足がついている。4万という説もある。
カズウィーニによれば、神は大地をかつぐ天使、宝石質の岩、牡牛の順に創造したとある。レインによれば宝石はルビーとあるが、ほかの宝石の可能性もある。緑色の宝石という説もあるようだ。
【イメージ】
【悪魔との関連】
レビヤタンの名前がクジャタに転訛されたという説がある。たしかにクユーター、レビヤタン、なんとなく似ているような気がしなくもない。それにビヒモスとレビヤタンを間違えたという説もあるそうだ。たしかに牛といえばレビヤタンではなくビヒモスのほうが似ている。象、カバ、水牛などのイメージがビヒモスにはあり、レビヤタンは蛇や竜、魚でたとえられるからだ。
個人的に宇宙誌文献というものは面白くてすきです。現代科学からみると鼻で笑われそうな世界観ですが、創作という観点で見ると興味深いものがあります。もしこのような世界だったら、というアイデアは創作において重要だからです。また、科学と違って比喩的な世界観なので、それが何を意味しているかは解釈次第というところも大切です。文字通りに魚や牛が支えているとみるのか、他のなにかのたとえなのかによって接する態度が変わりうると思います。
セト神との関連について
「セト」とは?意味と定義
・セト(Set):エジプト神話における戦争の神。エジプト神話の中のヘリオポス創世神話に関わる九柱の神のひとり。ツチブタの頭をした神。ジャッカル、犬、シマウマ、ロバ、ワニ、豚、カバなどに結び付けられた神。正体不明な動物を英語では「セト・アニマル」というらしい。大地の神ゲブと天空の女神ヌトの間に生まれた次男もしくは三男。
兄に冥界の神オシリス、妹に葬祭の女神ネフティスがいる(セトの嫁にもなる)。セトの兄オシリスは長男であり、父親の後継者として地上に降りて王になり、善政を行い人々から敬われる。兄に嫉妬したセトはオシリスを殺してしまう。やがてオシリスの息子であるホルスとセトは戦い、最後には裁判によって破れてしまう。
裁判に負けたセトは砂漠に追放される。神話によればセトは名前を蛇の神アペプ(Apep)と変えられ、闇に生きる悪魔の一人となったそうだ*1。
【イメージ】
【悪魔との関連】
・ビヒモス
「しかし、この姿はエジプトのセト神のシンボルでもあることから、自然というものの持つ”無秩序と破壊”という邪悪な力をイメージしたという説もある」と「堕天使たち 悪魔たちのプロフィール」の55Pにある。
説の出典が記されていないが、たしかに関連する動物に「カバ」もあるので近しいものはある。セトは砂漠に追放された後、人々に熱風をふきかえて疫病に陥れたりしたと考えられることもあったそうだ。たしかに砂漠という環境の過酷さの比喩としてのセトと、荒野などの陸に住むビヒモスとの関連性もある。
一方で、キャラバンを守る神としてのセトという側面もある。紀元前1294年ごろにはセティ1世という古代エジプト19王朝の第2代ファラオが誕生している。「セト神の君」という意味がセティにはあり、セト信仰があったようだ。
エジプトといえばユダヤ、古代イスラエルの敵というイメージが強い。つまりユダヤ教にとって異端の神という側面がある。1812年にコラン・ド・プランシーが『地獄の辞典』で「ベヘモスはヘブライ人を迫害したエジプトのファラオにほかならない」とあるが、セティと重なるのではないだろうか。
【出典】
1:「堕天使たち 悪魔たちのプロフィール」(新紀元社) 93P
ガネーシャとの関連について:ビヒモスのルーツを探る
正直、創造のアイデアの元とするのが目的であって、正確な歴史の考証や真実性はあまり興味がありません。論文の作成のためにこの記事を見ている人なんていないだろうからいいんですが、この項目はいろいろ議論があるそうです。オカルト的な話は脚色やらなんやらが多いですからね。特に出典としたページの読解が困難でした。調べても出てこない用語ばかりです。
まず、ヤハウェ(YHVH)がガネーシャの名前を名乗ったという衝撃的な話からはじまります。
そもそも知識が乏しい私はヤハウェって何?というところからはじまります。ああ、神かなんかでしょという認識しかありませんでした。調べてみると旧約聖書にあらわれるイスラエルの最高神を意味するそうです。言語学的にはセム語の「生成する、である」を意味するそうです。
もともとはシナイ山の神であり、軍神であったそうです。モーセ以後に倫理と律法の神になり、ヘブライ人の進行する唯一神になったと辞典などにはあります。
唯一神信仰で大成功をおさめたのは、古代イスラエル民族(今日のユダヤ人のご先祖様たち)のヤハウェ信仰です。ヤハウェはもともと中東の多神教世界の中の一柱の神にすぎなかったのですが、イスラエルの民はこれを唯一絶対の神、天地創造の神と解釈しなおしました。この伝統からユダヤ教が生まれ、のちの時代にユダヤ教からキリスト教とイスラム教が派生します。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は代表的な一神教です。
