【アナログ】水彩絵具とはなにか【概論】

水彩絵具とはなにか

定義

水彩絵具(すいさい,英:waterccolor paint):主に顔料(がんりょう)と糊剤(こざい)を組み合わせて作る水溶性の絵具。主に糊剤(水性固着材)としてアラビアゴムが用いられる。透明水彩絵具と不透明水彩絵具の2つに分類することができる*2

顔料(がんりょう,英:pigment):色の粉。水、油、溶剤などに溶けない、化学的、物理的に安定している微粒子状の個体で、物に色、意匠(デザイン)効果、機能を与えるもの。絵具、印刷インキ、塗料、プラスチック、化粧品などに用いられる。有機顔料と無機顔料があり、有機顔料は主に着色顔料として用いられる*3

糊剤(こざい,英:glue):固着剤。性質的には樹脂に近く、何らかの方法によって水に溶かした、または分散させた形で展色剤として用いられる*1

展色剤(てんしょくざい,英:vehicle):顔料と混ぜ合わせて、絵具、塗料、印刷インキなどをつくる液体成分。天然樹脂、合成樹脂、繊維素、膠(にかわ)、澱粉(でんぷん)、植物油、カゼイン溶液などが用いられる*3

アラビアゴム(Gum Arabic):アフリカ中央部に生育するアカシア科の高木の採取樹液。アラビア商人が通称に関わったことからこの名がある。溜出形態ではなく乾いた球体塊状の形で商取引し、これを水溶液の形に戻して展色剤に利用する。絵画界では透明水彩絵の具、ガッシュ、石版画に利用する。低粘度の強力粘着剤としての利用価値が高く、切手の糊や文房に利用されている*8

説明

絵具は基本的に顔料と展色剤の組み合わせです。展色剤が油性固着剤なら油彩絵具、水性固着剤なら水彩絵具になります。水性固着剤の中でも天然樹脂のアラビアゴムを固着剤とするものを特に水彩絵具といい、合成樹脂を使うものはアクリル絵具といいます。アラビアゴムをたくさん使えば透明水彩絵具、少なく使えば不透明水彩絵具になります。

絵具の大きな分類として油絵具、水彩絵具、アクリル絵具の3種類をまずは理解できればいいと思います。ポスターカラーやガッシュは水彩絵具に分類されます*1。

分類

水彩絵具の種類

 透明水彩ガッシュポスター・カラーケーキ・カラーマット水彩
透明性透明不透明不透明透明・不透明不透明
固着剤アラビアゴムアラビアゴム主にデキストリンアラビアゴム~デキストリンデキストリン
固着剤の量中庸
顔料の質高級高級中~低級高~中級低級
有色顔料含有量中庸
体質顔料含有量無、または少無、または少中庸
耐光性強~弱考慮しない考慮しない
発色・光沢鮮明・光沢鮮明・無光沢鮮明・無光沢無光沢
色数中庸(ちゅうよう)
使用目的主に絵画制作絵画、意匠制作主に意匠制作野外制作などでの運搬しよう教材
形状練り物、または固形練り物練り物固形練り物
形態チューブ、または固形チューブチューブまた壜(びん)固形チューブ
引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/75/9/75_450/_pdf/-char/ja

水彩絵具の透明・不透明分類

絵具名透明半透明不透明
専門家用水彩絵具
ガッシュ
ポスターカラー
ケーキカラー
パンカラー
アクリル(エマルション)絵具
マット水彩絵具
テンペラ
デトランプ
日本画用絵具
版画用絵具
アニメーション用絵具
「絵具の科学」(中央公論美術出版) ,135P 
(1)専門家用水彩絵具は原則的には透明だが、半透明色・不透明色も併売されている。
(2)ケーキカラーやパンカラーのような固形の絵具は、透明・不透明が表示されている。
(3)アクリル絵具は油絵具に準ずるもので、半透明・不透明色も含まれる。
(4)日本画用絵具は、絵具としては不透明だが、技法自体は透明にもまたがる
(5)アニメーション用絵具は、ガラス絵のように描かれた画面の裏からフィルム越しに見えるもの。

