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パース(遠近法、透視図法)とはそもそもなにか?パースを学ぶ意味とは?
パース(透視図法、遠近法)とはなにか。パースを学ぶ意味について概略。
透視図法(遠近法)とは「ボリュームや空間関係を平面上に表現する手法*1」です。英語で言うとperspective(パースペクティブ)、略してパースとなります。
『HOW TO DRAW』の著者であるスコットロバートソンはパースについて上記のように定義しました。また、彼は「絵を描くために遠近法の理解は必須*2」だといいます。
ロバートソンは遠近法を「最高の幻想を紙の上に作り出すために存在している原則*2」と言い換えています。ここまで言われると遠近法すげー!ってなりますね。
わざわざパースなんて学ばなくてもいいじゃないか!見たものをそのまま描ければそれで十分だ!という人もいるかもしれません。
しかし実際に見たものをそのまま描こうとしてもうまくいかず、不自然に見えてしまうことも多々あると思います。また、目の前にあるものではなく、空想の世界を描こうとするときに困ってしまいます。人間のサイズはどのくらいにすればいいのか、上から人間を見たらどう見えるのか、地平線はどうやって設定したらいいのか、などなど頭にはてなマークがポンポン出てきます。
こうした問題は「人間の視覚をそっくりそのまま紙の上に創り出すことはできない」ことに起因しています。
『パース!マンガでわかる遠近法』は初心者がパースについて学ぼうとするときに最初に手にする本であり、挫折する本であると思います。その著者であるデヴィッド・チェルシーはこういいます。
「パースがわからないまま絵を描いていると、何か一つ描こうとするたびにいちいち悩むはずだ。そして描きたいものが描きたいアングルで撮影された参考写真を探してみたりするんだよね。こんなめんどくさいことはもうやめようよ。パースがちゃんとわかっていれば、たいていのものを箱型の立体とみなすことができる。一度パースをきっちりマスターしてしまえば、どんなものも怖くない。なんでも描けるようになるんだ。*2」
要するにパースとは「三次元の世界を二次元の紙の上に再現するための手法」であり、パースを学ぶ意味は「なんでも描けるようになるから」ということです。
パースについてのチェルシーの定義(ポケット辞典からの引用らしいですが)も引用しておきます。
「【透視図(画)法、遠近法、パースペクティブ】絵画などで、対象を目で見たのと同じように平面や曲面に再現する技法。対象の見た目の距離感を表現する効果、あるいは自然の情景であるような錯覚を起こさせる絵。*4」
*1 『HOW TO DRAW』スコットロバートソン 202p(born digital inc)(以下h.sと略)
*2 h.s 21p
*3 『パース!マンガでわかる遠近法』 デヴィッド・チェルシー 9P(マール社)(以下p.dと略)
*4 p.d 14P
パース(透視図法、遠近法)の用語について
パースがすごいのはわかった、学ぶ意味があるというのはわかった。で、「パースって何?」というはてなマークが頭にまだあると思います。私もそうです。「三次元の世界を二次元の紙の上に再現するための手法」というのはわかるが、具体的にどうやって再現するの?ということです。
そのための第一歩として、まずはパースの用語について学んでいきたいと思います。
【基礎知識1】パース(透視図法、遠近法)の水平線(HL)とは?
水平線とは「画面を横切る水平方向の線*5」を意味します。英語では「horizon line」というので略してHLとも言われます。文字だけの説明ではわからないものがあるので、絵で説明します。
これではただの横線じゃないか!と思うかもしれません。たしかにそうかもしれません。すこし手を加えてみます。
これが地平線(HL)です。絶対にこの位置に置かなければいけない線ではありません。任意の線です。この線をもとに私の稚拙な絵を加えるとこうなります。
アイレベルと水平線の関係について-アイレベルとはなにか?-
視線とは、「目の中心窩(ちゅうしんか)から、目が焦点を合わせているオブジェクトへと伸びる直線*6」です。言い換えれば観察者が向いている方向へと伸びる線です。オブジェクトはいわゆる「対象」です。山や人間もオブジェクトのひとつです。
そして「アイレベルとは描画をするオブジェクト(対象)を見ているときの目の高さ*7」です。アイレベルを日本語にすると「視高」です。椅子に座って描こうとすればアイレベルは低くなりますし、立って描こうとすれば高くなります。
一番重要な点は、水平線の意図は観察者の視高(アイレベル)と一致する*8ということです。
*5 h.s 202P
*6 h.s 202P
*7 『背景パースの上手な描き方』、山田直樹、(誠文堂新光社)、25P(以下h.yと略)
*8 h.s 202P
【基礎知識2】パースの画面(PP)とはなにか、立点とは何か
画面とは「画像が記録される面*9」です。詳細な定義を引用しておきます。
「画面(PP、picture plane):絵の一番手前に存在する平面で、そこに描画が描かれる。実際の画面と同一の広がりを持つが、空間内に存在する別物。観察者と画像との視覚的な接触点*10」
