目次
はじめに
今回からの取り組みについて
長すぎるので記事を分けてほしいという要望があり、記事を複数に分けることにしました。この記事は鼻の解剖学に関する記事です。次の記事は鼻の構造分析の予定です。その次が鼻のグリッド分析です。
頭蓋骨系に属する鼻の骨の理解
鼻骨
意味
・鼻骨(びこつ,nasal bone):2つの小さい長方形の骨で、鼻の形はこの骨でほぼ決まる。形状には個人差がある。
鼻骨のイメージ画像
この部分が鼻骨です。
わかりやすい画像を引用させていただきます。
これも立体的にわかりやすくていいですね。眉間(grabella)の下にあります。
鼻骨を理解する
まず鼻骨は左右に2つあり、それが合わさっています。つまり鼻骨が並んで結合しているということです。
さらに鼻骨は鼻橋(びきょう,bridge of nose)を形成します。鼻骨は鼻孔(梨状口)の上にあります。
鼻腔(鼻孔)
意味
鼻腔(びこう,nasal cavity):洋梨の形をした鼻の部分の骨の入り口。鼻骨と上顎骨で構成されている。鼻孔(びこう)や梨状口(りじょうこう)ともいうらしい。普段私が生活で使う鼻の穴(nostrils)とは分けてつかったほうがいいかもしれない。
鼻孔のイメージ画像
たしかに梨のような形をしていますね。
前鼻棘
意味
前鼻棘(ぜんびきょく,nasal spine):鼻孔の下の縁にある上顎骨の突起。鼻唇角(びしんかく)に影響を及ぼす。
前鼻棘のイメージ画像
たしかに棘のような突起がありますね。側面から見るとよくわかります。鼻骨よりは奥行きが小さいですね。
鼻唇角は文字通り、鼻と唇で形成される角度のことのようですね。たとえば前鼻棘が斜め上に伸びていれば、その分鼻も斜めに上に伸びるといった感じらしいです。
たとえばあるキャクターが白骨化した場合に、鼻が極端に上を向いているキャラクターであった場合、前鼻棘も極端に上向きにするといったリアリズムを出してもいいかもしれません。一般的な前鼻棘はほぼ平行に近いみたいですね。
鼻の軟骨
意味
・鼻軟骨(びなんこつ,cartilage):弾力性があるやわらかい骨(軟骨)で構成されている鼻の骨。軟骨は指で鼻をさわると少し鼻の骨が動くことがわかる。
鼻軟骨のイメージ
こちらのサイトによるとこういう分類方法があるようです。今見てる本では軟骨としか書かれていないので助かりますね。
こちらのサイトの分析ではもっと多くの分類があるみたいです。
Minor alar cartilageの日本語訳はよくわかりませんが、おそらく「マイナーな鼻翼軟骨」といったところでしょう。たしかに小さな鼻翼軟骨ですね。大きなものも含めて鼻翼軟骨という理解でもいいかもしれません。Accessory cartilagesと表現されることもあります。
鼻軟骨の説明
鼻の間の壁は鼻を支える柱としての役割があるので鼻柱とも呼ばれているそうです。牛の鼻輪のように鼻をつまむと、たしかに柔らかい軟骨の壁があります。その奥にすこし硬い骨がありますが、鼻中隔軟骨といいます。
鼻の組織の理解
Alar fibrofatty tissue
意味
・Alar fibrofatty tissue(尾翼の線維脂肪性の細胞):鼻の両側にある脂肪線維性の細胞のこと。
正直これは訳がよくわかりません。
Alar fibrofatty tissueのイメージ画像
こちらの画像ではFibro-areolar tissueとあります。
脂肪的な線維で、まるまる脂肪というわけではないんですね。この上に筋肉があるというわけでもなさそうです。
鼻の筋肉の理解
鼻根筋
・鼻根筋(びこんきん,Procerus/Musculus procerus):額の中央下部に位置する扇形の筋肉。鼻骨だけにではなく、鼻軟骨上の筋膜に付着している。
鼻根筋のイメージ画像
この部分が鼻根筋です。
たしかに扇(おうぎ)の形に似ていますね。扇とはあおいで風をおこし、涼をとるための道具のことです。個人的には円の一部を切り取ったような形に見え、何度で開いているのか気になります。
鼻根筋の起始部・停止部・作用
起始部 | 鼻骨と鼻軟骨の中心 |
停止部 | 眉の間の額と下部から中央の皮膚、前頭筋と線維と交叉させる |
作用 | 眉間の皮膚を引き下げ、鼻孔を拡げる。怒りや緊迫した表情を作り出すこともできる。 |
鼻根筋は眉を引き”下”げる筋肉
引き下げるというのがポイントです。眉を引き上げる筋肉には前頭筋などがあります。
鼻根筋が眉間部の皮膚を引き下げると、鼻梁(びりょう)に横しわができます。鼻梁とは鼻柱、鼻すじのことです。
たとえばこのように横シワができます。怒りのときなどに鼻根筋が横シワを作ります。
眉が引き下がる時、鼻根筋の他にも「皺眉筋(しゅうびきん)」や「眉毛下制筋」が作用しています。
皺眉筋
意味
・皺眉筋(すうびきん/しゅうびきん,:corrugator supercilii muscle):意味
皺眉筋のイメージ画像
皺眉筋の起始部・停止部・作用