水彩絵具は透明水彩か不透明水彩に分かれます。アラビアゴムをたくさん使っている絵具が透明水彩、少ししか使っていないものが不透明水彩です。アラビアゴムではなくデキストリンを使っているものはポスターカラー、ケーキカラー、マット水彩などに分類されます。いずれの分類も透明水彩より固着剤の量が少ないのでより透明性があります。

透明水彩と不透明水彩の違いとは

定義

透明水彩(英:Water Color):顔料密度を小さくして透明度を上げ、多量の水を含めても顔料が定着するようにアラビアゴムを多く配合してある絵具*2

不透明水彩(英:Gouache,ガッシュ):顔料密度を大きくして透明度を下げ、重ね塗りによる隠蔽力を高めるためにアラビアゴムの量を少なく配合してある絵具。水を加えなくても伸びがあり、厚塗りができるように湿潤剤や増粘剤が加えられている*2。透明水彩絵具に対峙する「不透明水彩絵具」の総称として用いられる。語義的には泥絵具である(Guazzo=ぬかるみ)*8

日本では水彩を透明水彩と不透明水彩の2つに分けますが、海外ではWater ColorとGuacheにわけます。カタカナ表記で言うところのウォーターカラーとガッシュです。海外では水彩といえばアラビアゴムを用いた透明水彩を意味します*8

透明水彩と不透明水彩の違い

透明水彩と不透明水彩の違い

 透明水彩不透明水彩
顔料密度
小さい大きい
固着剤(アラビアゴム)の量多い少ない
筆跡よく残すフラット
光沢あるない
明度紙の白さがもつ明度を利用する
白色絵具を混ぜて利用する
その他・固着剤が多いので水を多量に使える
・白色絵具を加えることで不透明水彩表現が可能。
・水を加えなくてもノビがある。
・厚塗りに向いている
・油絵具に近い
・水を含めて薄く使えば透明水彩表現が可能。

「水彩絵具における透明・不透明という呼称は、本質的にそれが透明あるいは不透明であるということよりも、むしろ絵画表面の状態に関わるものであり、言葉を換えれば、筆跡をよく残すのが透明水彩絵の具で、塗膜の厚さに関係なくフラットな画面を構成するのが不透明水彩だといえる。一方、通常の透明水彩絵具に白を混ぜて不透明技法を行うことがあるがそのときに用いられる絵具は油彩画における不透明色(いわゆる中間色・グレイ)の類とみなされ、いわゆる不透明水彩には含めない。逆に下地の白さを生かす透明技法に通常のガッシュを用いて、それなりの画面を作り上げても、あくまでも不透明水彩絵具と呼ばれるのである*1。」

そもそも水彩絵具は透明なのか

水彩絵具は油絵具よりも本質的には透明ではない

透明(透明,英:transparency):1:透き通ってむこうがよく見えること。2:すきとおってにごりのないこと。物体が光をよく通すこと。光が物質中を通過するとき、吸収される度合いが小さいこと(出典:小学館)。光の吸収の程度の小さい媒体を透明体、吸収の程度の大きい媒体を不透明体と呼ぶ(出典:世界大百科事典)。

透明な画面:光源からの光は、表面の絵具層を通過して下層まで到達し、反射してくる。下層が透けて見れる状態である。つまり透明な画面になっているわけである。下層で反射する光はその分だけ道程が長くなるし、固着剤の中を通過するときは空気中を通過するときよりエネルギーの消費が大きいため、入射光に比べて弱くなっている*1