立点とは「観察者が描く対象を観察する定点*11」です。絵を描く人が立つ位置のことですね。高く見下ろす場合はハイアングル(ふかん)、低い場所から見上げる場合はローアングル(あおり)となります。英語でいうと「station point」でSPと略されたりします。
さきほど示した画像もPPといえます。
僕の画力ではこれが限界ですが、画面と立点、観察者はこのような感じです。
こんな絵じゃわからないって? そうですねわからないですよね。チェルシーさんがいい感じの絵で説明していたのでそれを元に描いてみます。
チェルシーさんは画面について比喩的な表現で説明してくれています。画面とは。「キミが風景を縁取っている想像上の窓のこと*12」だといいます。自分の部屋にある窓を想像してみます。窓の向こうには家などの対象があります。窓の上からその対象をなぞってみます。なぞろうとした観察者である自分の視線はきっちり固定させないといけません。頭をグラグラさせたり目を左右にキョロキョロさせながら描くことはできません。しっかり固定させるのです。つまり、定まった点に落ち着く必要があります。これを定点と言います。そして観察者が描く対象を観察する定点を立点というのです。
目の構造とパースの関係について-圧縮光線と反転した映写機-
チェルシーによれば、目は何かを見るとそのものと連結して画像を網膜の表面に写し出すそうです。つまり、目に近づくほど画像は小さくなっていきます*13。
ふぅん、って感じですよね。イメージはなんとなくできます。実物と実際の目に見えるものは大きさが違うということが分かればいいと思います。富士山とビルが同じくらいの大きさに見えるのは、富士山が圧縮されて目に映し出されているからだといえますね。太陽も同じです。遠くにあるほど小さく見え、近くにあるほど大きく見えます。太陽より近くの鉛筆のほうが大きく見えます。
映写機とはwikiによれば「写真や映画をスクリーンに映すこと」らしいです。チェルシーは目の構造について以下のように述べています。
「目っていうのは、反転した映写機のようなものなんだ。ただし、スクリーンに画像を映写するのとはちがって、現実からの画像を画面をとおして投影する。そうした手で、輪郭をなぞるんだね*14。」
これもふぅん、って感じになりますね。目が捉えているものは画面です。当然、画面は現実の対象との大きさは違います。この画面を上手くなぞることができれば絵も自然に見えるんじゃないかと思います。実際にこれは現実の対象を模写するときの話だと思います。空想の対象を描くときにはなぞることができません。自分で水平線を設定したりして画面を作り出さないといけないのです。
たとえば写真や漫画などの資料を使って絵を描くとします。そこに椅子を加えたり、人を加えたくなったときになぞることはできないのです。自分で大きさを考えないといけません。こうした創作においてパースに関する知識が助けになってくれます。
*9 h.s 202P
*10 h.s 202P
*11 h.s 203P
*12 p.d 32P
*13 p.d 43P
*14 p.d 42P
【基礎知識3】パース(透視図法、遠近法)の消失点(VP)とは?
消失点とは「画面の奥へ向かう平行線が収束していくように見える点*15」のこと。英語でいうと「vanishing point」で略してVP。
画面の奥とは具体的に何があるのか。そうです、水平線(HL)が画面(PP)の奥にあります。つまり、消失点(VP)は水平線(HL)のどこかにあるのです。
そこで疑問がわくはずです。水平線のどこにあるの?と。水平線へとたどり着くことはできるの?と。水平線のどこでもいいんじゃないの?と。
とりあえず真ん中に消失点を設定してみます。
そこから線を適当に伸ばしてみます。
そして適当な線を引きます。面白いのが、この赤く引いた線は実物としてはどれも同じ長さということです。
消失点に向かって線が収束していくとはこのように、どんどん対象が小さくなっていって小さな点になっていくことですね。
ほぉん、って感じですね。なかなか面白い。ちなみに消失点はフィクションで、実際にはないそうです。走って消失点へ向かっていったとしても、そのまま世界一周して帰ってきてしまいます。また、消失点はすいへいせんのどこにあるの?という疑問ですが・・。僕も正直よく理解していないのですが、観察者の位置や視高、視線などによって変化すると思います。当たり前ですよね。観察者がジャンプすれば水平線も同時に高くなりますし、消失点の位置も高くなります。観察者が左側を向けば消失点も左側に行くんじゃないかと思います。
写真ACから適当に画像を引っ張ってきました。町並みの画像です。
消失点や水平線はどこにあるでしょうか。これはカメラマンの視線の高さ、つまりアイレベルの位置に水平線があります。一点透視図法や二点透視図法など細かい話は置いておいて、ここではひとつだけ消失点をみつけます。だいたいこの辺です。
たとえばある対象と同じような対象をより自分の近くに置こうとするとこうなります(これは正確ではなく大雑把です)。この木は実際には全て同じ大きさです。木を人間として置き換えてみれば、消失点がいかにサイズ感を把握するのに役立つかわかるはずです。
*15 h.s 202P
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