RYBとはなにか

RYB

RYB:RED(赤)、YELLOW(黄色)、BLUE(青)を三原色とする考え。主に減法混色。長い間絵画で三原色として用いられてきた。
加法混色と減法混色
加法混色(かほうこんしょく,英:additive mixture):刺激が色光である場合に、ある色光に別の色光を加えると、重なった部分の色光(混色光)は光量が増加する。このように輝度が足し合わされるような混色方法を加法混色という*1。
減法混色(げんぽうこんしょく,英:subtractive color mixture):色フィルタのような特定のスペクトル領域の光を吸収する媒体の重ね合わせによって別の色が生ずる色の混色方法。通常、黃、マゼンタ、シアンの三色が減法混色の原色として用いられ、黃はスペクトルの青領域、マゼンタは緑領域、シアンは赤領域の光りを吸収する。加法混色では混色するたびに明るさが増すのに対し、減法混色では明るさが減じる*1。
原色
原色:3つの色を混色して新しい色をつくるとき、3つの色をそれぞれ原色とよぶ。3つの色が独立、すなわちどの2つを混色しさせても他の1つにならない場合は、3つの色の適当な比率の混色によって任意の色を表すことができる。この原理に基づいて色を表記するシステムを表色系と呼び、この原色を原刺激と呼ぶ*1。3つの基本色を混ぜ合わせることで他のどんな色も混ぜ合わせることができるという考え*2
原色はどれでもいいのか

3つの色が独立さえしていれば原色はどれでもいい。ただし減法混色ではRYBよりもCMYのほうが原色によって作り出せる色の数が多い。加法混色ではCMYよりもRGBのほうが作り出せる色の数が多い。したがってより広い色域をもちうるような原色が選ばれる。プリンターではCMY(K)が、ディスプレイではRGBの三原色が採用されている。なぜRYBというある意味劣った三原色を今まで採用していたのか、未だに採用しているケースがあるのかをこれから説明します。

RGB

RGB:RED(赤)、GREEN(緑色)、BLUE(青)を三原色とする考え。主に加法混色。ディスプレイやカラーライトなどはRGBの加法混色で表現されている。

CMY

CMY:CYAN(緑青)、MAGENTA(赤紫)、YELLOW(黄色)を三原色とする考え。主に減法混色。最近になって絵画で三原色として用いられ始めた。

RYBが使われてきた歴史

昔はシアンやマゼンタの色を作ることが難しかった

RYBは絵画で長い間使われてきた3つの原色です。この三色を使ってアーティストはさまざまな色を混色して生み出し、絵に利用してきました。

ジェームズガーニーによれば「アーティストたちは、一般的に、赤、黃、青の三色を基本色とみなしています。しかし、ギリシャやローマの時代からルネッサンス期にかけては、多くの人が、緑を加えるべきだと考えていました。(中略)絵の具のチューブを目の前に並べ、『原色』と聞いて思い浮かべる色を三色選ばせたら、ほとんどの人が、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、ウルトラマリンブルーあたりを選ぶのではないでしょう*2。」といっています。

私の小学生時代の記憶はあまり定かではないですが、三原色は赤、緑、青というイメージでした。黄色は赤と緑を混ぜて作るものだと当時の私は思っていました。というより三原色に関する知識がほぼなかったといえます。減法混色の原理からしても赤と緑を混ぜて黄色ができることはないはずです。なぜなら減法混色は混ぜ合わせると明るさが低くなるものであり、黄色は赤や緑よりも明るい色だからです。

軽く「小学校 三原色」で検索しても「赤、黄、青」が出てくるページがある*3*4ので三原色を赤、黄、青とする文化は日本にもあるのかもしれません。どう考えても純粋な青と黄色を混ぜても緑は作れず灰色になるはずです。赤と青でマゼンタになるとも思えません。

絵具における明度と彩度の関係(赤い絵具はなぜ赤いのか、白色はなぜ明度が高いのか)