1:水彩絵具は乾燥すると顔料だけの状態に近くなるので油絵具のような本質的な透明感は得られない*1

2:透明水彩絵具は顔料と顔料の間に露出した基底材(紙)が見えるので視覚的に透明感を感じさせる*1

3:油絵具は接着成分である油の中に顔料が分散した状態で乾燥しているため、油と屈折率の関係で暗く感じる*1。

*1

たしかに水彩絵具は水に溶かして使いますが使った後は水が蒸発しますよね。油は蒸発しないのでそのまま残ります。この違いが透明感の違いになります。

表面色(ひょうめんしょく,英:surface color):物体表面での光の反射によって発する色*6

透過色(とうかしょく,英:transparent color):半透明物体を透過した光によって生ずる色*6

透過・吸収(英:transmission/absorption):光を通す物体(透明な物体)では、一部の光は表面で反射したり、物体の中に吸収されたりして、残りの光が物体内部を透過し、それが光として知覚されます。このとき、例えば単波長の光が多く透過すると、物体は青く見えます*5

油がなんとなく透明というのはわかります。そして水彩絵具の場合は水が乾燥してなくなってしまうので透明感がなくなるというのもわかります。水や油は色で言えば物体透過色にあたります。

絵具の顔料自体はただの粉なので透過色ではなく表面色です。水彩絵具は着色成分の顔料と固着成分のアラビアゴムとその他補助成分からできています。水で顔料やアラビアゴムが溶けて紙にくっつくということです。水が蒸発した後もアラビアゴムのおかげで紙にくっついたままになります。アラビアゴムは糊料なのでいわばノリ、接着剤というわけです。油絵の具の場合は油が固着剤となります。

水彩絵具の場合は水が蒸発した後は顔料がむき出しになり、ぼこぼこしているそうです。油絵具の場合は油の中に顔料がある状態です。油は蒸発せず自然に固まるらしいです。こうした油を乾燥油といいます。

顔料はそもそも水に溶けないとは知りませんでした。アラビアゴムは水に溶けるそうです。なんとなくイメージとしては色のついた粉をノリで紙にひっつけるようなイメージですね。絵具を水で薄めるというとき顔料が水に溶けていないのにどうして薄まるのかその原理はよくわかりません。おそらく粉の密度の違いが色の薄さや厚さに影響しているのだと思います。

隠蔽力と透明性の関係

隠蔽力(いんぺいりょく,英:hiding power ):隠蔽力とは、塗料を素地(そじ)に塗布(とふ)したとき、素地を見えなくする能力で、被覆力(ひふくりょく)ともよばれる。塗膜(とまく)を構成するバインダは、一般比光を吸収および散乱する能力が小さいので、隠蔽力は塗膜に含まれる顔料粒子の大きさ、数と光を散乱及び吸収する能力による*3

紙に絵具を塗る場合、素地は紙になります。紙を見えないようにする力が隠蔽力です。たとえば紙に白色の水彩絵具を塗った場合は他の色よりも隠蔽力が高いです。なぜなら白色は光の反射率が高いからです。絵具の表面で光がほとんど反射し、紙までほとんど届いていないということです。

*3

黒色の絵具の場合は白色とは逆に光が吸収されてしまうので少ししか隠蔽力はありません*1。上の画像は光の反射に関するイメージです。白色のように大部分が表面で反射してしまう場合は中にまで届いていないので隠蔽力が強いということです。光を侵入させない、光から隠すみたいなイメージでいいと思います。黒の場合はほとんど侵入されてしまいますので隠蔽力が弱いということです。

これは色相の違いによる隠蔽率です。固着剤の違いによる隠蔽力というものもあります。油とアラビアゴムでは隠蔽力が変わってきます。上の画像のaが油絵具だとすればbは透明水彩絵具,cは不透明水彩です。

「絵具の場合は絵具に含まれる顔料の量が多いほど内部への光透過が少なくなり、それだけ表面反射が多くなるので隠蔽力が大きくなる*1」

粒子の粒が多いほど光が侵入しにくいということです。また粒子の面積が大きいほど表面反射が増大し隠蔽力が大きくなります。粒子がすくないと光が粒子と粒子の間をすり抜けて入ってきてしまうので隠蔽力が小さくなるというのは理解できます。

