【絵の練習・上達法】模写とデッサン、クロッキーの違いについて【模写とは何か、デッサンとは何か】

模写

模写とはなにか、その目的について

模写」とは何かについて整理していきたいと思います。

模写似せて写すこと。実物どおりに写しとること。また、そのもの(出典:goo辞書)
模写の目的スキル向上のための訓練が目的
 

 仮に「イラスト」を描くことを目的とすれば、その手段として「模写」や「デッサン」が考えられます。模写をすることで、「スキル(技術)」を身につけることができます。他人のマンガやアニメの模写をすることで、上手い人がどのように描くかを学ぶことができます。最初は少しズレてしまったり、うまく模写することができませんが、練習を重ねていく内にうまく描くことができるようになります。

模写のメリットとデメリットについて

模写のメリット考えながら模写をすることで、自分の絵の歪みに敏感になることができる
模写のデメリット考えずに模写をしてしまうと、模写をするレベルだけしか上がらない

 模写には「メリット」があります。ここは左右対称、ここの割合は2:1、目の角度は何度といったように、考えて模写をすることで、自分で1からオリジナルの絵を描いたときに、自分の絵がどのように歪んでいるかわかるようになります。意識しながら正解を覚えることで、それに近づいたオリジナルの絵が描きやすくなるということです。デッサンで正確に人体の構造を学んだとしても、デフォルメした漫画の絵ではわざと正確に描かないこともあります。漫画やイラストでは、それらしく見せるために、わざと正確に描かないこともあるのです。そうした技術は模写によって会得することができます。

 また、模写にも「デメリット」があります。模写を単にしても、模写がうまくなるだけで、創造的な絵を描けるとは限らないということです。模写はうまくかけるのに、何も見ないで1から描こうとすると素人レベルの絵しか描けない場合があるのです。単に模倣して写すだけではなく、考えて模倣して写さなけれれば画力が上がらないのです。

デッサン

デッサンとはなにか、その目的について

デッサン」とは何かについて整理していきたいと思います。

デッサン3次元対象物をよく観察し、平面上に幻想的な空間を再現構築すること(「スーパーデッサン」)。

 たとえば目の前にある「リンゴ」をよく観察して、紙に書き写して描くことです。いうならば、物理的な現象(リンゴや家)理詰め(知識、法則性、理論)で理解するために手を動かす手法であるといえます。

デッサン力点・線・面・色彩によって、質感・形態・量感・遠近感・動勢を表し、画面を構成することができる能力

(備考)デッサン:木炭・コンテ・鉛筆などで描いた単色の線画。普通,作品の下絵として描かれる。素描(出典:大辞林)

素描(すびょう)鉛筆や木炭などの単色の線などで物の形を表した絵

本来は創作の予備的な下絵として描かれた。また,彩画と対比されることもある。デッサン。物事の全容を把握するために要点を簡単に書き記すこと。また,その文(出典:大辞林)

デッサンの目的本質を捉えることが目的

たとえば、「光」とは何か、「陰」と「影」の違いとは何か、「球」とは何かといったことです。何も考えないで描くと、不自然に見えてしまうような絵も、模写をすることによって自然な絵に近づいていきます。

 1枚の絵を描くときには、「3つの要素」が盛り込まれていることが必要だと「スーパーデッサン入門」では書かれています。3つの要素とは「立体感」、「空間感」、「材質感」(+α光の効果)です。こうした3つの要素を学ぶということが、デッサンをするということです。3つの要素を抑えていない絵はどこか歪(ゆが)んで見えてしまいます。立方体、円筒、楕円、円、球、影、パース、人物や物などが具体的なデッサンの例です。

デッサンのメリットとデメリットについて

デッサンのメリット創作のための表現力を高めることができる
デッサンのデメリットデッサンが「目的」になってしまい、デッサンマニアになってイラストを描かなくなってしまうことがある

 デッサンのメリットは、イラストや漫画などの創作をする際に役に立つということです。たとえば、手を「立方体」+「円筒形」として捉えるデッサンの訓練をすることによって、イラストや漫画を描くときにより「自然に」描くことができます。手の影の落とし方や、質感などもデッサンによって身に付けることができます。デッサンは「表現力」UPに直結します。「スーパーパースデッサン」、「スーパー表現デッサン」や「人物デッサンのすべて」という書籍が出ているように、表現の幅が広がるのです。人間や建物をバランスよく描くことができたり、水や翼、木々や炎をより正確に描くことができるようになります。