結論から言えば絵の具の青や黄色、赤は純粋な青や赤ではないのです。どちらかといえば青はシアン、赤はマゼンタに近い色ということです。もし仮に青い絵の具が黄色のみ(黄色の波長)を吸収する物質であれば、補色を失った青色のみが反射されて我々の目には青色にしか見えなくなります。また黄色も同様に青色のみを吸収する物質であれば、補色を失った黄色のみが反射されて我々の目には黄色にしか見えなくなります。さてこの純粋な青い絵の具と黄色い絵の具を混ぜると、青の光と黄色の光が混ざることになります。青と黄は補色の関係にありますのでお互いに打ち消しあい、灰色に近い色になるということです。どうやっても緑色にはなりません。

一方でシアン(緑青)とイエローを混ぜると緑色になります。シアンは橙を吸収する絵の具で、イエローは青を吸収する絵の具です。したがって緑青と黄色の光が我々の目に届くことになりますが、青と黄色は補色なので打ち消され、緑だけが残り緑色に見えることになります。

 

*2

 

 

*1

このような原理を考えると、昔から言われていた「赤、黄、青」の三原色はマゼンタ、イエロー、シアンに近いものだったといえます。実際にウルトラマリンブルーの分光反射率を調べると青色の波長だけを反射していない(黄色の波長だけを吸収していない)ことがわかります。もちろん青を多く反射していますが、同時に緑や赤もわずかに反射しているのいです。つまり青い絵の具は黄色だけを吸収する物質ではなく、緑や赤、赤紫といった他の色もわずかに吸収する物質だということです。

さてこうした青色が黄色と混ざるとどうなるでしょうか。単純化するためにウルトラマリンブルーが黄色と赤紫を吸収する物質だとします。つまり青色と緑を反射する物質だということです。その物質と黄色い絵の具が混ざれば青色と黄色が補色により打ち消され、緑色が残りますよね。これがウルトラマリンブルーとカドミウムイエローを混ぜて緑に見える理由です。純粋な青い絵の具を作ることは難しいのです。実際はシアンに近い青色なのです。同様に赤色もマゼンタに近い赤色なのです。

ジェームズガーニーによればシアン、マゼンタ、イエローの原色に一致する化学顔料が出現したのは比較的最近であり、また現在においてもアーティストが求めるあらゆる特性を備えた顔料は見つかっていないそうです*2。原色に近いCMYとしてはフタロシアニン、キナクリドンマゼンタ、カドミウムイエローライトなどが挙げられるそうです。小学生がこの絵具を使っているとはとても思えませんね。同様に純粋な青、純粋な赤といった顔料を作ることは難しく、また一般的な絵の具ではないのです。したがって青と黄色を混ぜても鮮やかな緑色にはなりません。緑を使いたければ混ぜるのではなく最初から緑の絵の具をつかうべきという話になります。なのでギリシャの人たちは赤、黃、青に緑を加えるべきだといったのでしょう。

昔はシアンやマゼンタに近い色の顔料を化学的に作ることができず、また自然から採取することも難しく高級だったらしいです。貝紫色といわれる色は貝の分泌物を染料にしたのですがとても貴重だったそうです。日本でも紫系の色は高貴な色として扱われて庶民は使えませんでしたよね。

ある意味で当時の赤や青は劣ったマゼンタ、劣ったシアンのような色だったといえます。たとえばシアンは理想的な反射をいえば青と緑を同じくらい反射したときの色です。それに対して昔の青色の絵の具はは青をたくさん反射して、緑もすこし反射するような色です。青と緑青の中間のような色だったといえます。

RYBですべての色が表現できるという誤った考え

WIKIによれば17世紀後半にアイザック・ニュートンがプリズムにより太陽光を分光させてスペクトルを取り出す実験の影響が強いとあります*5。ニュートンは1675年の論文でプリズムから赤、橙、黄、緑、青、藍、菫という7色にわけました。シアンやマゼンタをあまり考慮していないイメージがあります。もちろん彼は色相が無数にあることを知っていました。恣意的に選択した7色です。当時はシアンやマゼンタの原色をつくるのは難しかったので青と黄色で緑を作り、赤と黄色で橙をつくるといったことをしていき赤、黄色、青を三原色とするのは当時の必然的な流れだったのかもしれません。

