目次
口の解剖学知識
はじめに
この記事は口の解剖学に関する記事です。次の記事は口の構造分析の予定です。その次が口のグリッド分析です。
以前分析した口の解剖学の移管(側面図の分析の記事)を編纂したものです。掲載している出典表記がない表情の写真は基本的にフリー画像を利用しています。
コラム:解剖学を覚えて意味ある?
解剖学関係の書籍を読んでいると繰り返し思うんですよね、これ理解してなんか意味ある?って。難しい問題なんですよね。知らなくても上手い人は上手いですし、知っていても下手な人は下手ですし。
もともと解剖学知識を学んでいて、それを活かして絵を描いている人を真似ることによって、無意識に解剖学知識に基づいて絵を描いているというのが模写の一側面だと思います。
結果論としてはどちらも同じような絵が出力されるわけですが、入力が頭か身体かの違いというわけです。どちらも一長一短なのですが、両方を駆使したほうが記憶に残りやすいのではないかと思います。この記事で知識を詰め込んだからといって、実際に身体で描いて覚えないと役立ちませんからね。
ただこういう骨があるから、こういう口のかたちが自然だよね?という形態記憶の補助としての知識という意味では知っていて損はないと思います。こういう骨があるけど、かわいくないからあえて表現しないほうがいいよね(頬骨を削ったり、本来出るシワを削ったりする)?という要素も大事です。二次元の絵は「引き算の美学」という面があります。球体を削って顔を造形するように、まずは球体としての顔の全容を学び、そこから二次元の個々の状況に適した可愛さ、かっこよさ等に即して足したり削ったりしていくということです。この作業を「デフォルメ」ともいいます。写実性にこだわり、頭でっかちになって物事が進まないのもまた不利益な部分があります。
人は覚えたものを忘れるものです。自然な人間が描けた!といっても2日間後にはあれ、どうだっけ?となりがちです。圧倒的なデッサンや模写の積み重ねによって記憶を定着させるか、解剖学の知識で定着させるか人によって手段はそれぞれだと思います。結論的には「知っていて損はないよね」くらいですね。これどう読むの?なんていう意味?ばかりの難しい参考書が多いのが現実なんですけどね。医学的な本に近づけば近づくほど絵を描くためには必要ない知識が増えていく気がします。
コラム:規範と再現可能性
標準的な顔を模索するのが記事の主たる目的ですが、あくまでも「規範」としての理解であり、「表現」としての目的ではありません。つまり「美」の探求ではなく「理解(とりわけ再現性)」の探求だということです。解剖学的知識・構造的知識・比率的知識を身につけることで、いわば「粘土」を手にするようなものです。粘土からどのように造形するのかという「表現」は各個人の美的価値観から探り出していけばいいことです。
一度とりだした美に関する構造や比率を「再現可能」にすることも目的の1つです。たとえば目と目の間の横幅は目の横幅1つ分ではなく、0.x分のほうが美しく見えたという自分の美的価値観を「発見」したとします。その美的価値観を言語や数値として表現し、書き留め、再現可能な資料として手元に置くことも大事だと思います。その統合がひとつの絵になり、自分らしさにつながっていくのだと思います。
「言葉」を知らないと理解ができない、という人もいます。たとえば草の名前を知らない人はほとんど雑草に見えますし、木の名前を知らない人はほとんど同じような木に見えます。もちろん視覚的には違う草や木なのでしょうが、言葉を知らないと理解というのは深まらないのだと思います。解剖学というのはそういう意味で、「発見の言語化」だといえます。オトガイ隆起があまり出ていないほうが美しい、というように言語として表現することで理解が高まります。もちろん、「あのあそこの顎のあれの先が出てない」という感じでも理解は可能だと思います。これは好みの問題かもしれませんね。言葉がない場合は「比率などの数」で覚えていきます。それでも捉えられない場合は、ひたすら描いて覚えましょう。