上記にあるように、もともとヤハウェは唯一の神ではなく、中東の多神教の神のひとりだったそうです。インドのヒンドゥー教ではさまざまな神が存在する多神教です。主要な神としてヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーがいます。
ガネーシャはシヴァ神の子供です。とはいってもシヴァ神の奥さんであるパールヴァティーが自分の体の汚れを集めて人形を作り、命を吹きこんで生んだ子供だそうです。シヴァ神は関係ないみたいですね。それどころか、シヴァ神はパールヴァティーが生んだ子供とは知らずに、家に帰ってきたときに浴室を見張っていたガネーシャに入室を断られ、ガネーシャのクビを切り落として遠くへ投げ出したそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1_Hindu_deity_Ganesha_on_ceramic_tile_at_Munnar_Kerala_India_March_2014.jpg
シヴァ神は後でパールヴァティーの子供だと知り、切り落とした首を探しにいきましたが見つからず、旅の最初に出会った象のクビを切り落として持ち帰り、ガネーシャの頭に取り付けて復活させたそうです。すごい話ですね。
ヒンドゥー教ではガネーシャは智慧や学問の神だそうです。
雄のゾウは、しばしば「子をもうける人」、「父」あるいは「祖父」という添え名を与えられた[3]。釈迦牟尼はガネーシャという添え名のゾウの神と乙女マーヤーの間に生まれた。このガネーシャという名前は「万軍の主」の意味で、おそらく戦争のときゾウが使用されることに由来している[4]。歴史を勉強している者は誰でも知っていることだが、北アフリカの戦争の指導者はゾウの魔力が勝利には欠かせないと思っていた。そこでカルタゴの将軍ハンニパルは北からローマを攻撃するために、アルプスを越えてゾウを連れて行こうと主張した。これは、悲惨な戦術的判断の誤りで、結果はゾウも戦いもともに失うことになった。
「万軍の主」のゾウ-神は北アフリカとエジプトでは盛んに崇拝された。そのために聖書のヤハウェにも同じ添え名が使われていた。紀元前5世紀には、ヤハウェはエレファンティーネの神聖都市では、ゾウ神と同一視されていた[5]。そこに駐屯したユダヤの傭兵は、処女母(virgin mother)ネート(古代エジプトの戦闘の女神)すなわちアナテのゾウ-配偶者と、彼らの神は同一人物だと主張した。この2人の神は当時ナイルの源と呼ばれていた場所で、雄と雌のゾウとしてトーテムにされた[6]。昔、エジプトではゾウは性を象徴する神として崇められていた。ゾウを示すトーテムの旗と象牙の加工品が王朝時代以前に出現していた[7]。
ヤハウェがゾウ崇拝に関係あることをユダヤ-キリスト教学者たちは、無視する傾向があった。それは、フックが言うように、「カナアンのパール神たちすべてと同じに、ヤハウェに女の配偶者があると考えられるという提言を受け入れることは、当然ながら、ほとんどの人(すなわち男)の反発を買った」からだ。伝えられるところによると、この当然の反発以外には理由もないのに、エレファンティーネにおける神聖な結婚の証拠は隠されてしまった。それでも同じ筆記者は、ヤハウェはその昔、パール神の1人であり、聖書の中でもパールと呼ばれていることを認めた[8]。
ヤハウェの息子のエジプトへの逃避行と奇妙に似た例が、仏教の図像にも発見されている。聖母が、百姓の服装をしたシヴァに導かれて、腕にゾウ-頭の神の子、すなわち再生したガネーシャを抱いて白い雄ウシに乗っている姿が示されている[9]。おそらくこの再生した神の起源ともなっているエジプトの神がピヒモスBehemothの名前のもとに聖書に登場したものだろう。ピヒモスはもっと後の西欧の神話では、ゾウ-頭の悪魔になった。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/elephant.html
このサイトによると、ガネーシャは軍神としての性質をもっているそうです。たしかに象は戦争で用いられるイメージが映画などでありますね。ロード・オブ・ザ・リングとか・・。
「紀元前5世紀には、ヤハウェはエレファンティーネの神聖都市では、ゾウ神と同一視されていた」というのが重要な箇所です。これを解釈すると、ヤハウェがガネーシャと名乗ったということになるのでしょうか。