「絵具の隠蔽力については、顔料の屈折率に加えて、展色剤の屈折率も関係してくる。両者の屈折率の差があまりない場合には透明感が出て、絵具の隠蔽力は小さくなる。例えば、日本画の白色顔料として使われる『胡粉』を屈折率の差が少ない油で練ると透明になってしまう。また絵具の場合は、絵具に含まれる顔料の量が多いほど内部への光透過が少なくなり、それだけ表面反射が多くなるので隠蔽力が大きくなる*1。」

1:隠蔽力が小さいと透明になる

2:隠蔽力が大きいと不透明になる

3:顔料と展色剤の屈折率が近いと透明になる

4:顔料密度が小さくなると透明になる

5:顔料密度が大きくなると不透明になる

☆:顔料の屈折率と固着剤との屈折率との比率が小さいほど、光の直進性が高まり、隠蔽力が弱まって透明感が強くなる

油の中にガラスのコップを入れるとガラスのコップが消えるという実験が有名ですよね。ガラスのコップの光の屈折率と油の屈折率が近いからガラスのコップが透明になってしまい見えなくなるわけです。普段ガラスのコップが見えている理由は光の反射によってわずかに白く見えているからです。油で覆われることでガラスのわずかなデコボコが平らになり、光の乱反射がおさえられ、より透明に近づくようになります。

顔料そのものを見るよりも油に包まれている顔料をみたほうが透明に見えるという理屈は油とガラスのコップの関係によく似ています。顔料は色の粉なので凸凹しているわけですが、油でつつまれてよりつるつるになるわけです。

「油絵具は、接着成分である油の中に顔料が分散した状態で乾燥しているため、油と顔料の屈折率の関係で透明感が生まれ、暗く見える*1。」

光の乱反射を抑えると結果的に明るく見えないというわけですから暗く見えるというわけです。透明になると本質的には暗く見えるのです。四角い氷とかき氷、かき氷のほうが明るく見えますよね。透明のほうが暗く見えるわけです。黄色い絵具は透明度が低くいものが多く、青い絵具は透明度が高いものが多いです。科学的には透明な物体に光が入り、その一部が反射するとエネルギーが入ってきたときよりも出てきた気のほうがエネルギーが小さくなり、暗く見えるということです。不透明な物体は中に入らないのでエネルギーが減らずにそのまま表面で反射されます。

屈折率と透明性

屈折率(くっせつりつ,英:refractive index):光が境界面で屈折するときの入射角の正弦と屈折角の正弦の比。光線が空気中から水中へというように異なった媒質の境界面へ入射すると、境界面を通過したあとの透過光の進行方向は、入射光に対し折れ曲がる現象が生ずる。これが光の屈折であって、折れ曲がる割合は入射光の方向によらず物質により定まった値となる。これが屈折率である(小学館)。

*4

真空状態を1とした場合水は屈折率が約1.33で油が1.48程度です。油のほうが屈折します。

さて水彩絵具は水が蒸発してしまうので水による光の屈折はありません。油絵具は油が残るので油による光の屈折があります。光の屈折があると透明感が出ます。なぜでしょうか。

そもそも透明であるという意味をまだ私は理解できていません。ガラスは透明だと思います。透けて見えるからです。水も透明だと思います。透けて見るからです。油も透明だと思います。透けて見えるからです。木は透明だとは思いません。透けて見えないからです。

このように一般的な感覚として水や油は透明だということがいえます。それがどのようにして”絵具が透明”に結びつくのでしょうか。りんごが水に入っている状態と、水に入っていない状態を比べてどちらが透明かと聞かれた場合どう答えればいいのでしょうか。水は透明ですがりんご自体は別に透明ではありません。むしろりんごが水のせいではっきり見えず、不透明という捉え方もできます。水に透けてりんごが見えるから「りんごが透けて見える」という表現もできます。

