目次
マステマとは
意味
マステマに関するエピソード
『ヨベル書』:神に命乞いをした堕天使
「主よ、創造主よ。彼らのうち何人かはわたしに残してください。わたしのいうことを聞かせ、わたしが彼らに命ずることをすべて行わせたいのです。彼らのうちひとりも残してもらわなかったら、人の子らに対してわたしは自分の意思を思うとおりに行うことができなくなります。彼らはわたしの決定に従って堕落させたり、滅ぼしたり、迷わせたりするのが約目です。人の子らの悪事にははなはだしいものがあります(『ヨベル記』)。」
「彼ら」というのは堕天使のことであり、悪霊のことでもあります。つまり悪魔のことです。
神は人間を監視するために天使を何度か派遣していました。派遣された天使をグリゴリと呼ぶことがあります。彼らは人間の娘に恋をして、子供を作ってしまい、さらには知識まで教えてしまうのです。武器の使い方、化粧の仕方などを教えて人間は堕落していきました。
さらには人間と天使の間に産まれた子は巨人となり、人間の作物を食い荒らし、人間を食べ、ついには巨人同士で共食いを始め、地上に厄災をもたらしました。それに怒った神が彼らを排除しようとするわけです。
有名な悪魔であるアザゼルもその中の堕天使の一人であり、指導者の一人です。アステマも同じ指導者のひとりです。アザゼルは大天使ラファエルによって暗闇に幽閉されてしまいました。その他の堕天使たちや巨人の多くも幽閉されましたが、幽閉されても巨人たちの霊が地上に残っていたそうです。
巨人たちの霊は悪霊となり、人間を罪に陥れて滅ぼそうとします。そんな光景を見た神は再び悪霊を拘束しようとしますが、アザゼルが命乞いをするわけです。悪霊のうち何人かは残してくださいと。それで10分の9は縛られて暗闇に投げられ、残りの10分の1は地上で悪魔の命令に従うために残されたそうです。
「彼らはわたしの決定に従って堕落させたり、滅ぼしたり、迷わせたりするのが約目です」マステマがいっているように、悪霊はアステマの命令はきくようです。
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『ヨベル書』:神に悪行を許される悪魔の存在
神が人間を罪に陥れようとする悪魔の存在を認めたというのは興味深いですよね。神がそんなことをするはずがない、と考える人もいるはずです。だから聖書正典ではなく偽典として扱われることが多いのではないでしょうか。話としては面白いですね。
マステマいわく、「人の子らの悪事にははなはだしいものがあります」ということです。つまり人間は悪魔がそそのかさなくても、元々悪い面をもっているということです。本性をあらわにしているだけで、元々善い存在を悪い存在に変えようとしているわけではないといったところでしょうか。化けの皮を剥がす存在も必要なのでは、という解釈もできます。『ヨベル書』の中で神は悪魔に対して防御する方法もモーセに教えているらしいです。ほったらかしというわけではなさそうですね。
『ヨベル書』:サタンと同一視されるアステマ
『ヨベル書』ではサタンとアステマが同一視されています。堕天使の指導者であり、残された悪霊の指導者でもあるのでサタンと同一視されても不思議ではありません。
またMastemaのstmは動詞の憎む(stm)で、サタンはstn(対立者・敵)という意味なので近しい存在と言えますね。
『ヨベル書』:神の悪の特性がアステマのせいにされる
旧約聖書では神の悪い面があったということですが、具体的には以下の内容です。
1:ユダヤの族長アブラハムに息子イサクを殺させようとする
2:ユダヤの英雄モーセを殺そうとする
3:エジプト人たちに産まれた長子を皆殺しにした
こうした神の行為が、『ヨベル書』ではアステマのせいにされているそうです。
参考文献
参考書籍
1:「知っておきたい天使・聖獣と悪魔・魔獣」,荒木正純,(西東社)
2:「悪魔の辞典」、フレッド・ゲティングズ、(青土社)
3:「図解 悪魔学」、草野巧、(新紀元社)
4:「堕天使 悪魔たちのプロフィール」、真野陸也、新紀元社
5:「悪魔辞典」、山北篤、新紀元社
引用画像
・1:https://artsycraftsy.com/dore_prints.html
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