口周辺の分析
基本的な口の名前(表面)
「人中(にんちゅう)」とは、意味
人中(にんちゅう):鼻の下と上唇との間にたてにあるみぞ(「日本国語大辞典」)。
「唇の周りの稜線」とは、意味
稜線(りょうせん): 山などの背にあたる、峰から峰へつづく線。尾根。山の背。
「上唇結節」とは、意味
上唇結節(じょうしんけっせつ):人中の下端の唇の縁がつくる高まりの部分のこと(「OralStudio歯科辞書」)。
「モダイオラス」とは、意味
モダイオラス(modiolus):蝸牛軸、あるいは口角結節とも。ラテン語のハブに由来する。口角近くに付着している多くの絡み合う筋で作られた結合組織構造。表面から見ると唇の両端の小さな肉の山。陰影と明暗により小さな皮膚のつまみのようにみえる。
・オトガイ唇溝
オトガイ唇溝(おとがいしんこう;mentolabial sulcus):オトガイの上の小さな陥没。
解剖学の知識:頭蓋の分析
口周辺の頭蓋の用語としては、上顎骨(じょうがくこつ)、オトガイ隆起(りゅうき)、下顎骨(かがくこつ)、下顎体(かがくたい)、下顎角(かがくかく)、下顎枝(かがくし)あたりを学んでいきますか。ちなみに顎(がく)と呼びます。顎(あご)ですねいわゆる。
正直、下顎骨と下顎体の違いがいまいちよくわかりません。おそらく下顎骨は全体を意味する用語で、下顎体は部分的な箇所を意味する用語だと思います。
解剖学の知識:上顎骨
「上顎骨」とは?意味と定義
上顎骨(じょうがくこつ):頭蓋骨 (とうがいこつ) で、上あごをつくる左右一対の骨。下顎骨 (かがくこつ) とともに口腔を形成し、内部に広い上顎洞がある(『デジタル大辞泉』)。
上顎骨は左右の頬骨(きょうこつ)とつながり、眼窩底などを形作るものらしい。たしかに目の穴や鼻などに隣接した骨ですね。
上顎骨のイメージ画像
ざっくりいえば、この青い部分が上顎骨です。
解剖学の知識:下顎骨
「下顎骨」とは?意味と定義
下顎骨(かがくこつ):下あごをつくる、U字状の骨。顔面の骨の中で最も大きい。左右両端で側頭骨と顎関節をなす(『デジタル大辞泉』)。
下顎骨のイメージ
ざっくりと整理すれば、下顎骨は「オトガイ隆起」、「下顎体」、「下顎枝」、「下顎角」に大きくわけることができるみたいです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E9%A1%8E%E9%AA%A8#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Gray176.png
上記の画像はWIKIからの引用画像です。英語ですが、より詳細に分類してくれています。おそらくBodyが体で下顎体ですね。masseterは「噛む」などの意味があるそうです。Angleはそのまま「角」で下顎角です。ramusは下顎枝です。mental proturberanceはオトガイ隆起です。
頭蓋骨と顔面骨を含む全ての骨の中、下顎骨だけが動かすことができるらしいです。上顎骨も動かせるような気もしますが、違うんですかね。たしかに上顎骨だけを意識的に動かすってやってみると難しいですね。下顎が先に動く感じがあります。
解剖学の知識:歯の数
歯の数(永久歯)は親知らず4本を含め、合計32本といわれている。上下の顎に16本ずつある。
前歯が8本、犬歯が4本、臼歯が16本で合計28本となる。残りは親知らずの4本で、ある人もない人もいる。
もっと細かく分類すれば、前歯8本は「中切歯(ちゅうせっし,8と9)」と「側切歯(そくせっし,7と10)」にわかれている。いわゆる前歯とその両隣の歯である。
次に「犬歯(6と11,27と23)」が四本ある。上下に2本ずつである。食べ物を噛み砕くときは犬歯を主に使う。
残りの「臼歯(きゅうし)」は16本であり、前歯に近い方から「第一小臼歯(5と12,28と21)」、「第二小臼歯(4と13,29と20)」、「第一大臼歯(3と14,30と19)」、「第二大臼歯(2と15,31と18)」、「第三小臼歯(1と16,2と17)」と続いていく。最後の「第三小臼歯」がいわゆる親知らずである。