りんごは絵具で言うと顔料、色の粉にあたります。色の粉を油で包み込んで紙に定着させるわけです。これが透明にどう結びつくのか。

「揮発残分に富み、固着剤自体の屈折率も高い油彩画ではその塗膜自体が顔料と油の屈折率差異でもって透明性を左右させるのに対し、水彩絵具ではある程度以上の量の水を用いる関係上、固着剤と顔料との屈折率差異を透明性に利用できない*8。」

透明感を大きくする方法

1:顔料と展色剤の屈折率を近くする

2:展色剤を増やす

3:顔料密度を小さくする

展色剤は油絵具では油にあたり、水彩絵具ではアラビアゴムにあたります。紙に定着させるための材料ということです。アラビアゴムの量を増やせば透明水彩になり、減らせば不透明水彩になるということです。顔料を覆うアラビアゴムが少なくなればその分顔料がむき出しになるので透明感が失われるということです。油と顔料は屈折率が近いとのことです。アラビアゴムはおそらく油よりは屈折率が顔料に近くないということです。

たしかにアラビアゴムをより多く加えると透明に見えますね。アラビアゴムを減らせば不透明になる。理屈はなんとなくわかるようなわからないような。


透明と不透明を説明するのに、ガラスを取り上げてみます。
新聞などの上に置いた透明な文字の読めるガラスの表面を細かく傷つけると、ガラスは不透明(磨りガラス)になり文字は読めなくなります。
荒れた表面では光が乱反射し、乱反射の光はあらゆる色を含んでいて合わさると白っぽい色になり、
その乱反射した光が見え、ガラスの下にある新聞の文字の見えるのを妨げます。
この不透明なガラスに水を塗ると乱反射が抑えられて透明になり、再び文字が読めますが、水が乾くとまた不透明に戻ります。
磨りガラスを透明なままにしたい場合は、乾いた後でも表面に透明な膜を形成するものを塗れば良いことになります。
アラビアゴム、膠、乾性油を塗るか、また単にセロハンテープを貼りつけても良いのです。また磨りガラスの凹凸をなくすように平らに磨くことでも透明になります。

つまり、不透明なものは表面に凹凸があり、それが乱反射をもたらして内部を覆い隠しているようなものです。
透明なものは透明な膜が凹凸を覆い隠しているので、表面の乱反射がなく、内部まで見えているような感じをもたらしています。

*8

この説明ですこし透明について理解が進んだ気がします。不透明なガラスに透明なアラビアゴムを塗ると透明に見える。目からうろこですね。たしかに透明な氷もかき氷にしてしまえば透明性は失われ、真っ白になりますよね。つまり光が乱反射するようになって色が白く見えるということです。白く見えるということはさまざまな波長が反射されて混ざって白く見えるということです。光の乱反射が抑えられて透明になるというのがポイントだと思います。水や油、アラビアゴムは光の乱反射を抑える物質だということです。

不透明なものに透明なものをかぶせると透明に見えるということです。色の粉(不透明なもの)に油をかぶせると透明に見えるというロジックがすこしだけ分かった気がします。りんごがもしでこぼこしていても、氷で包むことで表面はたしかにつるつるになりますね。

顔料は色の粉なのでつるつるしているわけではなくデコボコしているのです。このデコボコをより平らにしてくれるのが油や水、アラビアゴムということです。平らになるということは光沢が出るということです。油の場合はそのまま残りますが、水の場合は乾燥してしまうので、水彩絵具の場合はアラビアゴムと顔料だけが残ることになります。アラビアゴムは油のように全体を覆うわけではないので顔料がむき出しがちになりデコボコしてしまいます。アラビアゴムが少ないほどさらにデコボコして不透明になります。水彩絵具が本質的には透明ではないというのはこういった理由だと思います。

水彩絵具の透明感はどこからきているのか

「一般に透明水彩といわれる絵具の発色は、顔料と顔料の間に露出した基底材(紙)が見えることで、視覚的に透明性を感じさせるのである*1

紙が見えるから透明性を感じさせるそうです。透明水彩はアラビアゴムが多く、顔料密度が低いのでbにあたります。顔料密度が低いと紙に当たりやすいですね。紙は白いですよね。白い紙が透けて見えると透明感を感じやすくなるということです。顔料を増やすと紙に光が届きにくくなるので透けて紙見えにくくなります。したがって不透明感が強くなるということです。ガッシュやポスターカラーでは顔料密度が高いそうです。