WIKIには厳しく「赤・黄色・青の三色の混合では他のすべての色を作ることはできないという多くの反証があったにもかかわらずこの理論はドグマと化し、今日にまでこの考えは残っている。赤・黄色・青の三色を原色として使った場合の色域は比較的小さなものとなり、なかでも鮮やかな緑・シアン・マゼンタを作ることが困難という問題があった*5。」とあります。ドグマとは偏見的な説ということです。

実際にシアンやマゼンタに近い化学合成で作られた顔料が存在する現代で、赤、黄色、青が三原色をするのはすこし無理があるような気がします。言葉の慣れとか言ってないでシアン、マゼンタ、イエローを色材の三原色として広めていく必要があると思います。青、黄色、赤が三原色だと教えているくせに実際の絵の具の青はシアンに近いという誤解を生み出しやすい構造は個人的に嫌いです。教育的にもあまりよくないと思います。

光の三原色は赤,青,緑であり,色の三原色は 赤,青,黄色である,とよく言われる。しかしここで言 う赤と赤,青と青は互いに同じ色ではない。別々に見せられると,どちらも赤であり,また青であるが,同時に見せられて比較すれぱその違いは容易に分かる。工業的にはこれらを区別するため,光の三原色におげる赤と青とをそれぞれマゼンタおよびシアンと呼んでいる。更に言えぱ,色の三原色における青はむしろ青紫に近い。即ち極く大ざっぱに言って,人間の目に見える光の波長域 400nm~750nmを3等分して,短波長域の成分の多い色が青(正確にはウルトラマリンブルー)であり,中波長域の成分の多い色が緑であり,長波長域の成分の多い色が赤である。そして,白色すなわち全波長域の成分 をもつ色から短波長域の成分の欠げた色が黄色であり,
白色から中波長域の成分の欠けた色がマゼンタであり, 白色から長波長域の成分の欠けた色がシアンである。このように理解して初めて加法混色や減法混色,更には分割混色と云った概念が統一的に理解できるのである。小学校の児童にマゼンタやシアンといった難しい名前を教 える必要はないと思うが,少なくとも,色の三原色は 赤,青,黄色である等と云った誤解を生みやすい表現で は教えないようにしたいものである。そして中学校でははっきりと二つの赤と青を区別して教える必要があろう*6。

「絵具の色に関する一考察」という島根大学の論文なのですが、私の言いたいことを簡潔に言ってくれています。

重要なのは色光の赤と青と色材(絵具)の赤と青は別だと考えることです。絵具の赤や青は色光のように純粋ではないのです。絵具の青は短波長だけではなく中波長や高波長も反射する物体です。色光の青は短波長のみの光です。混同するのはよくありませんし、混同の原因は色材の三原色を青、黄、赤と教えてしまうことにもあるのです。青=シアンだというのも間違いで、実際は青紫に近いそうです。

RYBの考えでデジタルで絵具感覚で絵を描く危うさ

デジタルペイントは一般的にRGBやHSVで色を決めます。もし青色を使いたいとしたらRGB比を0:0:255にする人がいると思います。これは色光的には正しい青です。短波長のみの光を擬似的に表現しているからです。しかしこれを絵具の青色だと思ったら大間違いです。たしかにデジタルペイントソフトは物体色的に描くことができます。青と黄色を混ぜればグレーになるのです。混ぜれば混ぜるほど黒くなります。加法混色の場合は白くなりますが、デジタルペイントソフトでは擬似的に減法混色ができるのです。