切歯(Incisior)、犬歯(Canine)、小臼歯(Pre-Molar)、大臼歯(Molar)という分類もあるらしい。
ここでは歯の詳細に立ち入らないが、歯の本数と名前くらいは覚えたほうがいいかもしれない。たとえば上の歯は下の歯よりも前にあるといったような基本構造は、理解しているようで理解できていない場合が多い。
二次元ではこのような段差をつけずに、上の歯と下の歯を同じ奥行きで表現することもある。三次元的にも「イ音」の発音の際はほとんど奥行きが同じになる場合がある。
二次元的にはどちらが手前にあるかを判断する材料に「重なり」がある。覆いかぶさる、とでもいえばいいのだろうか。とにかくこのような遠近感の把握方法もある。その意味で歯はいい勉強になる。
しかし側面図を見れば、あきらかに下の歯は「奥」にあることがわかる。もちろんその程度は人によるかもしれないが、ごく平均的な人の歯の形状はこれに近い。この理解は絵を描くときも役に立つかもしれない。
顔の基礎理解と言えば「口を閉じた」ものが多いが、実際にイラストや漫画を描く際は口を開けることも多い。したがって歯の理解は重要になる。毎回歯の本数が違うような絵では統一感が出ない(もちろん意図的な表現としてはアリだが)。とはいえ、こうしたものは基礎理解というより表情(表現)の問題であもるので、この記事では深くは掘り下げない。
笑った顔の歯の本数、怒ったときの唇の動きなど必要不可欠な知識は資料から理解したりする必要がある。ただし、基本の解剖学を身につけることで、この筋肉がこう動いているのではないか?と類推することが可能になるのでやはり基礎理解は重要である。
筋肉:大頬骨筋と小頬骨筋
「大頬骨筋と小頬骨筋」とは?意味と定義
大頬骨筋、小頬骨筋(Zygomaticus Major and Zygomaticus Minor):頬骨の大きな筋と小さな筋。大頬骨筋が収縮すると、口角が拳上して微笑の表情を作る。小頬骨筋も献上する支えとなる。拳上することで、鼻唇溝がより目立って出る。
大頬骨筋と小頬骨筋のイメージ
上が小頬骨筋で下が大頬骨筋です。
「大頬骨筋及び小頬骨筋」の起始・停止・作用
起始 | 大頬骨筋:頬骨(側面)、小頬骨筋:頬骨(全面) |
---|---|
停止 | 大頬骨筋:口角(モダイオラス)、小頬骨筋:上唇の皮膚(口角の内側) |
作用 | ・大頬骨筋が収縮すると、口角が拳上して微笑の表情を作る ・小頬骨筋も同じく口角の拳上を助ける ・上唇をひっぱることで、鼻唇溝がより際立つ ・大頬骨筋の収縮のほうが歯が見えるほどの微笑という印象。小頬骨筋の収縮は歯を見せない程度の微笑という印象。 |
感情 | 微笑 |
筋肉:咬筋
「咬筋」とは?意味と定義
咬筋(こうきん,英:Masseter):顎の側面に斜めに存在する強力な筋。四角形(正方形)で、胸骨弓の下線に沿って固定されている。咬筋は下顎枝の外側表面のほとんどに付着して、浅部と深部がある。顔の表面の肉付けをしている。咬筋は噛んだり歯を食いしばったりするとき、皮膚の下でぴくぴく動き、ふくらむ。咬筋は浅部と深部にわかれているらしいです。
咬筋のイメージ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%AC%E7%AD%8B#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Gray378.png
筋肉:口輪筋
「口輪筋」とは?意味と定義
口輪筋(こうりんきん;Orbicularis Oris):口を取り巻く筋肉。口を開閉させる働きをする(デジタル大辞泉)。
口輪筋は輪状のかたちをしている。多くの顔面筋と絡み合っている。モダイオラスに付着している。口輪筋が少し収縮すると、口唇部は静かに閉じる。強く収縮させるとかたく結ぶ。口笛を吹いたりキスをするために口をすぼめること(とがらす)こともできる。