起始部 | 内側眉弓(ないそくびきゅう) |
停止部 | 眉付近の額の皮膚 |
作用 | 眉を鼻の正中線方向へ引き下げる |
正中線はWIKIによれば「ヒトや動物の前面又は背面の中央を縦にまっすぐ通る線のことである。左右対称となる身体の中心を通る線」だそうです。たとえば鼻の下のくぼみは正中線上にあります。鼻根筋も正中線上にありますね。体の中心を通る線というより、Z軸の高さとしても言い表すこともあるそうですね。
「眉を鼻の正中線方向へ引き下げる」ということは、つまり左でも右でもなく、真下に引き下げるということですかね。
皺眉筋の説明
皺眉筋は眼輪筋の下に位置しているので、筋肉が十分に収縮している時以外は表面から確認することは難しいらしい。
「収縮(収縮)」とは「長さが短かくなること」です。たとえば力こぶをつくるとき、筋肉は収縮しています。短く、厚い筋肉になっています。専門的な定義では「筋肉が筋肉自体の中心に向かって能動的に力を発揮すること」が収縮らしいです。
怒りで眉間にシワができるときも、筋肉が短く、厚くなることで盛り上がり、シワができるということです。
眉をひそめるときに皺眉筋を使う
顔をしかめる、眉をひそめるは似たような言葉ですが、眉をしかめるは誤用らしいです。
眉をひそめるときに、皺眉筋は顔の中心に向かって、斜め下に移動しながら収縮します。顔の中心に筋肉が集まることで、しわができます。このとき鼻根筋は下方向に収縮するので、横シワができます。
眉をひそめる表情の場合、やはり眉は下がっていますね。
内側の眉が下がっている場合と、内側の眉が上がっている場合の違いを理解したほうがいいかもしれません。今回紹介したケースは内側の眉が下がっているケースであり、下げる筋肉は「皺眉筋」という話です。
眉をひそめる場合、感情としては「怪訝(けげん)や不愉快」であり、定義としては「眉間にシワをよせること」です。シワを寄せる場合、内側の眉が上がっている場合でも「眉をひそめる」といえるのではないでしょうか。内側の眉を上げる筋肉は「前頭筋」です。前頭筋は「驚き」の感情にも仕えますね。
「訝(いぶか)しむ」、不審に思うときなども使えそうです(怪訝とほぼ同じですが)。上の画像は内側の眉が上がっていますよね。これは「前頭筋」の作用です。
鼻筋
意味
・鼻筋(びきん,musculus nasalis/nasalis):鼻を狭めたり、拡げたり筋肉。鼻筋には鼻翼部と横部にわけることができます。
鼻筋のイメージ画像
鼻筋(鼻翼部)の起始部・停止部・作用
起始部 | 上顎、切歯窩の横 |
停止部 | 鼻梁の腱膜 |
作用 | 鼻孔を圧迫し、場合によっては完全に閉じる |
鼻筋(横部)の起始部・停止部・作用
起始部 | 上顎、切歯窩の横 |
停止部 | 鼻梁の腱膜 |
作用 | 鼻孔を圧迫塩、場合によっては完全に閉じる |
鼻筋の説明
鼻筋の横部は鼻孔圧迫筋とも言われるそうです。鼻で空気を吸うと、すこし穴が狭まりますよね。鼻の穴を完全に閉じることができるケースもあるみたいです。
鼻筋の翼部は鼻孔開大筋ともいうそうです。また鼻中隔下制筋を含める場合もあるらしいです。
水中で水の侵入を防ぐ際に鼻の穴を閉じる筋肉が鼻筋(横部)なんですね。
鼻筋の作用は繊細なため、ほとんど表面で確認できることはないそうです。たしかに日常生活で鼻の穴を閉じたり開いたりすることはあまりないですね。
においを嗅ぐ時や深呼吸をするときに、鼻の穴を通常より大きく広げるというイメージがあります。イラストレーションでは誇張表現として、現実より大きく開けて表現してもいいかもしれませんね。
このルフィの表現は誇張表現としてとても素晴らしいと思います。二次元作品は必ずしもリアリスティックである必要はなく、抽象化や誇張でその独自性が評価されうる領域です。
上唇鼻翼挙筋
意味
・上唇鼻翼挙筋(じょうしんびよくきょきんLevator Labii Superioris Alaeque Nasi(LLASN)):上唇と鼻翼を拳上する筋で、鼻の脇に沿って走る2つの細長く伸びた部分に分けられる。筋肉の一方が皮膚で終わっている皮筋。
上唇鼻翼挙筋の起始部・停止部・作用
起始部 | 上顎骨の前頭突起 |
停止部 | 鼻翼軟骨、外側鼻孔と上唇の皮膚 |
作用 | 鼻孔を広げて、上唇の外側と鼻翼を引き上げる |
難しい用語が並んでいますね。
上唇鼻翼挙筋の説明
怒りや嫌悪感、ひきつりといった表現の際に、眼窩下三角(メーラーファット)が引き上がり、そのシワがはっきりと見え、さらに鼻が収縮してしわができます。目も細くなり、内側の眉も引き下がります。
片方だけひきつった嫌悪のイメージはこんな感じです。すいませんなかなかひきつった顔のフリー画像を見つけられないので、適当に描きました。
ひきつった顔という表現でも、上唇鼻翼挙筋の働きがみられます。ひきつった顔の場合は怒りと違って顔半分だけ怒るような感じです。顔半分のメーラーファットが引き上がり、シワができ、鼻のシワなどができている感じです。ひきつった顔で嫌悪を表す場合もありますし、ひきつった笑顔という必ずしも嫌悪ではない場合があります。