透明色と不透明色

定義

透明色(とうめいしょく,transparent color):入った光より出てくる光が少ないので暗く見える*7

不透明色(ふとうめいしょく,opaque color):特定の波長範囲の色を選択的に100%近く反射するので明るく見える*7

*1

不透明だと明るく、透明だと暗く見えます。その度合が色によって違うらしいです。赤系の絵具は幅広い透明度を示し、黄色は透明度が低く、緑の多くは透明度が高く、青は透明度が高いらしいです*7。同じ赤系でもカドミウムレッドでは透明性が低く、カーマインでは透明性が高く、バーミリオンヒューでは半透明といった具合にばらけています。黄色はほとんど不透明か半透明かのどちらかです。緑はカドミウムグリーンが不透明ですが他の絵具はほとんど半透明か透明です。青系はほとんど半透明か透明です。

不透明だと明るくって言葉の感じがものすごく矛盾を感じさせますよね。まだよく馴染みません。透明のほうが明るそうにみえますよね。「四角い氷とかき氷どちらが明るく見えますか、かき氷ですよね」といわれれば、なるほどたしかに「不透明のかき氷のほうが明るく感じるなあ」となります。

なんとなくイメージとして「ガラスのほうが光を通すから明るく感じるじゃん!不透明なガラスだと光が通ってこないじゃん!」となってしまうのだと思います。眩しいか、明るいかの違いかもしれませんね。四角い氷のほうが光が透過してくる光の量(放射輝度)は多いですが、白っぽさ(明度)はかき氷のほうが高いということです。氷のほうが透過する光は多いが、かき氷のほうが反射する光が多いといった感じだと思います。ややこしいですね。

顔料自体の性質により不透明なケース

粗面(そめん,rough surface):ざらざらしている粗(あら)い面。対義語に滑面(かつめん,smooth surface)

分光反射率(ぶんこうはんしゃりつ,spectral reflectance):非発光性の物体は光を受けるとその一部またはほとんど全部反射する。その場合、物体の大部分はある種の波長の光をとくに多く反射する特性を備えている。物体に備わっている反射特性を分光反射率という*10

画面内部に入った光を吸収してしまって反射させない場合。顔料自体に光の一部を反射し、一部を透過あるいは吸収する性質がある場合に起こる。このときは顔料に反射した部分の光しか目に到達しないので、ずっと明度が下がる。ただし表面が粗面であれば、光の場合と同じくやはり多少明度が引き上げられる*1。

たとえばウルトラマリンという絵具は主に光の短波長を6割程度反射していています。裏を返せば短波長の4割程度を吸収し、中波長や長波長の大部分を吸収している絵具ということができます。もし絵具にあたる光を全ての可視光の波長が100%の割合で混ざっていると仮定した場合、青い絵具に光が当たった後に出ていく光の量は少なくなっていることがわかります。絵具に光が吸収されたせいで反射して出ていく光は弱まったということです。青色の絵具は比較的に多くの波長を吸収する物体なので透明度が高いといえます。白色の場合はほとんど吸収せず、反射してしまうので透明度が低いといえます。

*5

当然ですが顔料と固着剤の組み合わせで吸収および反射率が決まります。さらにどういった紙を使うのかにも左右されます。顔料だけで反射率を調べた文献はなかなか見つかりませんでした。海外のサイトで固着剤ごとにデータが有りました。縦軸がなぜ140%になっているというと、おそらく可視光以外の光の反射率も含めているからだと思います。人間は400-750前後の可視光しか目で見ることができません。