口輪筋のイメージ画像
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A3%E8%BC%AA%E7%AD%8B#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Gray378.png
口輪筋の起始と停止及び作用
起始部 | 上顎骨と下顎骨の正中線。他の顔面筋から。唇のまわりの皮膚と筋膜。 |
---|---|
停止部 | 口角、モダイオラス |
作用 | 口輪筋が収縮すると、唇が閉じる。強い収縮により、唇を固く結ぶ。口笛、キスなどの「すぼめる」作用もある。口をすぼめる作用は上唇切歯筋や下唇切歯筋と呼ばれる小筋の作用とみなされることもあるらしい。 |
解剖学の知識:モダイオラス(口角)
「モダイオラス」とは?意味と定義
モダイオラス(modiolus):蝸牛軸、あるいは口角結節とも。ラテン語のハブに由来する。口角近くに付着している多くの絡み合う筋で作られた結合組織構造。表面から見ると唇の両端の小さな肉の山。陰影と明暗により小さな皮膚のつまみのようにみえる。
・「デッサンをしたことがある人なら目尻と口角が顔の表情の土台となることを知っているはずだ(E・H・ゴンブリッチ)」
・口角には顔面筋が集中しているため、微妙に変化することができる。口が伸縮したときに真っ先に変化するのが口角である。
・唇のあわせ目の末端に当たるところであり、顔のどの部分よりも筋肉が集中している、顔面筋のスクランブル交差点のようなもの。
・歳を取ると口角のシワは長く、深くなる。口からあごにかけての縦じわをマリオネットラインという。
「口角挙筋」とは?意味と定義
口角挙筋:口部の筋肉の中でも深部にある筋肉。上顎骨の犬歯窩から起始し、大頬骨筋、口角下制筋、口輪筋の繊維と交叉し、口角の口角結節に停止する。口角挙筋は口角を引き上げ、唇のラインを上にカーブさせる。口角挙筋は口角結節を安定させるために使用される。
モダイオラスのイメージ
筋肉:上唇挙筋
「上唇挙筋」とは?意味と定義
上唇挙筋(じょうしんきょきん;Levator Labii Superious):人間の頭部の浅頭筋のうち、口唇周囲にかけての口筋のなかで上唇と鼻翼を引き上げる働きをする筋肉。
・嫌悪をつかさどる筋肉:上唇とは上のくちびるのことであり、くちびるをひっぱる筋肉を上唇挙筋という。また上唇をひっぱって口を四角い形にして嫌悪感を表すときに使う筋肉でもある。これは絵にも活かせそうだ。正確には口輪筋に上唇挙筋がついているかたちで、唇そのものにはついていない。鼻も同時に影響を受け、引き上がる。
上唇挙筋のイメージ
「上唇挙筋」の起始・停止・作用
起始 | 胸骨と上顎骨の眼窩下縁 |
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停止 | 上唇の皮膚と筋(口輪筋) |
作用 | ・上唇挙筋が収縮すると、上唇が拳上し、上唇と人中を水平に広げて軽蔑、嫌悪、尊大の表情を作る。 ・上唇挙筋が完全に収縮すると、上唇はまっすぐ上に上がって貼ったアーチをつくり、歯が見える。嫌悪や嘔吐。上方に曲がる水平のヒダが人中領域にでき、鼻唇溝がもちあがる。 ・2つの上唇挙筋のうち1つだけが収縮すると、怒鳴るもしくはあざ笑う表情になる |
感情 | 軽蔑、嘔吐、嫌悪、尊大、怒鳴る、あざ笑う |
筋肉:口角下制筋
「口角下制筋」とは?意味と定義
口角下制筋(こうかくかせいきん,):表情筋の一つ。下顎骨の下縁から起こり、口角につく。上唇と口角を下方に引き下げる。オトガイ三角筋(「小学館」)。
「口角下制筋」のイメージ
「口角下制筋」の起始・停止・作用・作る感情
起始 | 下肢体、下縁近く |
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停止 | 口角の皮膚と口輪筋、モダイオラス |
