イラストやデザインに役立つ赤色のイメージと、赤色の機能についての色彩学まとめ

色のイメージとは

色のイメージとは(定義)

色のイメージどういう色がどういった感覚を心のなかに思い浮かばせるかということです。

 たとえば寒さは青色など、暖かさは赤色などをイメージさせます。他にも、重さや軽さ、かたさややわらかさ、進出色と後退色といったさまざまな色のイメージがあります。

色の見えと色の感情

色の見えとは雰囲気とかカラーイメージではなく、大きく見えたり小さく見える、進出して見えたり後退して見えるなどという、色彩の機能的な側面のこと

(例)膨張・収縮、進出・後退。識別性、誘目性

色の感情とはその色を見て暖かく感じたり冷たく感じる、重そうに感じたり軽そうに感じるなどという、その色の雰囲気。≒カラーイメージ。

(例)暖・寒、軽重、硬軟、強弱、明陰、興奮・沈静、派手・地味

  本記事では「色の見え」を色の機能として捉え、「色の感情」を色のイメージとして捉え、両者を区別します

色のイメージや機能を学ぶ意義

ポイント

色のイメージを学ぶことによって、自分が表現したい感覚を創作に投影することができる

色のイメージは心理学とも関係していて、創作だけではなくコミュニケーションやビジネスの能力の向上につながる

自殺を思いとどまらせる色や、暴力性をおさえる色、人を治癒させる色など、社会的な機能を持つ色を覚えることもできる

赤色のイメージとは

赤色のトーンとイメージ

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赤色の基本的なイメージ

 赤色には情熱、危険、興奮、革命といったイメージがあります。他にも太陽、火、血、激しい、命、エネルギー、晴れやか、派手、勇気といった赤色が連想することばがあります。

その他

(具体的なイメージ)愛、口紅、消防車、炎、リンゴ

(抽象的なイメージ)闘争的、活動的、歓喜、怒り、強い

ポジティブな赤色とネガティブな赤色

 心理学において、赤色を選ぶ人にはポジティブな面とネガティブな面があるそうです。

 たしかにスペインの闘牛競技では赤い布を使っています。あれは赤色が牛を興奮させると思ってしているのかもしれません。実際のところ、牛は色ではなく布の動きに興奮するといいます。色の識別ができないそうです。時の人達は赤が牛を興奮させるとおもったのでしょう。調べたところによると、観客を興奮させるために赤い色を使ったという説もありました。

ポジティブな側面

・エネルギーがある

・情熱的で活動的

・義理人情に厚い

ネガティブな側面

・直感的で短気

・怒りっぽい面がある

・疲れている

 赤色は気持ちを前向きにする効果をもっています。疲れて無気力なときや、スポーツで競争心を駆り立てたいときに身につけるとGOODです。赤色の中でもカーマインという色がいいそうです。

 イライラしている時などに赤色を身につけることは逆効果です。怒りが一気に爆発してしまいます。また、濃い灰みの黄赤である栗色被害者意識を生む色です。

赤色と暖色系(色相)

暖色系と赤色

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 赤系やオレンジ系の色は暖かく感じられるので暖色系というそうです。反対に、青緑や青系の色は寒く感じられるので寒色系というそうです。黄緑や緑、紫などは中性色といいます。

 専門的にいうと、色相環のv1からv8までを暖色系、v13からv19までを寒色系といいます。それ以外の色相は中性色です。上の図でいうと左上が暖色系、右下が寒色系です。

 色そのものに実際に温度があるわけではないですが、火や水を連想することによって心理的に寒暖を感じるのです。赤系の色の浴槽と、青系の色の浴槽では、同じ温度でも体感温度は3度も違うそうです。

赤色と暖色系(トーン)

 トーンによっても暖色系と寒色系を区別できます。トーンは明度と彩度によって決められる色の調子です。明度は色の明るさの度合い、彩度は色の鮮やかさの度合いを意味します。明度において白はもっとも明度が高く、黒が最も明度が低いです。彩度は白・黒・灰色の色である無彩色を除いた遊彩食を意味します。

 トーンには様々な名前があります。

こちら

の記事でも扱いました。

トーン名記号イメージ
ペールトーンpうすい
ライトグレイッシュトーンltg

明るい灰’(はい)みの

グレイッシュトーンg灰みの
ダークグレイッシュトーンdkg暗い灰みの
ライトトーンlt浅い
ソフトトーンsf柔らかい
ダルトーンd鈍い
ダークトーンdkg暗い
ブライトトーンb明るい
ストロングトーンs強い
ディープトーンdp深い
ビビッドトーンvさえた