「多神教時代の古代ユダヤ人の伝承では、ユダヤの神ヤハウェは”万軍の主”の称号を持つインドのゾウ神ガネーシャ(Ganesha)を名乗ったというのである。このあたりの経緯を説明しよう。当時のヤハウェは多くの神々のひとりであったが”万神の女王”であるアナテの夫となったことで、多くの神々を支配する立場を獲得したのである。つまりはヤハウェが唯一神になる過程を説明しているわけである。そして、当時の人々は、遠隔の地インドの神々たるガネーシャを知っていたのだ(『堕天使 悪魔たちのプロフィール』真野陸也,新紀元社,57P)」
と上記のような説明があります。
無知な私はここでもわからない存在が出てきます。「アナテ」です。というよりヤハウェに奥さんがいたという説に衝撃を受けています。これが論争を生みそうな点ですね。
アテナではなくアナテですね。調べてもあまり出てきません。ギリシア神話のアテナではないみたいですね。
どうやら調べていくうちにアナテは「アナト」を示しているでは?という気がしてきます。「アナテ」というワードを調べても出てこないからです。アナトはウガリット神話に登場する女神で、主神バアルの妹だそうです。愛と戦いの女神だそうです。処女の称号でもあるそうです。
アナト(Anath, Anatha, Anat, Neith, Ath-enna, Aynat)
西セム系の太女神。シュメールのイナンナ(別名インニン;ニンニ)、アッカドのイシュタルとほぼ同一性格。
フェニキア神話では、バアル神の娘、アラインの姉妹。ウガリト神話では、死者に水を供給する女神とされる。前2000年紀中頃からヘレニズム時代までのオリエント世界で広く崇拝された。
以下、バーバラ・ウォーカーの説明である。生誕と死の女神マリMariの双子の姉妹で、カナアン人、アモリ人、シリア人、エジプト人、ヘブライ人に崇拝された。ギリシア語を話すキュプロス島のフェニキア人は、アナテのことを「アナトAnat、生命の力強さ」と呼んだ。ラムセス2世時代のエジプトの石柱には「天界の女王」「万物の女王」と書かれていた。プトレマイオス王朝においては、アナテはエジプトとパレスティナを支配する女神であった。セム語系の文書を見ると、アナテの名は、「パレスティナの汚れなき乙女」「シオンに住む純潔なる知恵」となっている[註1]。
アナテは「万物の女王」なので、ヤハウェがアナテと結婚することで他の神よりも優位に立ち、唯一神になっていくという過程らしいですね。それにしてもヤハウェがウガリット神話の中のカナン人が崇拝する神々の中の1人にすぎなかったという解釈があることに驚きました。
紀元前5世紀にエレファンティーネというエジプトの島に駐留していたユダヤの憲兵が、ガネーシャとヤハウェを同一視したという話ですが、これも驚きました。同一視された経緯から、象という動物が強いイメージをもち、やがてビヒモスのイメージと重なったという解釈ですね。いわばビヒモスのルーツであるという推測です。
「ヤハウェの息子のエジプトへの逃避行と奇妙に似た例が、仏教の図像にも発見されている。聖母が、百姓の服装をしたシヴァに導かれて、腕にゾウ-頭の神の子、すなわち再生したガネーシャを抱いて白い雄ウシに乗っている姿が示されている[9]。おそらくこの再生した神の起源ともなっているエジプトの神がピヒモスBehemothの名前のもとに聖書に登場したものだろう。ピヒモスはもっと後の西欧の神話では、ゾウ-頭の悪魔になった」とありましたが、この画像ではないでしょうか。象の頭をした子供がガネーシャです。首をシヴァに切り取られた後、象の頭をつけて再生したあのガネーシャです。
総じて言えばインドの文化に影響を受けて、ビヒモスがイメージされたといったところでしょうか。
そんな話があるのかーくらいに思っておいたほうがいいかもしれません。学術的に興味がある人は引用したページから出典を探ってみるといいかもしれません。こういう話は突き詰めると神がいた証拠は?という話になりかねないのでほどほどにしておきます。
「ウガリット神話」とは?意味と定義
・ウガリット神話:「ウガリット」とは現在のシリア・アラブ共和国西部の都市ラス・シャムラにあった古代都市国家だそうです。紀元前1450年頃から紀元前1200年頃に都市国家として全盛期をむかえたとWIKIにあります。また「ユダヤの聖書へとつながるカナン神話の原型ともいわれるウガリット神話集が遺跡から見つかった」とあるように、ウガリット神話はユダヤの聖書へ影響を与えているといえます。ちなみに遺跡が見つかったのは1928年と最近ですね。
【悪魔との関連】
・ビヒモス:多神教時代にヤハウェとアナトの夫になっていたという説がある。その際にヤハウェはインドの神ガネーシャの名前を名乗ったという。ガネーシャは頭が象の神であり、ビヒモスの姿に影響を与えたという説。この説はいろいろと問題がありそうですが、一応記載しておきます。