上の図はチタニウムホワイトという絵具の固着剤ごとのグラフです。gum arabicというのはアラビアゴムです。linseed oilが油(アマニ油)です。powderがおそらく顔料自体の分光反射率だと思いますが詳細は不明です。gum arabic(reflection probe)が何かは不明です。油にくらべてアラビアゴムのほうが反射していることがわかります。つまり明度が高いということです。白色なのでどの波長も高く、均等に反射しています。この結果を見ても水彩絵具は油絵具に比べて透明度が低いため、明度が高いということがわかります。

*5

上の図はカドミウムイエローの分光反射率です。白に近い分布ですが短波長の反射率が小さいです。したがって緑と赤の多くが反射されることになり、人間の視細胞にある緑錐体と赤錐体を刺激して黄色く見えるということです。とはいえ短波長の多くを吸収しているので、絵具に入ってきた光よりも出ていく光のほうが少なくなります。ちなみに吸収された光は熱エネルギーになるらしいです。

紙からの反射光

明るさ(あかるさ,英:brightness):ある領域が発している光の絶対的な量の大小に関わる感覚量*3

明度(めいど,英:lightness):同じ明るさで証明された白色面の明るさを基準として判断される表面の相対的な明るさを意味する。明度は物体表面の反射率の高低に対応する感覚料であり、白さー黒さの程度を表す*3。

光沢感(こうたくかん,英:luster):光沢は、物体表面に関する視知覚の属性の1つである。色が反射光の分光分布によって生じるのに対し、光沢は、反射光の空間的分布あるいは時間的分布(観察角度の変化など)によって生じる。たとえば、光沢の言語的表現である「つるつる」は反射光の空間的分布、「きらきら」は時間的分布に基づく表現である。光沢の程度を数値で表したものを光沢度といい、また人間が近くする心理的光沢度を光沢感という*3

*1

白い紙に光があたるとよく反射します。白い紙というのは基本的に反射率が高い紙になります。したがって”明度”が高い紙になります。ろうそくの光の強さとは違います。水彩画、特に透明水彩の場合は基底材(紙)によく光が通ります。

透明水彩は顔料からの反射に紙からの反射に加えて紙からの反射が加わるから透明になり、明るく輝いて見えるというのがポイントです。

不透明水彩は隠蔽力が高いので光が顔料の大部分が表面で反射されます。したがって光が弱まらないで反射されるので明度は高いまま維持されますが、表面がでこぼこしているので光沢はありません。鏡を割れば自分が写りにくくなるのと同じです。透明水彩と違って紙の明度を利用しにくいです。透明水彩と不透明水彩どちらのほうが明度が高いかは使い方次第になります。

「不透明水彩は含量が多く、光が通らず塗面にダイレクトに反射してツヤのない画面になります。透明水彩は絵具の粒子が荒く、光が素通りし、白い紙に反射して再びセロファンのように透過して、色を認識します。従って、透明水彩絵の具は紙の白地と相まって明るく輝いて見えます。当然、厚く塗り重ねしていけば不透明になってしまいます*11。」

水彩絵具の魅力とは

魅力

醍醐芳晴さんによれば水彩画の魅力は「パレット上の混色で一気に即興的に描く技法*11」にあるらしいです。

油絵具は重ね塗りに時間がかかるので透明水彩のどんどん色を載せて形を表す直感的な感じが気に入ったそうです。特にアンドリュー・ワイエスという人の透明水彩の表現に惚れたそうです。透明水彩でも絵具の量を多く使うか少なく使うかで透明感・不透明感を表現できるというのがポイントですね。薄く使えば透明感がでて明るく見え、厚く使えば不透明感がでて暗く見えるということです。使い分けが重要になってきます。

アンドリュー・ワイエス(1917-2009):アメリカン・リアリズムの代表的画家であり、戦前から戦後にかけてのアメリカ東部[2]の田舎に生きる人々を、鉛筆、水彩、テンペラ、ドライブラシなどで詩情豊かに描く(WIKI)。ワイエス水彩の特徴は透明感のある色面と不透明な色面の対比にある。明るい固有色は透明水彩を薄く溶いて塗り、暗い固有色や陰影部は絵具の量を多めにたっぷり溶いて不透明に塗る。その不透明色はパレット上で2-3色、よくしっかり混ぜた色だが絵具自体は透明水彩なので水加減や重ね塗りのタイミングでとても表現力豊かな色面になっている*11