作用 | ・口角下制筋が拳上すると、口角を下に引っ張る。口角が下に引っ張られると、しかめっ面や悲しみ、不満の表情を生み出す。 ・口角の周囲には下方へのヒダができる。 ・微笑を作るときにも使う |
感情 | しかめっつら、悲しみ、不満 |
これは不満・しかめっつら等のイメージです。いずれもフリー画像から選びました。口角を下に押し下げるような表情は不満や怒り、悲しみなど負の感情が多いですね。
筋肉:下唇下制筋
「下唇下制筋」とは?意味と定義
下唇下制筋(かしんかせいきん;Deoressor Labil inferious):下唇を曲げる筋肉
・下唇下制筋が収縮すると、下の歯を軽度に露出して下唇を下方に引っ張る助けとなる。発声やスピーチで見られるらしい。
・下唇は曲がるが、下唇そのもの以外は動かず、上唇や口の周囲はあまり変化しないらしい(あごのしわが寄ることはある)。下唇が曲がるときは、主に話をする時。下唇の裏側がわずかにみえ、半ドーナツ形になり、リラックスしているときよりも分厚く見える。
下唇下制筋のイメージ
「下唇下制筋」の起始・停止・作用・感情
起始 | 下顎体 |
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停止 | 下唇の皮膚と口輪筋 |
作用 | 下唇下制筋が収縮すると、下の歯を軽度に露出して、下唇を下方に引っ張る |
感情 | 発声やスピーチ時に関係する |
解剖学の知識:オトガイ筋
「オトガイ筋」とは?意味と定義
オトガイ筋(おとがいきん;Mentalis):オトガイ筋はオトガイ領域に位置する1対のV字形の筋肉。オトガイとは下顎、あるいは下顎の先端を指す解剖学用語らしい。英語ではchinといい、jawとは区別される。オトガイの骨部に肉付けすることで、その領域を「卵形」にしている。
・疑い、悲しみ、怒り、反抗、決意などさまざまな感情に関連する筋肉。笑いを押し殺したり、怒りや悲しみを抑制するときにも顕著。すねた表情をつくるときなどにも用いられる。
・顔の中でオトガイ筋ほどかんたんに動きを確認できる筋肉はない。すねた表情をするとき、あごの皮膚はひだになっていて、隆起した島ができてる。
・オトガイ筋の基本動作は顎の皮膚を歯の根元の方に引っ張ること。
オトガイ筋のイメージ画像
「オトガイ筋」の起始・停止・作用・感情
起始 | 下顎骨、下顎の切歯の下 |
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停止 | オトガイの皮膚の中 |
作用 | ・オトガイ筋が収縮すると、オトガイの塊を持ち上げてオトガイの皮膚を上方に引っ張る。この作用は下唇を上下方に押して「ふくれっ面」をつくる ・オトガイの皮膚に多くの「小さなくぼみ」を作る |
感情 | 疑い、悲しみ、怒り、ふくれっ面、反抗、決意 |
https://www.olanderearthworks.com/products/wall-hanging-grump-cement-face
https://www.dreamstime.com/stock-image-sulky-angry-child-image24980981#res26615551
筋肉:顎舌骨筋・顎二腹筋
「顎舌骨筋」とは?意味と定義
顎舌骨筋(がくぜつこっきん,Mylohyoid):WIKIによれば「舌骨に板状に繋がり、口腔底を形づくる舌骨上筋」。
たしかに下顎の穴を埋めるようにして台形状に顎舌骨筋がしかれているようにみえますね。顎舌骨筋の上に顎二腹筋や脂肪、皮膚がのるかたちとなります。ちょうど首と下顎骨をつなげるような感じですね。
この顎舌骨筋の上には脂肪があり、そのふくらみが人間の顔を描く際に重要になります。
顎舌骨筋のイメージ
「顎舌骨筋」の起始・停止・作用・感情
起始 | 下顎体の内面 |
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停止 | 下顎骨のオトガイ領域内面から舌骨へ付着している繊維の中 |