ちなみに「堕天使 悪魔たちのプロフィール」などに書かれているこれらの説の大本の出典は以下のサイトがソースになっていると思われます。
「万軍の主」のゾウ-神は北アフリカとエジプトでは盛んに崇拝された。そのために聖書のヤハウェにも同じ添え名が使われていた。紀元前5世紀には、ヤハウェはエレファンティーネの神聖都市では、ゾウ神と同一視されていた[5]。そこに駐屯したユダヤの傭兵は、処女母(virgin mother)ネート(古代エジプトの戦闘の女神)すなわちアナテのゾウ-配偶者と、彼らの神は同一人物だと主張した。この2人の神は当時ナイルの源と呼ばれていた場所で、雄と雌のゾウとしてトーテムにされた[6]。昔、エジプトではゾウは性を象徴する神として崇められていた。ゾウを示すトーテムの旗と象牙の加工品が王朝時代以前に出現していた[7]。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/elephant.html
・レヴィアタン:ウガリット神話に登場する海の神ヤムやロタンがレヴィアタンと同一視されることがある。
【補足知識】
バアルはウガリット神話において、カナン地域を中心に崇められた嵐と慈悲の神。メソポタミアなどで信仰されていた天候神アダドはウガリットでは同一視されている。最高神イル、あるいはダゴンの子とも言われている。海の神ヤムや死の神モートは兄弟であり、敵対者。
ヤムは海や川を神格化した神。バアルは雨が地上を潤すと主張し、ヤムは川や泉で地上が潤されると主張したため対立している。争いは大神により裁定されることになり、すべてのものの源は水であるこという結論がくだり、ヤムが勝利する。その後でバアルがヤムを倒す。ヤムは竜の姿をしているらしい。
バアルはロタンを倒している。ロタンは7つの頭を持つ巨大なドラゴン。
神話には、アナトの語りによって彼女が倒すなどしたと分かる「竜[注釈 8]」と、「曲りくねる蛇[注釈 9]」、そして「七つ頭の暴れもの[注釈 10]」といった生き物が登場する。また、モートの語りによってバアルが倒したと読める「逃げる蛇レビヤタン[注釈 11]」または「「原初の蛇」ロタン[注釈 12]」と、「曲がりくねる蛇[注釈 13]」、そして「七つ頭の暴れもの[注釈 14]」といった生き物も登場する。レヴィアタン(レビヤタン)の名をヤムの別称と考える人もいる[27]が、谷川政美によれば別称かは明らかではない[28]。矢島文夫は、リタン(ロタン)とはヤムと同じ種類の生き物で7つの頭を持つ竜であり、旧約聖書に登場するレビヤタンであるとしている[29]。ロタン ( ltn, Lotan ) の名はレビヤタンと語源が同じである[30]。ただし、竜のヤム=ナハル(ヤム)はしばしば蛇と関連づけられている。蛇のレビヤタンはヤム=ナハルの従者である可能性もあるが、これもはっきりしない[28]。
なおレビヤタンの起源は、前述のロタンの他、アッカド神話の創世神話に登場する、女神である竜ティアマトにも求められるという[31]。
ビヒモスに関するエピソード
『ヨブ記』:神の傑作としての陸獣
「ヨブ記」とは?意味と定義
・『ヨブ記』:旧約聖書に収められている書物の一つ。紀元前5世紀から紀元前3世紀ごろにパレスチナで成立した文献とされている。内容は信仰深い人間のヨブが、神やサタンに試される話である。人間に無償の信仰心や無償の愛というものはあるのか?という興味深い内容。
サタンはヨブの信仰心を疑い、「信仰は利益を期待してのもの」と神に対して言う。神はヨブを信頼し、ヨブから財産を没収してどうなるか試してみることにする。財産を没収してもヨブの信仰心は変わらなかった。さらにサタンはヨブを肉体的苦痛を与え、ヨブを皮膚病にする。それでもヨブの信仰心は変わらなかった。サタンは敗北し、ヨブは財産を元に戻される。
神とサタンがヨブを試す過程ででる災いのひとつに、有名なビヒモス(陸の獣)やレヴィアタン(海の獣)が登場する。これらの獣はのちのち、悪魔として伝えられることになっていく。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%96%E8%A8%98
【関連する悪魔】
ビヒモス、レヴィアタン
第40章
1 主はまたヨブに答えて言われた、
2 「非難する者が全能者と争おうとするのか、神と論ずる者はこれに答えよ」。
3 そこで、ヨブは主に答えて言った、
4 「見よ、わたしはまことに卑しい者です、なんとあなたに答えましょうか。ただ手を口に当てるのみです。
5 わたしはすでに一度言いました、また言いません、すでに二度言いました、重ねて申しません」。
6 主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた、