 模写と同じように、デッサンも考察をしないと上達しません。デッサン力が乏しいと、絵も歪んでしまうのです。一般的に上手い絵とされているものは、立体表現力があり、バランスがある絵です。たいていの人は、いきなりイラストを描こうとして失敗してしまい、上手に描くために「デッサン」をするのです。それが絵描きのための「第一歩」であるといえます。毎日少しずつデッサンをして「基礎画力」を高めていきましょう。

 デッサンのデメリットは、デッサンをすることで満足し、デッサンをすることが目的となってしまう場合があるということです。まだ足りない、まだ足りないといってデッサンばかりをしているだけの人もいます。自分で真っ白な紙に、頭のなかで構想した絵を描いて創るということをしないということです。

 これは目的がイラストであり、手段がデッサンであったのに、目的がデッサンとなってしまっているケースです。デッサンオタクにならないように、インプット(デッサンで知識をつける)をしたらアウトプット(真っ白な紙にオリジナルの絵を描く)しましょう。たとえばデッサンで影の付け方を覚えたら、物体(たとえばりんご)を見ないでも物体を紙に頭のなかだけで考えて描けるようになりましょう。

Leonardo da Vinciが述べる「デッサンと模写の違い」

 ダヴィンチはただ作家のみを研究して、自然の作品を研究しない人は愚かであると『絵画論』の33Pで述べています。これは言い換えれば、模写ばかりをして「自然物」を考察して「デッサン」をしない人は愚かであるということになります。ただ写真や絵を模写するだけでは、デッサン力は向上しないということです。模写する場合でも「考察」を重視し、その考察は解剖学やパースなどの「知識」などを元にした考察である必要があります。

デッサンはいらない?資料があればそれでいい?

 「効率性」の面から考えると、デッサンで画力を鍛えるより、他人の絵や写真から資料を探し、線をおこしたほうがいいという意見があります。昔と違ってインターネットが発達し、資料が探しやすくなったり、書籍が増えたり、漫画などの資料が増えたことも影響していると思います。10万以上もフォルダ分けをして資料を管理し、構図や塗りをすこし変えて使う人もいるらしいです。ただし、本当に自分が描きたいものが資料を探してもない場合は、やはり自分で描くしかありません。そういうときにデッサンをしていた場合と、していない場合では差がついてくると思います。

模写とデッサンの違い

デッサンと模写はどちらをすればいいのか、どちらのほうが効率がいいのか

 論点としては、デッサンと模写のどちらをすればよいのかというものがあります。結論からいえば、どちらもする必要があります。模写をするためにはデッサンの知識が必要になってくるからです。あえて順序付けるなら、デッサンをしてから模写をしたほうがいいといえます。

 どちらのほうが「効率」がよいのか(効率性の違い)という論点もあります。結論からいえば、「目的」によりますが、「デッサン」のほうが効率がいいです。1から新しいキャラクターを描いてみたいという目的を持つ方は、「デッサン」という手段のほうが効率がいいと思います。好きな漫画やアニメのキャラクターを上手く描いてみたいという目的を持つ方は、「模写」という手段のほうが効率が高いともいえます。

 しかし、模写だけをしていると、好きなキャラクターを走らせたり座らせたり、表情を変えたりすることができません。好きなキャラクターを描いてみたいという場合でも、「デッサン」が必要になってくることがわかります。デッサンは表現力を高めるための理論を学ぶので、動かしたり表情を変えたりすることができるからです。

デッサンが「基礎」を学ぶものとすれば、模写は「応用」を学ぶもの

 プロの漫画家はデッサンで基礎を作り、そこから応用させて自分の個性を創りあげますプロの絵は基礎を元に作り上げられた応用であるといえます。いきなり応用を見て基礎を見出すような考察力がある素人はめったにいません。まずは基礎(たとえば三次元のリンゴや顔)を見てリンゴや顔の描き方を学ぶのです。つぎに、基礎の顔を長くしたり、短くしたり、髪の毛を変えてみたりして応用し、独創性を高めるのです。