当然RGB:0:0:255と255:255:0を混ぜても緑色にはなりません。灰色になります。絵具の感覚で使いたいならウルトラマリンブルーのような絵具を一度RGB比などで変換する必要があり、その場合はRGB(sRGB表示)比が56:77:152といったいろになります。我々が思っている青は0:0:255ですが、実際はシアンや紫に近い色だということが数値でもわかります。赤や緑も反射している絵具なのです。

絵具を数値に換算したカラーパレットは探せばあると思うのでそちらを基準に考えたほうがいいかもしれませんね。あるいは自分でRGB比をいじって理想的な絵具を作っていくことが重要になります。

RYBのせいで補色がややこしい問題

色光と色材の違い

*3

RYBが三原色だと長い間考えられてきた影響でカラーホイールもRYBを正三角形としたものとして構成されています。当然ですがこのカラーホイールにおいて黄色の補色は紫になり、青の補色はオレンジになります。RYBがもはや正しい理論ではないと感じている私にとってこの補色関係が正しいとはどうしても思えません。

波長と色の関係(日立さんのサイトを参考に)

波長(nm) 補色(余色)
~400紫外
435~480
480~490緑青
490~500青緑
500~560赤紫
560~580黄緑
580~595
595~610緑青
610~750青緑
750~赤外

色光の世界では黄色の補色は青色です。ただ色材の世界では色光のような純粋な青色を反射できる物質がまだ存在していないので補色はすこし変わるというのは理解できます。たとえば色光の世界において橙色の補色は緑青(シアン)です。もし絵具の青色が実態としてはシアンに近いとするならば補色が橙色になるというのは理論的には理解できます。「青って言っちゃったけど実際はシアンに近いから補色は黄色じゃなくて橙色になっちゃうよね-」というわけです。実態としては正しいけど名前としては不適切という珍妙な状況です。

紫の補色とは

吸収光の色と観察される色の関係

吸収光波長/nm吸収光の色 観察される色(補色,余色)
400~435緑黄
435~480
480~490緑青
490~500青緑
500~560赤紫
560~580黄緑
580~595
595~610緑青
610~750青緑
750~800紫赤
※「新染色加工講座3」,p.112,共立出版(1972)

色光の世界では紫の補色が何色になるのか皆さんご存知でしょうか。私は知りませんでした色光としての紫の補色は「緑黃」みたいですね。つまり理想的な紫色の絵具は緑黃の光の波長を吸収する物質だということです。本来補色が黄緑のはずなのに黄色にズレてしまっているということです。原因はおそらく黄色の絵具の反射率にあると思います。

*4

カドミウムイエローミディアムという黄色い絵具の分光反射率を見てみます。青をかなり吸収していますよね。黄色の補色は青色なので青色を吸収するのは当然です。青色の波長を吸収すればするほど黄色の波長をよく反射するという関係です。580-595nmあたりの黄色はかなり反射率が高いですよね。しかし問題が発生しています。青緑(490-500nm)あたりの波長や他の色もかなり吸収しています。したがって緑が残ってしまい、緑みの黄色の色が反射してしまうのではないかということです。赤色もだいぶ反射していますが光として考えると赤色と緑色が合わさると黄色になるので物質としては黄色に見えます。

黄色の補色は本来青であるはずなのに紫になっている原因がこれでわかったはずです。黄色い絵具といっておきながら実質的には緑黃に近い色だということです。紫の補色は緑黃なので、緑黃の補色は紫ということになります。カドミウムイエローのRGB比を検索するとRGB:250:198:30と出てきます。理想的な黄色は255:255:0なのでだいぶ開きがありますね。

このように考えるとやはり色光の補色と色材の補色が異なる原因は色材を作るのは難しいというところに行き着くのだと思います。色光のように純粋に黄色い波長だけを返す、つまり青色だけを吸収するような絵具をつくるのは現在の科学技術では難しいということです。化学合成で理想的な黄色が作られるようになってきましたが、それもまだまだといったところらしいですね。ジェームズガーニーは理想に”近い”色材としてカドミウムイエローライト(PY35)、キナクリドンマゼンタ(PR 122)、フタロシアン(PB17)を挙げています*2。