7 「あなたは腰に帯して、男らしくせよ。わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。
8 あなたはなお、わたしに責任を負わそうとするのか。あなたはわたしを非とし、自分を是としようとするのか。
9 あなたは神のような腕を持っているのか、神のような声でとどろきわたることができるか。
10 あなたは威光と尊厳とをもってその身を飾り、栄光と華麗とをもってその身を装ってみよ。
11 あなたのあふるる怒りを漏らし、すべての高ぶる者を見て、これを低くせよ。
12 すべての高ぶる者を見て、これをかがませ、また悪人をその所で踏みつけ、
13 彼らをともにちりの中にうずめ、その顔を隠れた所に閉じこめよ。
14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右の手はあなたを救うことができるとしよう。
15 河馬を見よ、これはあなたと同様にわたしが造ったもので、牛のように草を食う。
16 見よ、その力は腰にあり、その勢いは腹の筋にある。
17 これはその尾を香柏のように動かし、そのももの筋は互にからみ合う。
18 その骨は青銅の管のようで、その肋骨は鉄の棒のようだ。
19 これは神のわざの第一のものであって、これを造った者がこれにつるぎを授けた。
20 山もこれがために食物をいだし、もろもろの野の獣もそこに遊ぶ。
21 これは酸棗の木の下に伏し、葦の茂み、または沼に隠れている。
22 酸棗の木はその陰でこれをおおい、川の柳はこれをめぐり囲む。
23 見よ、たとい川が荒れても、これは驚かない。ヨルダンがその口に注ぎかかっても、これはあわてない。
24 だれが、かぎでこれを捕えることができるか。だれが、わなでその鼻を貫くことができるか。
『ヨブ記』口語訳
https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%96%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)
口語訳では「河馬」になっていますが、元の用語はおそらくベヒモスだと思います。以下が別の翻訳の引用(の引用)です。
見よ、このベヘモットを。
お前を造ったわたしはこの獣をも造った。
これは牛のように草を食べる。
見よ、腰の力と腹筋の勢いを。
尾は杉の枝のようにたわみ、腿の筋は固く絡み合っている。
骨は青銅の管、骨組みは鋼鉄の棒を組み合わせたようだ。
これこそ神の傑作、造り主をおいて剣をそれに突きつける者はない。
(『ヨブ記』 『堕天使 悪魔たちのプロフィール』真野陸也)
ベヘモットとはベヒモスの別の呼称です。
文脈的にはヨブ(人間)に対して神が自分の力を示す感じですかね。私はこんなすごい獣を造ることができるんだぞ、という感じです。
肉食ではなく、草食動物みたいですね。筋肉がすごそうです。
象の筋肉すごそうですよね。動物では象最強説もあるくらいですから、強い獣なのは間違いないです。鼻はほとんど筋肉で構成され、10万もの異なる筋肉があるそうです。あの巨体を支える太腿(ふともも)ですから、それらも相当な筋肉があるのだと思います。
一方で、カバともいわれることがあります。たしかにカバも象に見た目が似ていますね。象と同じように、体のほとんどが筋肉でできていて、体重は2トン近くあるそうです。カバ最強説を唱える人がいるのもわかる気がします。象の次に重い生物だそうです。
カバは水中で生活することができるような体になってるというのもポイントだと思います。というのも、リヴァイアサンという水の獣とベヒモスは同時につくられ共に水中で生活していたが、あまりにも大きくて共に暮らすことができず、海と陸に両者を分けたという説があるからです。
「見よ、たとい川が荒れても、これは驚かない」とあるので、水に関連したイメージがあります。
昔魚のように水中で生活していたなごりで、水中にもすこし適用できるようになったと考えることもできます。いずれにせよ「陸の最強の獣」のイメージは強そうな陸の動物の混合的なイメージだと思われます。
「山もこれがために食物をいだし、もろもろの野の獣もそこに遊ぶ。」とヨブ記にありますが、ビヒモスの性格が温厚といわれる所以もここにあると思います。山はビヒモスのために草などを生やし、獣はビヒモスと遊んでる友好的な感じですね。いわゆる共存的な感じがあります。
カバは性格が温厚ではなく、縄張り意識が高い獰猛(どうもう)な性格をしています。一方、象は優しいイメージがありますよね。象は社交的で、遊ぶのも好きみたいです。どちらかといえば象がビヒモスのイメージに近いですね。
『第四エズラ書』:リヴァイアサンとベヒモスの関係とは?ベヒモスは食糧に?