作用 | 顎舌骨筋(及び顎二腹筋)はあくびをするときのような、特に口を大きく開ける動作のときに下顎を下げる役割を持っている 飲み込むとき、話をするときに舌骨をあげる。 |
感情 | ???? 眠い |
「舌骨」とは?意味と定義
舌骨(ぜっこつ;hyoid):ヒトの舌骨は、下顎と咽頭の間に存在するU字形をした骨である。他の骨と関節がない[1]人間の首の骨で、首の筋肉によって支持され、舌根を支持する。蹄鉄型をしており、茎突舌骨靱帯によって、側頭骨の茎状突起の先端につるされている(WIKIより)。
舌の近くにあるものだと思っていましたが、意外と離れているんですね。たしかに自分の舌に骨があるという感覚がありません。奥の方にあるんですね。下顎骨よりも下にあるというのが驚きです。
正確には舌の奥の方の舌根と舌骨がくっついているらしいです。
「舌骨」のイメージ
https://www.zygotebody.com/#nav=0.25,149.98,43.09,0,0,0,0&sel=p:1228;h:;s:887;c:-0.6;o:-0.75&layers=0,1,9738
「顎二腹筋」とは?意味と定義
顎二腹筋(がくにふくきん;Digastric Muscle):顎二腹筋(がくにふくきん)は頸部の筋肉の一つ。舌骨に繋がる細長く、中間の腱を挟み前腹、後腹に分かれた舌骨上筋である。前腹はオトガイ舌骨筋と共に舌骨を前上方に、後腹は茎突舌骨筋と共に後上方へ挙上し、舌骨固定時には下顎骨を後下方に引く作用を持つ(WIKIより)。
「顎二腹筋は下顎の仮面領域にある二腹の筋である。後腹(posterior belly)は薄くて長く、前腹(anterior belly)は大きくて厚みがある。前腹はオトガイ領域近くの下顎骨の内側に付着している。後腹はオトガイ領域近くの下顎骨の内側縁に付着している。後腹は脳頭蓋の乳様突起の内側の乳突切痕に蓋靴ぃている。これら二腹の間の中間腱は顎二腹筋のスリングと呼ばれることもある繊維性のループで、舌骨に停止している。第二腹筋は顎舌骨筋の表面に位置している(『「アーティストのための美術解剖学」(マール社)』93P)。
ほとんど呪文のように何を言っているか不明ですが、なんとなくはわかります。まず顎二腹筋は前腹と後腹にわかれていることです。下顎の下にちょうど張り付いているような感じですね。後腹は耳の近くまで伸びていますね。
下顎骨よりも内側にあるので、特に表面の形状に下腹は影響しないのではと思います。
顎二腹筋のイメージ
「顎二腹筋」の起始・停止・作用・感情
起始 | 下顎体の内面 |
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停止 | 下顎骨のオトガイ領域内面から舌骨へ付着している繊維の中 |
作用 | 顎舌骨筋(及び顎二腹筋)はあくびをするときのような、特に口を大きく開ける動作のときに下顎を下げる役割を持っている 飲み込むとき、話をするときに舌骨をあげる。 |
感情 | ???? 眠い |
解剖学の知識:オトガイ唇溝
「オトガイ唇溝」とは?意味と定義
オトガイ唇溝(おとがいしんこう;mentolabial sulcus):オトガイの上の小さな陥没。
・オトガイってなに
詳しくはオトガイ筋を見ていただいたほうがいいと思います(オトガイ筋はオトガイ領域に位置する1対のV字形の筋肉)。そもそもこのオトガイの名前の由来不明ですね。音貝とかですかね。
よくよく調べるとこれは「頤」という漢字があるそうです。結局由来はわかりません。
・溝はなぜできるのか
オトガイ筋がV字にある状況を想像してください。「\ /」こうですね。中央に隙間が生じますよね。
いや画像で見たほうが早いか。上顎には脂肪部分があるので、ちょうど中央の唇の下に溝ができるというわけですね。
個人的にはこっちのイメージなんですけどね・・・。下唇下制筋が唇溝をつくっているイメージでした。