トーン表

 これは日本色研のトーンの図です。さまざまなトーンの名前があり、彩度と明度でトーンが決められています。鮮やかな色に白や黒をまぜていくと、柔らかい印象になったり、くすんだ印象になります。これは有彩色が無彩色に近づいていっていることを意味します。厚塗りもこうした理解があると、理解度が増すと思います。

赤色のトーンとイメージ

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 トーンの中でも、ペールトーンやライトトーンなどのティントトーン(明清色)には寒感があり、ディープトーン・ダークトーンには暖感があります。色相が寒色系でも、トーンがディープトーン等の場合は、暖寒があるといえるのです。

 ※ティントトーン:紺色を元にして白を加えたような明るさのトーングループ。それに対して、黒を加えたようなくらいトーングループをシェードトーンという。

赤色と軽い色、重い色

 色には軽い色と重い色があります。言い換えれば、色には軽感と重感があるのです。この軽重は明度の高低に関係しています。明度が高いほど軽く感じ、明度が低いほど重く感じます。白に近いほど軽く、黒に近いほど重いのです。

 荷物に関する実験があります。同じ大きさの箱で、明るい色と暗い色をまず用意します。それを被験者に運ばせる指示をしたところ、明るい色のほうが先に片付けられたという結果になったそうです。つまり、明るい色=明度が高いほど軽く感じ、暗い色=明度が低いほど重く感じていたということです。

 たとえば部屋をデザインするときに、天井を明るく、床を濃くすると安定感が出るそうです。自然界では軽いものは上に、重いものは下に行きますよね。それと同じように、色も軽いものが上、重いものが下のほうが安定するといえます。洋服の組み合わせや、イラストでも同じことが言えそうですね。

色の重さ、色の軽さ、赤色 軽感と重感 寒色である青と、暖色である赤を並べたものです。これと下の図を見比べてください。

色の重さ、色の軽さ、赤色 軽感と重感2

 どちらの方が安定しているでしょうか。赤が下にある方が安定感があると思います。白と黒も同じで、黒が下にある方が安定して見えます。シャツが白、ズボンが黒というのもそのためかもしれませんね。赤と青の組み合わせは、太陽と海を想起させます。

赤色と明快感

 はっきりして気持ちいい感じを明快感、暗く晴れ晴れしない感じを陰気感といいます。彩度が高い色や明度が高い色は明快感があり、彩度が低い色や明度が低い色は陰気感があります。

 暖色系である赤は明快感があり、反対に寒色系は陰気感があります。寒色系でもトーンが違えば明快感を表現することも可能です、ブライトトーンのように明度や彩度を高めれば良いのです。

赤色と興奮感

 高彩度になるほど興奮感があり、低彩度になるほど沈静感があるそうです。また、赤色などの暖色系の色は興奮感があり、青色などの寒色系は沈静感があるそうです。

 上にあるのは有彩色についての説明です。無彩色では、白のほうが興奮感があり、黒のほうが沈静感があります。

赤色と派手感

 明るい色ほど派手感があり、暗い色ほど地味感があります。なんだかあたりまえのことですね。また、色相では赤などの暖色系のほうが派手であり、寒色系の方は地味です。明度では高いほうが派手で、低いほうが地味です。

赤色の機能とは

赤色の誘目性について

誘目性と信号と赤色

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 赤色には誘目性(ゆうもくせい)があります。誘目性とは「注意を向けていない対象の発見のされやすさ」や「注意を向けていない視野周辺にあるような対象の目立ちやすさ」を意味します。要するに、赤色は人をひきつける力があるということです。たとえばマクドナルトやコカコーラ、郵便ポストや消火器、信号機などには赤色が含まれています。目立つからです。

 無彩色よりも有彩色のほうが誘目性が高いです。しかし、周りが高彩度の有彩色の場合は、誘目性の効果が半減します。周りが白や黒の中に、赤色などの有彩色があると効果を発揮するのです。

赤色の膨張性・収縮性と光滲現象について

赤色の収縮性 赤色の膨張性 上の図の赤色の周りにある青色と、下の図の青色の周りにある赤色のどちらが広く、大きく見えるでしょうか。私は青色の周りにある赤色のほうが大きく見えます。つまり、膨張して見えます。赤の丸は大きく見え、青の丸は小さく見えるのです。実際に測ると同じ大きさです。