「第四エズラ書」とは?意味と定義
・『第四エズラ書』:旧約聖書偽典(外典)のひとつ。第二エスドラス書とも呼ばれる。全16章の三部構成で、第3章から14章は「エズラの黙示」といわれ、紀元1世紀末ごろ作成されたといわれている。
内容はユダヤ教の祭司エズラが神に対して、なぜ一部のいい人しか天国へ行けないのか、そのひとたちしか天国へ入れないなら私は生まれなければよかったと問うている。
おもしろそうだ。たしかに環境によって人は罪を犯すかもしれないし、それによって天国へいけないなら生まれなければよかった、なぜ神は私(人間)を造ったのだのだと疑問に思うかもしれない。
エズラの疑問に対して神や天使は答え、7つの幻を見せたそうだ。
そののち、あなたは二つの生きものを生かしておかれました。その一つはベヘモートと名づけ、他の一つをレビアタンと名づけられたのです。
あなたはこの二つを別々のところにはなしておかれました。なぜなら水があつまったあの第七の区域は、これら二つの生きものをいっしょに入れておくことができなかったからです。
あなたはベヘモートには第三日目に水の干あがった土地、つまり多くの山のある陸地を住みかとして与え、一方レビヤタンには第七の区域、水のある場所をお与えになりました。
あなたはあなたのよしとされる人が、よしとされる時に食べるためにこれらの生き物を生かしておられたのです。
(関根正雄訳『旧約聖書外典』下巻/講談社文芸文庫)
【関連する悪魔】
・レビヤタン、ベヒモス
神は天地創造のときにレビヤタンとベヒモスを造り、海で誕生させた。しかし巨大すぎるため共に海で暮らすことができず、レビヤタンは海に、ベヒモスは陸に分けられたという。
【出典】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E3%82%A8%E3%82%BA%E3%83%A9%E6%9B%B8
『第四エズラ書』によれば天地創造の3日目に乾いて陸となった部分にベヒモスを住まわせたとあります。陸は荒野に近いそうです。「あなたはあなたのよしとされる人が、よしとされる時に食べるためにこれらの生き物を生かしておられたのです」ともあるので、ベヒモスは食糧になるみたいですね。
『エノク書』:ベヒモスは雄(オス)でレビヤタンは雌(メス)のツガイだった?
「エノク書」とは?意味と定義
エノク書:紀元前1-2世紀頃つくられたといわれる、エチオピア正教会における旧約聖書のひとつ。エノクの啓示という形を取る黙字文書。天界や地獄、最後の審判、ノアの大洪水についての予言などが語られている。初期のキリスト教やエチオピア正教以外では偽典(旧約聖書の正典・外典に含まれない文書)。
わずか数部しか存在しないとされる。ギリシア語のエノク書の断片はシュンケルスの著作に書き留められている。エチオピア語とスラヴ語版も発見されているが、この2つは後代の伝統と信仰に属するもので、偽エノク書などと呼ばれたりしているらしい(フレッド・ゲディングズ『悪魔の辞典』)。
【関連する悪魔】
・レビヤタン、ベヒモス
レビヤタンはメス、ベヒモスはオスとして扱われている。
その日、二匹の怪獣は分かれ、レヴィヤタンという名の雌の怪獣は海のどん底、水の源の上に住み、名をベヘモットという雄は胸で眼に見えない荒野をつかんでいる。
第60章(日本聖書学研究会編『聖書外典偽典4』)
ベヒモスのことをエノクに語っているのは神ではなく、大天使ミカエルだそうです。つがいという点は創作ではポイントになりそうですね。
『バルクの黙示録』:終末に人々の食料になるビヒモス
「バルクの黙示録」とは?意味と定義
・『バルクの黙示録』(バルクのもくしろく):旧約聖書偽典のひとつ。偽典とは旧約聖書正典・外典にも含まれないものをさす。85章からなる第2バルク書と、17章からなる第3バルク書にわけられる。黙示とは神が人に神意や真理を示すこと。
バルクはエレミヤ(古代ユダヤの預言者)の書記であるといわれている。内容はWIKIによると以下の通り。
バルク書は内容から大別すると、大きく3つに分けることができる。1つは、3章8節までで、内容としては捕囚として連れて行かれたバルクが、エルサレムに残った者に手紙を送る、といったものである。2つめは4章4節まで。内容は知恵文学に分類される。3番目の範囲は残り全部であり、エルサレムを慰め、元気づけるといった内容である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%AE%E9%BB%99%E7%A4%BA%E9%8C%B2
【悪魔との関連】
・レビヤタン、ビヒモス
またベヘモートがその塒から姿を現わし、レビヤタンは海中からのぼってくるであろう。この二匹の巨獣は創造の五日目にわたしが創って、生き残る者たちの食料としてそのときまでとっておくのである。