オトガイ筋の上にあるが、実際に溝をつくっているのは下唇下制筋という説はどうでしょうか。実際問題としてオトガイ筋の上は脂肪がのっているのでそこまで大きな影響はないと思うんですよね。
別のモデリングをみてみましょう。
これが一番正確なモデリングですね。オトガイ筋はもうすこし開いていて、下唇下制筋ももうすこし離れています。
https://www.kickstarter.com/projects/anatomy4sculptors/form-of-the-head-and-neck-by-anatomy-for-sculptors
上に唇があるのだから、必然的に下に影ができるだろうとは思っていましたが、さらに逆方向に溝があることで濃い影を中央に落とすというわけですね。
筋肉:「頬筋」
「頬筋」とは?意味と定義
頬筋(きょうきん,Buccinator):頬の筋肉の壁を形成する扇平で水平の筋肉。
・咬筋が部分的に頬筋を覆っている
「頬筋」のイメージ画像
「頬筋」の起始・停止・作用・感情
起始 | 上顎骨、第一および第二大臼歯の領域、下顎骨、第一および第二大臼歯の領域、翼突下顎縫線 |
---|---|
停止 | 口輪筋、口角(モアイオラス) |
作用 | ・頬筋が収縮すると、歯を横切るように唇をきつく引っ張り、口角をまっすぐ後ろに引いて、広告の外側あたりに「えくぼ」を作る。 ・ストローで液体を吸う動作のときのように、頬を歯に押し付ける ・息を吐いたり、息を吹いたりするときに使う ・トランペッター筋ともいう |
感情 | 軽蔑、困惑、作り笑い |
これは作り笑いとそうではない笑いの違いに関して解説している記事の画像です。
デュシェンヌ(1806~1875)というフランスの医師であり神経学者の表情の研究について述べられています。作り笑いではない本当の笑顔は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーというそうです。本当に笑っているときは、目元近くの「眼輪筋」が動くそうです。作り笑いのときは頬筋など「のみ」が動くので、眼輪筋が作用しにくいということですね。
したがって、作り笑いのときは目元のシワをあまり描かない、眉を動かさない、等の表現ができるかもしれません。逆に本当に笑顔のときは口元だけではなく目元の変化の表現も重要になってくるということですね。
口に関する脂肪
骨、筋肉を学ぶ人は多いですが、意外と重要な脂肪についてはノータッチな人がいます。ということで脂肪も学んでいきましょう。
といっても、参考書籍に脂肪に関する説明があまりないので、名前と形だけ触れて終わります。痩せている人は脂肪が減り、その部分が凹みがちになります。
この老人の顔の頬のコケは、脂肪も関係していると思います。
脂肪に関する説明はこれが大変わかりやすいですね。
さて脂肪の名前について学んでいきましょう。大事なのは名前というよりも、どういった形状の脂肪が顔面に存在しているかです。
以前も引用しましたが、これもわかりやすいです。
- Central forehead fat:中央の額の脂肪,額中心脂肪
- Middle forehead fat:中間の額の脂肪,額中間脂肪
- Lateral temporal-cheek fat:側頭の頬の脂肪,側頭脂肪
- Superior orbital fat:上側の環状の脂肪
- Inferior orbital fat:下側の環状の脂肪
- Lateral orbital fat:側頭の環状の脂肪,側頭眼窩脂肪
- Medial cheek fat:中間の頬の脂肪,頬中間脂肪
- Nasolabial fat:鼻唇(びしん)の脂肪,鼻唇溝=ほうれい線
- Superior jowl fat:上側の顎の脂肪
- Inferior jowl fat:下側の顎の脂肪
- Submandibular jowl fat:顎下の脂肪
- その他:オトガイ脂肪,メーラーファットはおそらく頬の脂肪と鼻唇溝を含めた総称?