ジェームズガーニーによる補色の説明

補色とは
補色(complementary color):対立する、あるいは釣り合いの取れた色の特性を持つ2つの色相。色相環の中心を挟んで対角線上にある色*2。

ジェームズガーニーは顔料と混色の世界では、補色の組み合わせといえば黄と紫、赤と緑、青とオレンジ*2 などといっています。また補色と混ぜ合わせると固有の色相をもたないニュートラルグレーになるといっています。たしかに減法混色では補色と混ぜ合わせるとグレーになります。

一方で「残像と視覚の領域では色の組み合わせは若干異なり、青の補色は黄色でオレンジではない*2」といっています。

残像とは
残像(after image):刺激が消えた後も、続けて網膜の同一部位にその刺激に対する知覚が残る。これを残像と呼ぶ。先行して与えられる刺激の色や明るさ、空間的配置によって見える残像は異なる。とくに先行刺激と色や明るさが同じものを正の残像、反対のものを負の残像という*1。

たとえば赤を見た後に白紙に目を移すと残像として青緑が見えます。赤を見た後に黄色をみると、赤の補色である青緑が残像として残るので黄緑に見えます。

有彩色を観察した場合はもとの刺激の色相と補色関係にある色相が現れます*7。しかし鮮明な色ではなく質感異なり、空の青のような面色的な性質を帯びているそうです7。またどうして補色残像が現れるかはよくわかってないそうです。一定の色を観察している間に目はその色に順応して感受性は低下しますが、元の色と補色関係にある色の感受性は低下することなく保持されるので均衡が取れなくなり補色残像が現れるという疲労説という説明が一般的にはされているようです*7。

正直ガーニーのいう青色が具体的にどういった分光反射率をもった青色なのかはっきりしていないのでわかりません。もし分光反射率が青色に関する短波長のみなら補色は黄色になるはずです。理想的な青の絵具なら補色はオレンジではなく青色です。しかし実際の絵具はシアンに近い、あるいは青紫に近い分光反射率を持っているのでオレンジが補色になってしまうというわけです。シアンに近い色の青い絵具の補色残像がオレンジではなく黄色になる論拠がよくわかりません。翻訳のミスなのかガーニーのミスなのか私のミスリーディングなのかわかりませんが、理想的な青色の場合の補色は黄色、残像も黄色です。非理想的な現実の青色の絵具の補色はオレンジ、残像もオレンジのはずです。実際はシアンや青紫なのにも関わらず人間が青と思い込むことで補色も黄色に感じてしまうといった知覚的なメカニズムが働いているのかもしれませんが、そういった文献を見たことはありません。

おそらくですがガーニーの言いたかったことは色光においては青の補色は黄色になるが、色材においては青の補色はオレンジになるよといったことだと思います。あるいは反対色の対応である赤-緑、青-黄色といった色チャンネルを意図したのかもしれません。あるいは物理的補色と生理的補色を区別して、残像によってみえる補色を生理的補色として区別したかったのかもしれません。

 

色彩環において対になっている色を、我々の目が実際に対として捉えていることを、ゲーテは残像の実験によって確かめる。白紙の上に色を付けた紙片を置いてそれをじっと見つめる。しばらくしてから色付きの紙片を取り去ると、白紙の上に紙片の色とは違う色の残像が浮かび上がる。その残像の色こそ対になっている色である。即ち赤は緑、黄は紫、青は橙の残像を出現させるのである。ここにも対立する色が呼び求め合う働き、分極性が見出される。色彩は静止したものではなく、それ自身の内部に力を有して運動するものであり、動きもその色単独のものではなく、他の色と結びついた動きであるというこの考え方は色を有機的・生命的に捉えたものだと言える。