『シリア語バルク黙示録』第29章(日本聖書学研究会編『聖書外典偽典5』)
塒(ねぐら)とは寝る場所をさすのだとおもいます。荒野のどこかの洞窟でしょうか。『第四エズラ書』ではつがいで3日目につくられたとあり、違いがありますね。食料となるのは同じです。
ベヒモスは終末に食糧とするためにつくられたと解釈することができます。キリスト教で「終末」といえば最後の審判やキリストの復活のイメージがありますよね。人が死んだら地獄や天国に行くイメージがありますが、それは個の終末であり、人類の終末ではないですよね。いずれ生きてる人も死んでいる人も裁かれるような時がくるのでしょうか。いわゆる「最後の審判」がそれにあたるのだと思います。
ゾロアスター教では終末に死んでいる人もすべて復活させ(!)、最後の審判を下すそうです。キリスト教でも死者は永遠の命をもって復活するとあります。イスラム教では生きている人はすべて死に、全人類を復活させて裁判にかけるそうですね。
『魔女に与える鉄槌』:ビヒモスが悪魔として扱われ始める
「魔女に与える鉄槌」とは?意味と定義
・『魔女に与える鉄槌(Malleus Mleficarum)』;まじょにあたえるてっつい:1486年にドミニコ会士(カトリックの修道会)で異端審問官であったハイリンヒ・クラーマーによって書かれた魔女に関する論文。中世の魔女関連書の中で有名な書物。
内容は魔女の妖術の存在や、妖術を扱う人間や男より女が多いこと、魔女の発見の手順や証明についてだそうだ。
教会は1490年にクラーマーを弾劾(だんがい)、つまりクビにしたわけだが、この本は読まれ続けたという。
【関連する悪魔】
ビヒモス、すなわち獣。なぜなら、彼は人間の獣性を生み出すからだ。
『魔女に与える鉄槌』 ページ数不明 JD訳
【出典】
ビヒモスはレビヤタンと同じように、最強の獣として創造されただけで、必ずしも悪の存在として聖書では語られていませんでした。人間を襲う描写もありません。むしろ終末に人間の食糧となる益獣とでもいえる存在ではないでしょうか。
中世以降、多くの生き物が悪魔として扱われる傾向があります。もともと聖書は他の宗教などの異端な神々を悪魔として組み込む傾向があるので、致し方ないのかもしれません。
『失楽園』:ミルトンはビヒモスを象と解釈した
「失楽園」とは?意味と定義
『失楽園』(1667年):ジョン・ミルトンによる旧約聖書の『創世記』をテーマにした叙事詩。ヤハウェに叛逆して一敗地にまみれた堕天使のルシファーの再起と、ルシファーの人間に対する嫉妬、およびルシファーの謀略により楽園追放に至るも、その罪を自覚して甘受し楽園を去る人間の偉大さを描いている(WIKIより)。
【関連する悪魔】
・ビヒモス
大地から生まれたものの中でも最大のベヒーモスも、いわば、その鋳型から辛うじてその巨体をもちあげた。
(『失楽園』)
注釈でミルトンはビヒモスを象と解釈したとあるそうだ。
ミルトンが象と解釈したからなんだという話ではあります。天地創造のときに神が動物たちを生み出すシーンですね。鋳型(いがた)のイメージは、チョコレートをハートの形に形成する時のハートの金属みたいな感じでしょうか。ベヒモスは相当でかいので、鋳型もでかいでしょうね。
ジェームズ・トムソンによるビヒモスのイメージ
「ジェームズ・トムソン」とは?意味と定義
・ジェームズ・トムソン(1700-1748年):スコットランドの詩人。『四季』にベヒモスをサイを解釈したものがある(『悪魔の辞典』)。
『悪魔の辞典』によれば「本来、聖書のベヘモットはカバを指すものだと考えられていたが、イギリスの詩人ジェイムズ・トムスンがサイと解し、おそれくこれに影響されて、ウィリアム・ブレイクは鎧をつけた牙のあるカバを描いたのだろう。ただしこれが『ヨブ記』40章の生物のかなりストレートな表現だという可能性もある(357P)」とあります。
ウィリアム・ブレイクによるビヒモスのイメージ
「ウィリアム・ブレイク」とは?意味と定義
ウィリアム・ブレイク(1757-1827):イギリスの詩人、画家。預言書『ミルトン』で有名。
【悪魔との関連】
・レヴィアタン:「とぐろを巻く海の蛇」とレヴィアタンを表現している。ブレイクにとってレヴィアタンは「ねじまがった蛇」であり、「人間の内部で抗争する悪の象徴」だという。また、「もっとも深い地獄にそびえ、点のアーチに達する二本の柱」とも表現している(『ジェルサレム』)。「驕り(おごり)の子すべてを支配する王」とも表現しているらしい(『悪魔の辞典』)。