 デッサンが「基礎」を見て、描いて学ぶものであるとすれば、模写が「応用」を見て、描いて学ぶものであるということがわかります。両方学ぶ必要がありますが、まずは「基礎」であるデッサンから学び、「応用」である模写に移行したほうが私は良いと思います。もちろん、漫画を「模写」することでしか学べない領域の知識もあります。コマ割りの方法や、吹き出し、効果音、迫力のある戦闘シーンや、魅力のあるキャラクター、独特の構図などです。「模写」を最初に行い、うまくいかない場合は「デッサン」に移行したり、「模写」と「デッサン」を交互に行うなど、それぞれのスタイルでやることも大切です。

デッサンと模写の共通点について

デッサンと模写の共通点:どちらも「観察」が重要

 模写を上手にするためには、「空間把握能力」が必要です。空間把握能力とは、「物体の位置・方向・姿勢・大きさ・形状・間隔など、物体が三次元空間に占めている状態や関係を、すばやく正確に把握、認識する能力(出典:goo辞書)」です。こうした空間把握能力を鍛えるためには、「デッサン」をして知識をつけたりする必要があります。つまり、模写とデッサンは両方する必要があるといえます。

クロッキーと模写、デッサンの違い

クロッキーとは何か、その目的について

クロッキー対象(人物の動き・量感など)を素早く描くことです。とくに、短時間で描かれたものをクロッキーといい、スケッチと区別されます。

クロッキーの目的;描画力の向上。

「美術解剖学をデッサン・アニメ・漫画に活かす人体クロッキー」という本では、クロッキーの目的は描画力の向上にあると書かれています。初心者が絵を描こうとすると、棒人間のようになりがちであり、筋肉や骨を意識した絵が描けない場合が多いそうです。

 「デッサン」をするさいにも、輪郭線・境界線を書きたがり、立体感をうまく表現できていないのです。そこで、「クロッキー」を行うことによって、「デッサン」の精度がより高まることが期待されます。

クロッキーにおいて大事なのは、「人体の軸」を描くことであり、「肉付け」をすることです。筋肉の収縮や弛緩、骨格や運動を意識しながら描くことが重要です。アニメいやイラストに表されている輪郭線の下には、膨大な情報がつまっているのです。そうした情報を知らないで輪郭線を描いていても、成長は見込めません。

クロッキーの方法、step1~7について

step1「見方」:立体でものを見る。三次元的な見方を身に付ける。
step2「0から」:今までの描画方法を忘れ、力を抜いて鉛筆を自由に動かす。
step3「観察」:記憶から描くのではなく、その場その場で見たままに描く習慣を身につける。
step4「学習」:人体を正しく記憶するため、美術解剖学を学ぶ。
step5「記憶」:何度も繰り返し描くことによって、人体を記憶する。
step6「動き」:モデルのポーズをそのまま描くのではなく、モデル外とする所のポーズの狙いを推測し、大胆なアクションとして表現する。
step7「線」:重要な線を拾っていく。形が理解できるようになったら、線数を減らす。

クロッキー、デッサン、模写の違いと共通点

クロッキー、デッサン、模写の違い:クロッキーは短時間で絵の構造(基礎)を学び、デッサンは長時間で絵の構造(基礎)を学ぶことであるということができます。模写に関しては、クロッキーに比べて長い時間をかけて絵の構造(応用・実践)を学ぶということです。このようい三者は、短時間基礎、長時間基礎、長時間応用と区別することができます。

クロッキー、デッサン、模写の共通点:どれも「考察」が重要です。デッサンのためのクロッキー、模写のためのデッサンとして補完的に考えることができます。解剖学やパース、影の落とし方といった知識を元に、三次元のものを描写して学ぶか、二次元のものを模写して学ぶかといった違いでしかありません。

書籍の文献

・岡勇樹、「スーパーデッサン入門」、グラフィック社

・鶴岡孝夫、「スーパーデッサン 風景編」、グラフィック社

・「スーパー表現デッサン」、グラフィック社

・「スーパーパースデッサン」、グラフィック社

・ロバート・バレッド、佐藤実訳、「人物デッサンのすべて」、マール社

・高桑真恵、「美術解剖学をデッサン・アニメ・漫画に活かす人体クロッキー」、マール社

toki

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