ライティングとはなにか 絵を描くために必要な光源と照明用語の理解

ライティングとはなにか

意味

ライティングとは:意味と定義
ライティング(lighting):影を描きたい位置に描くために、その対となる光の当て方を考えること。光の位置、配置、調整プロセスのことを指す。光源の位置の設定や強さ、色などさまざまな要素がある。光源の種類にはキーライト、フィルライト、ユーティリティライトの2つがある。イラストを描く際にライティング作業は欠かせないものとなっている。「writing」と混同しないように注意してください。スポットライトのライトです。リライトのライトではありません。

 

絵を描く際にライティングの理解は必須知識になるのでしっかり学んでいきましょう。ここが初心者と中級者の分岐点の1つになると思います。この記事はライティングの基幹記事となるものなので随時更新予定です。

たとえば厚塗りでは最初にモノクロでシルエットと陰影をつけます(シェーディング)が、光源の位置が決まっていないとうまくいきません。光源の位置を決める、すなわちライティングを行ってからシェーディングをするというのが一連の流れになります。この2つは切っても切り離せない関係になります。その後で色を付けます(カラーリング)となります、

もっと大枠で考えると、ドローイング(線画)、ライティング(光源の設定)、シェーディング(陰影付け)、カラーリング(色付け)の4つの項目で絵の基本部分は完成すると言っていいと思います。それ以外は構図の設定など細かい位置関係、どんな絵を描くかというそもそものアイデアの絞り出しがあります。

”なにを描くか(what)”が絵を描くためには一番重要ですが、描きたいものが定まって”どう描くか(how)”の段階になったときに上の4つの項目の学習は力になってくれるはずです。whatは才能が関係してくるかもしれませんが、howは学習すれば必ず身につきます。

光源の種類

光源

光源とは:意味と定義
光源(英:light source):自ら光を発する発光体。あるいは反射や屈折により光を放つ物体。代表的な光源は太陽。太陽が左上にあれば、物体の影は右下といった光源の設定ができる。光源の位置をはっきりさせることでイラストにリアリティが加わる。

 

光源の例

光源の例:太陽

光源が右上

光源が右上

光源が右上だと左下に影

光源が右上だと左下に影

たとえば光源がオブジェクトの前、かつ右上にあるとします。そうするとオブジェクトの陰影は左下にいけばいくほど強くなるというふうに理解できます。

光源が右上の場合の球の影

光源が右上の場合の球の影

反射光やオクルージョンシャドウなどを入れて、一般的な球の形にするとこのような陰影になります。

これは単純な光源のテストです。自然界には晴天もあれば曇天、雨天、雷、夕焼けもあります。部屋の中の光はキャンドルの火、蛍光灯、LED、ネオン等々さまざまな光源が考えられます。同じ種類の光源でもいくつあるか、どれくらいの強度か、どのくらいの色か、周りにどんな物体があるか、他の光源と組み合わされているかなどケースバイケースなのです。

こうした光の設定が、ライティングという作業です。絵を描く際、とりわけ想像で絵を描くときにこうしたライティングの技術は役に立つはずです。

 

キーライト

キーライトとは:意味と定義
キーライト(英:key light):最も明るい光源。シーンで最も明るい光。通常は人物やキャラクターなどの被写体を照らす。例:太陽、電球

 

光源の例

フィルライト

フィルライトとは:意味と定義
フィルライト:二次的な光源。影が強めの印象にならないようにするために調節のため設置することがある。テーブルランプやテレビ画面のような弱めの光。あるいは反射光(バウンスライト)を含めることがある。例:パソコンの光、スマートフォンの光。

 

反射光もフィルライトに含めるそうです。

 

反射光(reflected light):光で照らされた表面から、通常は影の中へ跳ね返る光り。拡散相互反射(diffuse inter-reflection)ともいう。反射光の大きさや形は床の材質や光の強さで変わる。

反射光の色について

反射光の色について

反射光の例

反射光の例

フィルライトの例

フィルライトの例

フィルライト2つの例

フィルライト2つの例

ユーティリティーライト

ユーティリティーとは:意味と定義
ユーティリティーライト:具体的な機能を果たす光源を含む包括的な分類で、自然由来のものもあれば完全に様式的なものもある。例:リムライト(エッジライト,キッカー)、ヘアライト、バックライト、アイライト、バックグラウンドライトなど。

 

バックライトの例

バックライトの例

 

ライティング形式

0点照明

0点照明とは:意味と定義
0点照明:ライティング情報を含まないアートスタイル。陰影などを付けない。例:古代の岩絵
マンダ・ゲリ洞窟の壁画

マンダ・ゲリ洞窟の壁画

 

1点照明

1点照明とは:意味と定義
1点照明:フィルライトを使わずに単一の強力なキーライトを使用するライティングスキーム(計画)
1点照明の例

『悔い改めるマグダラのマリア』*2

 