 このように、大きく見える色を膨張色(ぼうちょうしょく)といいます。反対に、小さく見える色を収縮色(しゅうしゅくしょく)といいます。

 膨張色は色相でいえば赤色などの暖色系です。明度は高明度、彩度は彩度です。つまり、同じ暖色系でも高明度のほうが膨張感があるということです。というわけで、赤色の高明度と低明度を比較してみます。

赤色 高明度 赤色 低明度

 上が赤色の高明度で、下が赤色の低明度です。白に近いか、黒の近いかということですね。やはり高明度のほうが膨張感があるようにみえますね。

 収縮色は色相でいうと寒色系で、明度は低明度、彩度は高彩度です。

 明るい色が暗い色に囲まれている地色と柄色(がらいろ)の関係では、囲まれている柄色が膨張色だそうです。上の図でいうと、真ん中の赤の丸が柄色ですね。このように、囲まれている柄色が大きく見える現象を光滲現象(こうじんげんしょう)といいます。

赤色の進出感・後退感と、色の遠近感について

赤色 進出感と後退感 赤色 進出感と後退感2 

 赤色が中心にある方が進出して見え、青色が中心にある方は後退して見えます。前面に出てきそうな感じを進出感、遠ざかって見える感じを後退感といいます。要するに遠近感ですね。

 進出色は色相でいうと赤色などの暖色系、高退職は青色などの寒色系です。遊彩食と無彩色では、有彩色が進出系の色になります。明度においては、背景になる地色が暗く、柄色が明るい場合は明るい柄色が進出色になり、地色が明るく、柄色が暗い場合は暗い柄色が進出色になります。彩度の場合は高彩度が進出色、低彩度が後退色になります。

赤色の識別性について

マクドナルド 識別色 赤色

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 赤色などの暖色系は識別性(しきべつせい)があります。遠くからでもよく見える、認識されるということです。暖色系の中でも、黄色より赤色のほうが識別性があります。彩度は高彩度の方が識別性があります。

踏切と識別色

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踏切は黒と黄色を組み合わせて、彩度差をつけて識別性を高めています。

 マクドナルドは赤と黄色という暖色系を組み合わせることによって、識別性を獲得しているのでしょう。他にも松屋はオレンジと黄色、背景色として青を用いています。マイクロソフトのアイコンマークもオレンジを使っています。マスターカードはオレンジと黄色ですね。餃子の大将やミスタードーナッツ、シェーキーズなど有名な企業は識別性が高い色をモチーフとしています。

味覚など赤色についての知識

赤色と味覚、音感について

 約100名の男女を調査したところ、甘いという味覚からは明るいやピンクや白をイメージする人が約80%と多かったそうです。図形は丸です。つまり、甘い感覚は赤くて丸いのです(『色と配色の事典』,78頁)。

赤色と白熱灯、食卓の関係について~色には温度がある~

白熱灯と食卓

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 白熱灯とは、蛍光灯のような真っ白な光ではなく、上の画像のように赤みがかった光です。色には色温度というものがあり、色温度が高いほど青白く、低いほど赤みが感じられます。白熱灯は色温度が低いので赤みが感じられます。赤みの色は温かみを感じさせ、料理をおいしく見えさせるそうです。レストランでも白熱灯の色の店が多いですよね。

 色温度が高い蛍光灯のような色は、青みがかっています。勉強部屋やオフィスなど、集中しなければいけない場所では効果を発揮します。

おもちゃの色が赤い理由

おもちゃが赤色な理由

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生まれて間もない赤ん坊は色が見えないそうです。かろうじて明暗を感じ取ることができます。成長していく中で徐々に色を感知できるようになります。一般に赤ちゃんが最初に識別する色は赤色だそうです。そのつぎに緑、青や黄色といった色を認識していきます。

 識別性がある赤色のおもちゃは、赤ちゃんの脳を活性化することにつながるそうです。

鳥居の色が赤い理由

鳥居 赤色 理由

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 赤色は生活の中で病気、悪、災害など恐れるべきものへの抵抗力をもつものと思われきたそうです。赤色のものを食べたり、塗ったりされてきました。お祝いごとの赤飯などもその例ですね。

参考文献

・伊藤千佳、『配色の基本のすべてがわかる色彩ガイドブック』、永岡書店

・佐々木仁美、『色の心理学』、枻出版社

・石田恭嗣、『配色アイデア見本帳』、エムディエムコーポレーション

・葛西・篠崎、『色と配色の辞典』、成美堂出版

・七江亜紀、『知って役立つ色の辞典』、宝島社

・『色彩検定2級・3級』、新紀元社

・『色の辞典』色彩活用研究所サミュエル、西東社

toki

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