二次元のひきつった顔はそこまでシワが多く描かれないイメージがありますね。たとえばこのフリー画像もそうです。片方の口が少しだけあがり、シワがあります。また眉が内側に下がっていることで、不快感を表現できています。縦の線は同じように不快感の二次元的な表現ですね(顔が暗くなる)。
これは二次元的な作り笑いの例です。
二次元的表現は答えがないからこそ面白い
これはフリー画像ではないですが引用させていただきます(引用に問題があれば連絡をお願いします)。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」というアニメのキャラクターの表情です。内側の眉が下がっていることで、純粋な笑顔というよりも引きつった笑顔に近くなっています。
こうした二次元的な表現は、3次的な写実表現からどこを引くのかという引き算(あるいは足し算)の美学になっていて、創造性に極めて関連する部分だと思います。引きつった感情をどのように美しく表現するか、というのはまさに美とはなにかという問題だからです。こういう表現をクリエイターの皆さんは切磋琢磨して考えているんでしょうね。初心者の人はこういう上手い人の感情表現をまずは真似ることから初めたほうがいいと思います。真似ることはなんら恥でもありません。ある人曰く、恥というのは自己保身やプライドから来ていているらしいです。自分が創ったものを見た人を喜ばせるために真似て成長するのは素晴らしいことです。自分が良い、すごいと思った感情表現は参考資料として常にストックしておくことをおすすめします。すぐ忘れてしまうからです。
もちろん作品もろパクリはだめだと思いますが、構図や表情、筋肉の描き方等々を参考にするくらいなら私はありだと思います。学問は先人たちが今まで研究してきた事柄にどれだけ寄与できるか、どれだけ付け足せるかという領域です。美学も同じだと思います。付け足せることはあるか?と真剣に考えてもなかなか見つからなくらい先人たちは実践・研究しています。絵も同じだと思います。何億、何十億という人が今まで絵を描いてきて、自分の絵の構図や感情の表現が唯一無二だというのは学問以上に難しいことです(そもそも確認しようがない)。先人たちの資料を何も見ないで描くことが偉いという風潮は変だと思います。
真似した上でそれが最上だと思えばそれがその人にとっての美の最上だと思います。わざわざ真似になってしまうから、それより美のランクを落としたなにかを描こうという発想はあまり良くないと思います。もちろん、真似した美よりもより優れた美を目指そうという心は重要だと思いますし、それこそが芸術の楽しさだと思います。
絵をろくに描いていない私が偉そうに言ってしまいましたが、絵を描こう!絵がうまくなりたい!という人にとってまず直面するのは「真似っていいことなの?」だと思います。真似って良いことですよ。昔から“創作の基本は模倣にある“ともいいます。古代ギリシャでアリストテレスは「模倣は人間の本性に根ざした自然な行為だ」とさえいいました。自然の美(三次元)を模倣して二次元的な表現をすることは良しとされるのだから、二次元的な美を模倣してさらに表現を行うこともまた、自然な行為だと私は思います。昨今では著作権云々という煩わしさでためらいがちになってしまいますが、美を追求するためには模倣は不可欠だと私は思います。
参考文献
人体の描き方関連
ルーミスさんの本です。はじめて手にした参考書なので、バイブル的な感じがあります。
人体のデッサン技法 ジャック・ハムも同時期に手に入れましたが、比率で考えるという手法にルーミス同様に感動した覚えがあります。ルーミスとは違う切り口で顔の描き方を学べます。
解剖学関連
スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版 スカルプターのための美術解剖学 2 表情編
一番オススメの文献です。3Dのオブジェクトを元に作られているのでかなり正確です。顔に特化しているので、顔の筋肉や脂肪の構造がよくわかります。文章よりイラストの割合のほうが圧倒的に多いです。驚いたときはどのような筋肉構造になるか、笑ったときはどのような筋肉構造になるかなどを専門的に学べることができ、イラスト作成においても重要な資料になります。
こちらはほとんどアナログでイラストがつくられています。どれも素晴らしいイラストで、わかりやすいです。文章が少し専門的で、難しい印象があります。先程紹介したスカルプターのための美術解剖学よりも説明のための文章量が圧倒的に多く、得られる知識も多いです。併用したほうがいいのかもしれません。
遠近法関連
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やはりこれですかね。
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