2点照明

2点照明とは:意味と定義
2点照明:キーライトと二次的なフィルライトを使用するライティングスキーム(計画)。自然界で目にする最も一般的なライティングの形式。フィルライトはキーライトが地面に当たり、跳ね返った反射光のケースが多い。
2点照明の例

portrait of Jan Harmensz Krul*3

 

3点照明

3点照明とは:意味と定義
3点照明:キーライト、二番目のフィルライト、三番目のユーティリティーライトを使用するライティングスキーム(計画)。下の画像はメインの赤めのライト(キーライト)が左上にありますが、右上にも青めのライト(フィルライト)が追加されています。さらにバックライト(ユーティリティーライト)が後ろに設置されることにより、輪郭を際立たせています。リムライトはキャラの後ろにある炎という設定だそうです。3点照明は3D制作などでよく使われますが、現実世界の場所を再現するような複雑なシーンではマッチしない場合があるそうです。必ずしも絵にリアリティをもたせる必要はないので、状況に応じて使い分けましょう。
三点照明の例

「メリダとおそろしの森」より

 

三点照明の例です

三点照明の例です

三点照明の例2

三点照明の例

 

blenderで三点照明を作ってみました。左上に赤いキーライト、右に青いフィルライト、後ろに白いユーティリティーライトです。

自然照明

自然照明とは:意味と定義
自然照明:被写体が自然に見えるようなライティング形式。自然主義・写実主義、フォトリアリズムなどはこの自然照明を目指しているそうです。下の絵はヤン・ファン・エイクによって制作されたもので、自然なライティングが意図されています。
自然照明の例

Madonna of Chancellor Rolin, c. 1435. Musée du Louvre, Paris*4

 

自然なライティングを目指す場合はできるだけ実世界のモノを観察したほうがよさそうですね。資料も自然の環境下で取られた写真や、自分で見ているものなどを参考にするといいと思います。人工の光の中で撮られたモデルの写真や、アニメ、映画は場合によっては自然照明的ではないケースがあります。映画の世界では自然照明だけでシーンを撮ろうとするとぼやけたり、暗かったりするのでわざと人工の光を足して表現したりするのです。目的によって自然証明を使うかどうか判断しましょう。あえて反自然証明的なライティングを行って不気味さを出すのもありですよね。

ライトの種類

晴天と曇天

いわゆる直射日光ですね。太陽を光源としています。青空が発する光を「スカイライト」というそうです。

直射日光は太陽、青空、光を受けた物体からの反射光からおおまかに構成されます。太陽と青空は分けて考えるんですね。

晴天の陰影

晴天の陰影

光源との位置関係

光源との位置関係

blenderで晴天のライティングをしてから陰影付けてみました。

影が左下に落ちているのは、右上に光源、つまり太陽があるからです。雲に隠れていないので、光源が具体的に一箇所にキーライトとして存在しているのです。

スカイライト

スカイライト

同じ晴天でも、太陽があまり強くない、あるいは太陽の一部が隠れているなどの場合は曇天に近い感じになります。スカイライトは拡散されたソフトな光で、陰影をそこまでつよく際立たせないのです。

 

曇天の陰影

曇天の陰影

曇天のライティング曇天の場合は雲で太陽が隠れているので、全体的に光が上から当たる感じになります。雲の層が太陽光を拡散させ、光と影の極端なコントラストを消し去るそうです。

また、曇天のほうが直射日光が当たるよりも、色が明るく鮮やかに見えるそうです。

白熱灯、蛍光灯

白熱灯のライティング

白熱灯のライティング

複数の白熱灯

複数の白熱灯

白熱灯の場合は光源が複数あることが多いですね。事務オフィスなどの蛍光灯は複数あります。部屋の電球も複数の場合が多いのではないでしょうか。

光源がひとつ

光源がひとつ

光源が1つ

光源が1つ

 

光源が一つの場合はこうなります。正確には複数の蛍光灯の集まりですが、近い位置にあるのでほぼ単一のものとなります。白熱灯の色が赤みをすこしおびていますね。

白熱灯

赤み

天井

天井

部屋の明かりが白系ではなく赤みを帯びている場合もあります。その場合は当然オブジェクトも赤みを帯びてきます。赤みは天井の色なども影響してきます。

ルミネセンス

ルミネセンスとは

ルミネセンスとは

 

ルミネセンスとは:意味と定義
ルミネセンス(英:luminescence):低音で光を発するオブジェクトの能力。冷光。白熱の反義語。蛍光や燐光(りんこう)もルミネセンスに含まれる。
ルミネセンス

「Glowing Ferns(巨大なシダ)」ジェームズガーニー*9

ルミネセンスとはなにか

蛍光海洋魚(バイオルミネセンス)*5

 

通常光を発するものは白熱している、つまり高温のことが多いです。たとえば太陽、蛍光灯、炎なども高温ですよね。それに対して深海で光る魚や光を発する植物は低音で光っています。

蛍光とは:意味と定義
蛍光(けいこう,英:fluorescence):光あるいはX線・陰極線その他の放射線を当てられた物質から発する光あるいは放射線。当てるのをやめるとただちに消える。寿命が短いものを蛍光、長いものを燐光と区別することがある。文字通りのホタルの光は体内の酵素の化学反応により生じるエネルギーを励起源とする発光。
蛍石