*8

あるいはゲーテの色彩論の中にある残像補色を根拠としているのかもしれません。ですがゲーテが確認に使った黄色の色材は黄色の波長のみを反射するような色材ではなく、実際は緑黃色だと思うので特に反証にはなっていません。現代ですら難しい黄色の色材が当時あったとは考えられません。

残像補色に関するメカニズムはまだ勉強不足なので判断を保留とします。

ジェームズガーニーによるRYBに代わる新しい色相環

yurmbyカラーホイール

*5

 

yurmbyカラーホイール:カラーホイールのCMYの間にRGBを均等に置いたさまざまな目的や状況に適応できる汎用のカラーホイール*2

英語圏の人の場合は語呂合わせで覚えるためにYURMBYにしたのだと思います。「You Ride My Bus, Cousin Gus(従兄弟のガス(おそらく名前)に私のバスに乗れと言っているのだと思います。)」詳細は不明です。日本語の語呂だと「入れまぶし具」とかになるんでしょうか(適当)。とにかく12時にイエロー右回りにレッド、マゼンタ、ブルーシアン、グリーンとくると覚えておけばOKです。向かい合う色が補色になっていることも忘れずに覚えておきましょう。YRMBCGの6色を等しく原色として考えるそうです*2。

吸収光の色と観察される色の関係

吸収光波長/nm吸収光の色 観察される色(補色,余色)
400~435緑黄
435~480
480~490緑青
490~500青緑
500~560赤紫
560~580黄緑
580~595
595~610緑青
610~750青緑
750~800紫赤
※「新染色加工講座3」,p.112,共立出版(1972)

この色相環の補色は色光の補色と一致します。ただし現在の色材の補色とは正確に一致しない場合もあるので気をつけてください。

RYBカラーホイールの問題点(従来のカラーホイールの問題点)

1:赤と黄と青は固定的な原色ではない

赤と黄と青が固定的な原色ではない理由としてジェームズガーニーは「グラデーション状のカラーホイールの外側に無限に並んでいる色相は、どれも原色と言うことができるのです(74P)。」とあります。

どれでも原色と呼ぶことができるなら青と黃と青でもいい気がしますが、それにこだわる必要はないということでしょう。アーティストが赤、黄、青に慣れ親しんできたからといって固定する必要はないのです。写真や印刷の際の混色によって彩度の高い色を一番幅広く作れる(=色域が広くなる)のは今ではシアン、マゼンタ、イエローの三色と言われていますがCMYの原色に一致する化学顔料が出現したのも比較的最近らしいです。そうした理由から赤、黃、青を原色とする期間が長かったのだといえます。

2:色相はどれももともと存在するものであって二次色あるいは他の色の合成によるものではない

わかるようでわからないですよね。もともと顔料は花や虫、貝をすりつぶして顔料にしていました。今のように化学的に絵の具がつくられていたわけではないのです。したがって黄色の花と青の花をすりつぶして合わせて緑になるかというとそううまくはいかないのです。緑の花をすりつぶしたほうがいい色になるのです。そういった意味ではたしかに色相はどれももともと存在するもので二次色ではないということができます。

色光的な話でいうと白色光をスペクトルで分けると虹のような色ができますが、そのひとつひとつにわかれた色は単色光といい色相に相当します。たとえば黄色の波長は580nm前後といわれます。この波長が人間の視細胞の中にある赤錐体と緑錐体を同時に刺激して黄色に見えるという仕組みです。つまり黄色の光は青色の光と緑色の光が合わさった二次的な光の波長ではなく、もともと一次的な黄の波長というものが存在しているのです。しかし人間の錐体は赤錐体、緑錐体、青錐体と3つの錐体しかなく、黄の錐体というのがないので結果として青色の波長と緑色の波長を混色させた合成光と黄色の単色光の区別が付きません。