ブレイクはレヴィアタンを「無意識の存在」とし、「人間の意識下に救う邪悪」とも表現しているらしい(『堕天使 悪魔たちのプロフィール』)。邪悪だが、神に敵対する意識がないという意味だろうか。ヨナ書では神のいうことを素直に聞く魚としても表現されているので敵対するイメージはあまりない。「悪魔」として強く扱われるようになったのは16世紀以降の悪魔学の影響が強いと言える。
・ビヒモス
ブレイクはレビヤタンと同様に、ヒビモスも「無意識の存在」としている。
真ん中にいるカバのような生き物がウィリアム・ブレイクによるベヒモスのイメージである。下の蛇のような生き物がレビヤタンである。
『悪魔の辞典』によれば「本来、聖書のベヘモットはカバを指すものだと考えられていたが、イギリスの詩人ジェイムズ・トムスンがサイと解し、おそれくこれに影響されて、ウィリアム・ブレイクは鎧をつけた牙のあるカバを描いたのだろう。ただしこれが『ヨブ記』40章の生物のかなりストレートな表現だという可能性もある(357P)」と解釈されている。
『地獄の辞典』:最も有名なビヒモスのイメージ?悪魔として解釈されたヒビモス
「地獄の辞典」とは?意味と定義
・『地獄の辞典』は1826年にフランスの文筆家コラン・ド・プランシーによって描かれた悪魔などのエピソードを集めた辞書形式の書籍。M・L・ブルトンによる挿絵が有名。情報が多いが、中には誤りも多くあるらしい。
【悪魔との関連】
・ベヒモス
威張っているが、鈍重かつ愚味な魔神。がっしりと逞しく、美食や大食を専門領分とする。地獄で膳部官と酌人頭を勤めるとする悪魔学者もいる。ボダンの説では、ベヘモスはヘブライ人を迫害したエジプトのファラオにほかならない。ヨブ記には巨大な怪物として描かれ、注釈者たちは鯨であるとか、象であるとか主張するが、それ以外の絶滅種かもしれぬ。
(『地獄の辞典』)
膳部(ぜんぶ):料理
酌人:酒の席で酌をする人
神が自慢するほどの陸の獣で、獣と戯れる温厚な生活をもつベヒモスが愚昧(馬鹿)な魔神という悪魔として扱われてしまいましたね。象は賢い動物と言われいるのでなかなかイメージしにくいものがあります。ゆったりしてそうなので鈍重というイメージはできます。
ブラヴァツキーによるビヒモスの解釈:ビヒモスはサタンか?
「ブラヴァツキー」とは?意味と定義
ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー(1831-1891,Bravatsky):ロシアの秘教家で神学の論客。オカルティスト。ブラヴァツキーいわく悪魔は人間の進化において重要な目的をもっている。「夜が昼を生み出すように必要であるように、また死が生にとって人間が永遠に生きられるように必要であるように、悪は進歩と進化のために必要なものである(『秘密の教義』)」。
【悪魔との関連】
・ビヒモス
「ブラヴァツキーはこの聖書ののベヘモットが闇の原理、サタンの別名であることに疑いをもっていないが、欽定訳聖書の脚注では『一部のものが考えるような象である』とされているだけである(『悪魔の辞典』フレッド・ゲディングズ 357P)。」
「欽定訳聖書(きんていやくせいしょ)」とは1611年に刊行された、国王の命令によって翻訳された聖書のことだそうです。ブラヴァツキーはビヒモスをサタンの別名だと解釈したが、その根拠は不明ということでしょうか。
ビヒモス関連のイラスト
https://www.deviantart.com/art-minion-andrew0/art/Behemoth-and-Leviathan-colored-139730871
Behemoth and Leviathan coloredByArt-Minion-Andrew0
上記の絵は、おそらくウィリアム・ブレイクの挿絵のアレンジですね。
角が生えてトリケラトプスに近いイメージになっていますね。
上の画像も巨大な生物ですね。やはり最強の陸の獣といえば現代では恐竜のイメージが強いですよね。
https://www.deviantart.com/putriduscor/art/Behemoth-and-Leviathan-37635096
これはビヒモスとレヴィアタンが争っているような、あるいはじゃれているようなイメージです。つがいであると同時に、最後は争うという説もあるのでイメージに沿ってますね。
https://i.pinimg.com/originals/01/07/d7/0107d73e231975be1bd43d87c64f2909.jpg
こちらも両者を描いたものですね。河馬や象を組み合わせた聖書に近いイメージです。
こちらのイメージもさまざまな動物を組み合わせた悪魔と言った感じですね。
こちらは独創的ですね。巨大な生物といった感じです。日本でいうところのデイダラボッチに近い感じですね。
参考文献
参考書籍
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