これが名前の概要です。訳は適当につけました。
たとえば頬のコケは、四つの脂肪の「境目」に生じやすそうですね。
また光の加減として、影の境目にもなりうるとおもいます。これは光源が左上の場合です。
ところでどのサイトでも顔の脂肪の部位の説明がバラバラなのですが、正解は何処に?
この若さと老いの脂肪の比較もかなり有用ですね。
書籍では「スカルプターのための美術解剖学2」で脂肪に関する説明があります(すこしですが)。メーラーファットと眼窩下三角は主に重なるようですね。
この本では128p~129pに脂肪の細かい分類が示されています。おおまかには、だいたいですがさきほどの4つの脂肪とほとんど変わらないですね。
脂肪には「皮下脂肪」と「深層脂肪」の二種類が大まかにあるそうです。筋肉の上にある脂肪を皮下脂肪だとすれば、筋肉の下にある脂肪が深層脂肪です。
「体の柔らかい組織」として7つの分類があるそうです。
- 皮膚
- 皮下脂肪
- 広頸筋(こうけいきん)および表在性筋膜
- 浅筋膜、深筋膜、表情筋
- 深部筋肉
- 深層脂肪
- 骨
上から順に表層ですね。また、支持靭帯(しじじんたい)というのもポイントなようです。
支持靭帯とは、意味
支持靭帯(しじじんたいリテイニングリガメント):固定の一で顔の空間および脂肪を分割する組織。
この画像でもリガメントと出ていますが、絵を描く際にも重要な指標となりそうです。この記事によると、リガメントとは「皮膚をさせる貝柱のような顔の靭帯」だそうです。このリガメントがあることで、皮膚の「たるみ」を防いでいるそうです。リガメントが5つのポイントとして形成されるというのは大事ですね。
- 眼窩(がんか)下リガメント:(老化すると…)目の下がたるむ。目元が「なだれ」を起こして目が小さく見える。
- 頬骨(きょうこつ)リガメント:(老化すると…)顔が引き下がる。ブルドッグのような顔になる。
- 咬筋(こうきん)リガメント:(老化すると…)ほうれい線が目立ち、口角がたるむ。食いしばる癖があるとそうなりがち。
- 下顎(かがく)リガメント:(老化すると…)ほうれい線がめだつ。首やフェイスラインがたるむ。
- 耳下(じか)腺リガメント:(老化すると…)フェイスラインがたるむ。顔が大きくなる。二重顎になる。
リガメントが加齢によって衰えると、固くなったり伸びて緩み、皮膚や脂肪がたるんでしまうそうです。
つまり脂肪と脂肪の境目がポイントだということですね。
参考文献
人体の描き方関連
ルーミスさんの本です。はじめて手にした参考書なので、バイブル的な感じがあります。
人体のデッサン技法 ジャック・ハムも同時期に手に入れましたが、比率で考えるという手法にルーミス同様に感動した覚えがあります。ルーミスとは違う切り口で顔の描き方を学べます。
解剖学関連
スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版 スカルプターのための美術解剖学 2 表情編
一番オススメの文献です。3Dのオブジェクトを元に作られているのでかなり正確です。顔に特化しているので、顔の筋肉や脂肪の構造がよくわかります。文章よりイラストの割合のほうが圧倒的に多いです。驚いたときはどのような筋肉構造になるか、笑ったときはどのような筋肉構造になるかなどを専門的に学べることができ、イラスト作成においても重要な資料になります。
こちらはほとんどアナログでイラストがつくられています。どれも素晴らしいイラストで、わかりやすいです。文章が少し専門的で、難しい印象があります。先程紹介したスカルプターのための美術解剖学よりも説明のための文章量が圧倒的に多く、得られる知識も多いです。併用したほうがいいのかもしれません。
遠近法関連
これが一番おすすめです。難易度は中です。
これは難易度は小ですが、とてもわかりやすく説明されています。
スコット・ロバートソンのHow to Draw -オブジェクトに構造を与え、実現可能なモデルとして描く方法-
難易度は大ですが、応用知識がたくさんあります。
色関連
やはりこれですかね。
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