こうした人間の視細胞の仕組みを考えて作られたものが色光の三原色であり、赤緑青なのです。そして加法混色の原理によりそれぞれからつくられる色、青+緑=シアン、赤+青=マゼンタ、赤+緑=イエローというわけです。それ以外の組み合わせをすると補色により色が白くなってしまうので必然的にこの3つになります。CMYの場合はYは青を吸収し、マゼンタは緑を吸収するので赤が残ります。つまりRGB-B-G=Rと減法混色されていくのです。同じようにYとCで緑が残り、CとMで青が残ります。他の組み合わせでは補色となり色が黒くなってしまうので必然的にこのRGBの3つとなります。

このように考えていくと正三角形とその間に入る色が決まってくるはずです。基本的にジェームズガーニーは物体色である絵の具を念頭においていると思うのでYMCが正三角形の位置に入り、その減法混色から得られるRGBが間にはいるということです。黄色と青と赤に固定する理由がなければ、より合理的な色を配置するというのは理解できます。

ただ色相環である以上は対する色が補色関係にある必要はあると思います。従来のカラーホイールでは黄色の補色が紫、yurmbyカラーホイールでは黄色の補色が青でした。これはかなり大きな違いだと思います。その問題は絵具の限界として理解できます。YMCの色、とくにマゼンタやシアンの顔料を作るのは難しいので、青や赤で代替していたということです。ここでいう青や赤は色光のような純粋なものではなく、シアンや青紫に近い青、赤紫に近い赤です。もし理想的なシアンやマゼンタ、イエローの顔料が存在するとすればカラーホイールはジェームズガーニーのようなホイールになります。

3:RYBカラーホイールは色と色の間隔が均等ではない

*7

 

ジェームズガーニーの本には「スペクトルの黃ーオレンジー赤の部分を引き伸ばし過ぎているので、赤が2時ではなくて4時、青が6時ではなくて8時の位置にきてしまっています。このような不均衡が起こった原因としては、人間の目は他の色よりも黃、オレンジ、赤の微妙な違いを認識しやすいということ、そして寒色よりも暖色の顔料のほうが多いことが挙げられます。オレンジや赤の顔料は何種類も手に入るのに、紫や緑となるとほとんどてにはいりません*2」とあります。

たしかに黄色とオレンジの間、オレンジと赤の間に色を挟むことによってずれてしまっていますね。そのせいでシアンのような色がYRBから消えてしまっています。暖色系が多くて寒色系が少ないです。色と色の間隔が均等ではないと問題が生じますよね。

引き伸ばしてしまうから本来的な補色がズレてしまうんですね。

マンセル表色系との類似性

マンセル表色系(Munsell system):色相、明度、彩度の三属性によって色を記述する表色系で、現在世界的鬼最も広く使われているカラーオーダーシステムのひとつ。色相はR,Y,G,B,Pの5主要色相にYR、GY、BG、PB、RPの5中間色相を挿入した計10色相をおのおの10分割して尺度化する。また明度は黒から白までを縦断会で分割し、彩度は無彩色を0として等ほどになるように尺度化されている*1。

*6

どちらかといえばマンセルの色相環に近い気がします。マンセルにおいても基本はシアン、マゼンタ、イエローを正三角形の位置においているからです。

補足

色相(しきそう,英:hue):色みの種類を表す尺度を色相という。色の知覚は分光感度が異なる3つの錐体がそれぞれ反応することで生じる。色の種類はスペクトル上の可視放射と、その両端にある赤と藍を混色して得られる色に対応する。色相変化を円環状に並べたものを色相環(hue circle)という*1。

波長と色相の関係

波長範囲(nm)色相記号
380-430青みの紫(bluish Purple)bP
430-467紫みの青(purplish Blue)pB
467-483青(Blue)B
483-488緑みの青(greenish Blue)gB
488-493青緑(Blue Green)BG
493-498青みの緑(bluish Green)bG
498-530緑(Green)G
530-558黄みの緑(yellowish Green)yG
558-569黄緑(Yellow Green)YG
569-573緑みの黄(greenish Yellow)gY
573-578黄(Yellow)Y
578-586黄みの黄赤(yellowish Orange)yO
586-597黄赤(オレンジ,orange)O
597-640赤味の黄赤(reddish Orange)rO
640-780赤(red)R
「色彩学概説」,千々岩英彰,15P