蛍石*7

 

 

燐光とは:意味と定義
燐光(りんこう,英:phosphorescence):かつては腐敗した生物などから生じた黄リン(白リン)が空気中で酸化する際の青白い光(発火点は約60度)を指した。現在では物質が光を発する現象、またはその発する光の全般を指す。
燐光とはなにか

燐光とはなにか*8

 

今度蛍光や燐光について詳しく調べてみたいですね。

エッジライト・リムライト・バックライト

エッジライトとは:意味と定義
エッジライト(英:edge light):背後からさし込んでフォームの外部を照らし、そのフォームを背景から際立たせる光。フォームの背後からあたって側面に接し、形状を背景から切り取るような光。リムライト、キッカーともいう。
エッジライト

「Mei Long」ジェームズガーニー

 

ジェームズガーニーのこの絵すごいですよね。写真かと思うほどリアルです。ちなみに「カラー&ライト」の表紙の絵はこれです。

特にエッジライトが印象的です。エッジライトは目の辺りにある強い光のことだと思っていましたが、実際はこの恐竜の輪郭全体を照らしている光も意味していたんですね。目の辺りにある恐竜の”後ろ”にある光源が、恐竜の体の輪郭を強調するように光らせていることがわかります。エッジライトは強めの光源を必要とするそうです。

リムライトはユーティリティーライトのひとつですが、バックライトとの違いはなんでしょうか。

リムライトとは:意味と定義
リムライト:被写体のエッジ(輪郭)を後ろから照らすようにデザインされたライト。

 

バックライトとは:意味と定義
バックライト:被写体の後ろに(カメラや観察者の方向に)向けられたライト

 

参考文献

おすすめ書籍

1:「CGライティングの最強の教科書」,Lee Lanier,(ボーンデジタルインク)

※この本は前半を中心にライティングとはなにかに触れています。本の大部分は3DCGについての記述なのでアナログや二次元イラスト制作を目的としている方にはあまり向いていません。ただしその前半のすこし(chapter1と2)がかなり役立つ情報です。絵を描く際に3DCGを覚えておくと表現の範囲が増えるので、今後CGを扱う予定がある人は持っていてもいいと思います。

2:「カラー&ライト」,ジェームズ・ガーニー,ボーンデジタルインク

ライティングといえばこの本です。二次元イラストで役立ちそうなライティング技術が満載です。シェーディングやカラーリングについての知識も満載の必携本です。

3:「スコットロバートソンのHOW TO RENDER」,ボーンデジタルインク

引用画像

1:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%87%E3%82%A3%E5%B1%B1%E5%9C%B0

2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%AB

3:https://en.wikipedia.org/wiki/Jan_Harmenszoon_Krul

4:https://en.wikipedia.org/wiki/Jan_van_Eyck

5:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8D%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B9

6:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%90%E5%85%89

7:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9B%8D%E5%85%89

8:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%90%E5%85%89

9:http://gurneyjourney.blogspot.com/2009/12/luminescence.html

toki

投稿者プロフィール

https://souzoudiary.com/やhttps://souzoumatome.com/、https://souzouhou.com/も運営しています。
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連絡は@mmnntmrのTwitterのDMでお願いします。基本的にこのアカウントしか見ていません。
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おすすめ書籍

・人体の描き方関連

やさしい人物画

ルーミスさんの本です。はじめて手にした参考書なので、バイブル的な感じがあります。

人体のデッサン技法
ジャック・ハムも同時期に手に入れましたが、比率で考えるという手法にルーミス同様に感動した覚えがあります。ルーミスとは違う切り口で顔の描き方を学べます。

・解剖学関連

スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版

スカルプターのための美術解剖学 2 表情編

一番オススメの文献です。3Dのオブジェクトを元に作られているのでかなり正確です。顔に特化しているので、顔の筋肉や脂肪の構造がよくわかります。文章よりイラストの割合のほうが圧倒的に多いです。驚いたときはどのような筋肉構造になるか、笑ったときはどのような筋肉構造になるかなどを専門的に学べることができ、イラスト作成においても重要な資料になります。

アーティストのための美術解剖学

こちらはほとんどアナログでイラストがつくられています。どれも素晴らしいイラストで、わかりやすいです。文章が少し専門的で、難しい印象があります。先程紹介したスカルプターのための美術解剖学よりも説明のための文章量が圧倒的に多く、得られる知識も多いです。併用したほうがいいのかもしれません。

・遠近法関連

パース!

これが一番おすすめです。難易度は中です。

超入門 マンガと図解でわかる! パース教室

これは難易度は小ですが、とてもわかりやすく説明されています。

スコット・ロバートソンのHow to Draw -オブジェクトに構造を与え、実現可能なモデルとして描く方法-

難易度は大ですが、応用知識がたくさんあります。

・色関連

カラー&ライト ~リアリズムのための色彩と光の描き方~
やはりこれですかね。

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