透明水彩の扱いやすさ

醍醐さんによれば(初心者にとって)透明水彩よりも不透明水彩のほうが扱いやすいらしいです。

不透明水彩は暗い色の上に重ね塗りをして色を明るくすることができ、色づくりが自由にでき、失敗した色も覆いかぶせることができるという利点があります。

透明水彩は暗い色の上に重ね塗りをしていろを明るくすることはできません。したがって透明水彩の場合は塗る前の計画性がより要求されます。

水彩の技術について

醍醐さんの定義に依拠しています。具体的なやり方はここでは扱いません。

1:線

2:平塗り

・色の線の幅を広げ広い色面を塗る技法

3:重ね塗り

・平塗が完全に乾いてから同じ色、まてゃあ別の色を上塗りすること。同色なら色が濃く深くなり、別の色ならその2色を混色したような透明色になる。

4:にじみ

・平塗の差異、水を多めにして溶いたときの、水の自然作用による水彩特有の効果。

5:ぼかし

・水分を含んだ筆(絵具はつけない)で、明るく伸ばしてグラデーションをつくること。

6:ウェットイン・ウェット

・塗った色面の上に直ちに別の色をのせる技法。お互いの色が紙の上で混ざりあい、水彩ならではといえるにじみの効果が出る。

7:スパッタリング

・絵具を紙に散らす技法

8:スクラッチ

・塗ってある絵具をナイフや爪、筆の柄などで削り劣ること。

9:ドライブラシ

・筆に含んだ絵具の水気を、ティッシュや布などで吸い取って塗る技法。

参考文献

【参考書籍・サイト】

1:「絵具の科学」,ホルベイン工業技術部,(中央公論美術出版),2018年

2:http://zokeifile.musabi.ac.jp/%E6%B0%B4%E5%BD%A9%E7%B5%B5%E5%85%B7/

3:「色彩用語辞典」日本色彩学会(東京大学出版会)

4:https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjbt7rGk4LkAhWqyIsBHT2rBu8QFjAAegQIAhAC&url=https%3A%2F%2Fresearchmap.jp%2F%3Faction%3Dcv_download_main%26upload_id%3D117835&usg=AOvVaw3fYyWXG-QcHguRWY2fJSnB

5:「色の辞典 色彩の基礎・配色・使い方」,色彩活用研究所サミュエル監修,(西東社)

6:https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol12.html

7:https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjbt7rGk4LkAhWqyIsBHT2rBu8QFjAAegQIAhAC&url=https%3A%2F%2Fresearchmap.jp%2F%3Faction%3Dcv_download_main%26upload_id%3D117835&usg=AOvVaw3fYyWXG-QcHguRWY2fJSnB0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

8:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/75/9/75_450/_pdf/-char/ja

9:http://www.ne.jp/asahi/gosho/baren/newpage28.htm

10:「色彩学概説」千々岩英彰(東京大学出版会)

11:「こう描けば絵は上手くなる」,醍醐芳晴,芸術新聞社

【引用画像】

1:https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwjbt7rGk4LkAhWqyIsBHT2rBu8QFjAAegQIAhAC&url=https%3A%2F%2Fresearchmap.jp%2F%3Faction%3Dcv_download_main%26upload_id%3D117835&usg=AOvVaw3fYyWXG-QcHguRWY2fJSnB0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

2:https://www.researchgate.net/figure/2-Schematic-representation-of-reflected-and-transmitted-forms-of-light-when-ray-strikes_fig2_281817022

3:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/75/9/75_450/_pdf/-char/ja

4:https://www.nikon.co.jp/sp/kids/refraction/

5:https://www.researchgate.net/figure/FORS-spectra-of-titanium-white_fig2_266081590

toki

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