波長と色の関係(日立さんのサイトを参考に)

波長(nm) 補色(余色)
~400紫外
435~480
480~490緑青
490~500青緑
500~560赤紫
560~580黄緑
580~595
595~610緑青
610~750青緑
750~赤外

WIKIの波長と色相

色相エネルギー
380-450 nm2.755-3.26 eV
450-495 nm2.50-2.755 eV
495-570 nm2.175-2.50 eV
黄色570-590 nm 2.10-2.175 eV
橙色590-620 nm 1.99-2.10 eV
620-750 nm1.65-1.99 eV

上の2つを見比べても違うのがわかります。紫みの青も青に含める考え方もあるのです。pBもBとして扱うケースです。そもそも波長を何色と定義するかは文化や用途によっても違います。

参考文献

1:「色彩用語辞典」日本色彩学会(東京大学出版会)

2:「カラー&ライト」ジェームズガーニー(ボーンデジタルインク)

3:https://blog.goo.ne.jp/toyomina-ele/e/2c1b5fc33f9e21d9fc55891b02ab7787

4:https://allabout.co.jp/gm/gc/448315/

5:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E8%89%B2

6:https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/ja/2785

7:「色彩学概説」千々岩英彰(東京大学出版会)

8:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2%E5%BD%A9%E8%AB%96

引用画像

1:https://www.tobunken.go.jp/~ccr/pdf/41/pdf/04112.pdf

2:https://phenomenon-of-light.jp/page2.html

3:https://mypaintingclub.com/blog/post/39-The-Gamut-Mask-Tool

4:https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1710/1710.06364.pdf

5:https://1:https://jamesgurney.com/site/images/teaching-images

6:https://www.google.com/url?sa=i&rct=j&q=&esrc=s&source=images&cd=&ved=2ahUKEwilrb6a4PjjAhVRNKYKHVTOAesQjRx6BAgBEAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.pinterest.com%2Fpin%2F398287160765945005%2F&psig=AOvVaw1rqqqwP6FC2JUvjGUNJPDT&ust=1565541903270878

7:https://sighack.com/post/procedural-color-algorithms-hsb-vs-ryb

toki

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おすすめ書籍

・人体の描き方関連

やさしい人物画

ルーミスさんの本です。はじめて手にした参考書なので、バイブル的な感じがあります。

人体のデッサン技法
ジャック・ハムも同時期に手に入れましたが、比率で考えるという手法にルーミス同様に感動した覚えがあります。ルーミスとは違う切り口で顔の描き方を学べます。

・解剖学関連

スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版

スカルプターのための美術解剖学 2 表情編

一番オススメの文献です。3Dのオブジェクトを元に作られているのでかなり正確です。顔に特化しているので、顔の筋肉や脂肪の構造がよくわかります。文章よりイラストの割合のほうが圧倒的に多いです。驚いたときはどのような筋肉構造になるか、笑ったときはどのような筋肉構造になるかなどを専門的に学べることができ、イラスト作成においても重要な資料になります。

アーティストのための美術解剖学

こちらはほとんどアナログでイラストがつくられています。どれも素晴らしいイラストで、わかりやすいです。文章が少し専門的で、難しい印象があります。先程紹介したスカルプターのための美術解剖学よりも説明のための文章量が圧倒的に多く、得られる知識も多いです。併用したほうがいいのかもしれません。

・遠近法関連

パース!

これが一番おすすめです。難易度は中です。

超入門 マンガと図解でわかる! パース教室

これは難易度は小ですが、とてもわかりやすく説明されています。

スコット・ロバートソンのHow to Draw -オブジェクトに構造を与え、実現可能なモデルとして描く方法-

難易度は大ですが、応用知識がたくさんあります。

・色関連

カラー&ライト ~リアリズムのための色彩と光の描き方~
やはりこれですかね。

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